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第三部 ルートン王国交換留学編

文句を言いに来た親に私の正体がバレて、一転して土下座して謝られました

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子供の喧嘩に親が出るってどういう事?

私は開いた口が塞がらなかった。

そういえば、この前は親が帝国に喧嘩売った件で、子供の私が陛下に呼ばれたってことがあったけど、普通は逆よね。そう考えると普通なのか?

「平民のくせにでかい態度で貴族に手なんか出すからだ」
親が騎士で准男爵家のセブリアンが言ってくれるんだけど。

「ふんっ、平民を脅して悪いことする貴族のほうが100倍悪いわよ。あなたもガスペルを脅したの? 一緒に学園長のところに行きましょうか?」
「な、何を言うんだ」
慌ててセブリアンが逃げて行ったんだけど。どうやら、図星だったらしい。

「私が一緒に行ってあげましょうか?」
メラニーが言ってくれた。

「しかし、呼ばれているのはフランソワーズさんだけで」
ウェスカ先生が慌てて言うが、

「先生、向こうも保護者が同伴しているんでしょ。メラニーは私の保護者です」
「あなたの保護者はフェリシー先生では」
「止めて下さいよ、先生、保護者だなんて! あの先生は私の保護者というよりも監視人ですから。それ以外の何者でもありません」
私はムッとして言った。

そうだ。フェリシー先生が私を保護者のように庇ってくれるなんてあり得なかった。公爵令嬢の地位を傘に着て脅したとか叱責されるのが関の山なのだ。


私達が行くと、ドミンゴ・ミエレスそっくりなでっぷり太った男が口角泡を飛ばして文句を言っていた。

その向こうには学園長とイザベル・サマランカ先生、そして、男の前で話を聞いているのがフェリシー先生だった。

「見て下さい。この子を。あの女に張り倒されて頬がこんなに腫れているのですぞ」
確かにドミンゴの頬は確かに赤黒く腫れていた。私の手の形を残して。

「遅くなりました。フランソワーズさんを連れてきました」
ウェスカ先生が断って私たちを室内に入れる。

「なぜ二人いるのですか?」
男が私たちを見比べて言った。

「私の保護者役です」
私がメラニーを紹介して言うと

「何ですと。どうみても同級生だろうが」
男が大きな声で叫び始めた。

「そちらも、保護者同伴なんですから、良いでしょう」
私は言い切った。

「何だと小娘」
「ふんっ、親を連れて来ないと来れないなんて本当に情けない男ね」
私はドミンゴを見下してやったのだ。

「な、何だと」
ドミンゴは真っ赤になっていた。

「貴様が貴族の人間に手を下すからだろうが」
「フランソワーズさん。あなた、自分の地位を傘に着てこちらの准男爵家のご令息を脅して張り倒したって本当なの」
フェリシー先生が男を無視して叱責し始めた。やっぱりそう取られたのだ。
何か、根本的に履き違いがあると思うんだけど

「いいえ、そのようなことはしておりません」
私は言い切った。

「何だと、貴族の息子を力で脅して張り倒しただろうが」
「何をおっしゃっていらっしゃるのやら。そこまで言われるならば言いますが、ドミンゴ君は我がクラスのガスペルを脅して、魔道剣を故障するようにさせたんですけど」
「何だと、そんな事を息子がするわけがなかろう」
ヒステリックに男が叫ぶんだけど、

「ちょっと待って。そう言う事はフランソワーズさん。あなたは魔道剣を触ったというの?」
や、やばい。フェリシー先生には知られてはいけないことだった。

「いえ、そんな」
「何を言ってやがる。この女は騎士団長の息子と決闘した時に・・・・」
「決闘ですって」
准男爵の父親は余計なことを言ってくれる。その言葉にフェリシー先生の声が更に1オクターブ上がった。

学園長始め先生方は皆青くなっている。

「ちょっと待ちなさい。フランソワーズさん。あなた、決闘なんて男爵家の令息とやったの?」
「いや、そんなわけは」
私は更にやばくなってきた。私は必死に誤魔化そうとした。

「嘘をつくな。そこでイカサマがバレて誤魔化すために、不意打ちで剣を投げつけて騎士団長の息子の男爵家の令息に大怪我を負わせたんだろうが」
ドミンゴの親父が言ってはいけない事を言ってくれたのだ。

「何を言っているのよ。そんな卑怯なことする訳無いでしょ。騎士団長の息子がガスペルを脅してすぐに魔道剣を故障させろって命じていたから投げつけただけよ」
私は言い切ったのだ。

「何を言ってやがる。そもそも平民の分際で、男爵家のご令息に怪我させるとはどういう事だ」
ドミンゴの父親が言ってくれるんだけど。ちょっとそこで平民って言ってはいけないのに。イザベル先生とかフェリシー先生とか学園長は知らないはずだ。私が平民だと皆に言っている件について。さすがのヴァン達の力もこの3人には通用しない。

「ちょっと、宜しいですか? ミエレスさん」
そこで今まで黙っていたイザべル先生がぬっと口を出してきた。

「はい、どうぞ」
途端にこのドミンゴの父親は静かになった。イザベル先生は確か子爵家のご令嬢だ。今は泣き虫王女の教育係だが、このおっさんも地位には弱いらしい。

「この学園では基本は中にいる限り地位云々は問われないのです」
「しかし、ここまで、我が准男爵家がコケにされては。最初にこの女は准男爵家って男爵に成れなかった出来損ないみたいなことを息子に言ったのですぞ」
「フランソワーズさん。そんな事を言ったのですか」
フエリシー先生が怖いんだけど。

「いや、そこまで酷いことは」
「変わらないことを言っただろうが」
それ見たことかとドミンゴが後ろから言ってきたんだけど。

「私が言ったのは、准男爵家は我がエルグランにはないので、今回同行しているアルマンの父が騎士団の騎士長をしているので、それと同じくらいなんだって言っただけですよ」
私はしらばっくれた。

「それを平民に言われる筋合いはない」
ミエレスのおっさんが青筋を立てて言うんだけど。

「ミエレスさん。先程も申しましたように、学園内では身分については基本的には大らかに見ようとはしています」
「でも、平民に馬鹿にされるのは」
「黙らっしゃい!」
思わず、全員その叱責に唖然としてイザベル先生を見た。

「この中で一番身分の低いのがあなた方なのです。良いですか」
「えっ、いや、でも、この女は」
「このお方はルブラン公爵家のご令嬢です」

「はい?」
その瞬間の私達の顔は見ものだったと思う。

ミエレスの二人は青くなっていたし、そうバラされた私は真っ赤になっていた。

くっそう! また学園の時の二の舞いだ。せっかく、全員友達作線はうまく行っていたのに。この先生、余計なことをバラしてくれて。
そもそも、ドミンゴが父親なんて連れてくるから悪いのだ。私はドミンゴを睨みつけた。

「フランソワーズ様は、あの、帝国の皇帝を退治された、ルブラン公爵夫人の実の娘で、現エルグラン王国の王太子殿下の婚約者でいらっしゃるのですよ」

「も、申し訳ありません」
なんとドミンゴの父親は真っ青になって慌てて土下座して謝ってきたのだ。

「お前も頭を下げるんだ」
その次にミエレスさんはあまりの展開についていけないドミンゴの頭を思いっきり地面に叩きつけて頭を下げさせたのだった。
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