上 下
82 / 309
第三部 ルートン王国交換留学編

騎士団長の息子から決闘を申し込まれて有頂天になりました

しおりを挟む
私は今まで全然うまくいかなかった友達が一人できて浮かれていた。今日こそ、たくさん友達を作るのだ。やる気満々で私は教室に入った。

「ガスペル、おはよう!」
そして、手始めに昨日友達になったガスペルに元気よく声かけたら何か元気がない。
「どうかしたの?」
「いや、別に何でもない」
そう言うや、ガスペルは立ち上がると私に目も合わせずに部屋を出て言ったのだ。

「えっ」
私は今日こそは友達をたくさん作ろうと勇んで来たのに、いきなり出鼻をくじかれた格好だった。昨日まで普通に話せていたのに、貴族どもから何か言われたのだろうか?

私は貴族たちをじろりと見た。

貴族たちは昨日はいなかった男を中心に集まっていた。確か、私達が食堂で食べている時に私に席を代われと言ってきた奴だ。私の方を向いてにやにやしている。でも、構っている余裕はない。

平民の皆とは私の身分がばれる前にさっさと友達にならないと。

何しろ王立学園では、あろうことかEクラスになったその日のうちにアドに私が公爵令嬢だとばらされたのだ。

今度はアドはいないとはいえ泣き虫シルビアはいるし、この国の王太子もいる。ダミアンもいつゲロらないとは限らない。

そうなる前に何とかして友達を作らないと・・・・。

でも、女の子らもなかなか話してくれない。くそ、せっかくガスペルとは魔道剣の話で盛り上がれたのに。

八方塞がりだった。でも、こういう時のメラニー頼みだ。

「ねえ、メラニー」
私はメラニーを見た。

「嫌だ」
「まだ何も言っていないでしょ」
「あんたがこんな顔する時って絶対に面倒なことだもの」
「何言っているのよ。私が話せそうな平民って誰かなって」
「ああ、そう言うこと? あんたの前の席のルフィナ・ポロトスは大衆洋服店の販売で、結構売上を伸ばしているわよ」
「私でも買える?」
「大衆洋服店だから買えるとは思うけど、最悪王子とかに頼めばいいでしょ」
「そうね。そう言えばヴァンもいるし、最悪オーレリアンに頼もう」
「おい、俺の名前を勝手に使うな・・・・」
オーレリアンが何か叫んだときにはもう無視して、私はルフィナの横にいた。

「ルフィナさん、あなたのところお店やっているんですって」
「いや、あの、フランさん」
ルフィナは私がいきなりとなりに来て焦ったみたいだった。でも、ここで逃すものか。

「私のうちは大衆用で、フランさんみたいな華美な方はイネス様の高級衣料店に行かれたらどうですか」
「いや、あんな高いところは無理よ。それよりもあなたのところで今一番売れている、私達向けの安いドレスがあったと思うんだけど」
「えっ、ドレスですか」
ルフィナが考えている。よし、もう一息だ。

「ドレスじゃなかったかな。普段着として使える・・」
「ああ、汚れが目立ちにくいおしゃれ作業着ですか」
「そう、それよ」
確か事前勉強でメラニーから昨日教えてもらっていたのがそれだ。

「裕福な家の奥様方によく売れていて、それが広がって今爆発的に売れているんです」
「一度お店にお邪魔して見せてほしいんだけど」
「それは良いですけど」
「じゃあ次のお休みの日にお邪魔するわ」
私は畳み掛けた。

「ふんっ、平民同士、安物で満足していれば良いのですわ」
私達の後ろにいきなり現れたイネスが言い切った。

「あっ、イネちゃんごめんね。我が家はお金ないからあなたところから買えなくて」
「誰がいねちゃんよ。平民のくせに生意気な。ふんっ、我が家も平民から金をふんだくろうとは思ってもいないって言っているでしょ」
イネスはぷりぷり怒って去っていった。

よし、一人目だ。そして、次だ。

「テオドラ」
「何よ。私は今宿題で・・・・ってフランさん」
隣のテオドラが驚いて私を見た。

「あなたのところ王都で有名な菓子工房なんでしょ。何が一番人気の商品なの?」
「焼き菓子がよく売れているんですけど、今は新作プリンに凝っていて」
「そうなの。我が国ではハッピ堂のアラモードブリンが有名なんだけど」
「えっ、あなた、アラモードぶりん食べたことがあるの? あそこ並ばないと買えないんでしょ」
「うん、よく買ってきてくれる人がいて」
そう、一学期は私に謝るためにアドが散々持ってきてくれたのだ。

「そうなの! その店の味を目指したんだけど、何かもう一つなんですって。あなたも良ければ食べてみてくれる。感想聞かせてほしいの」
「ええ、良いわよ。喜んで。今度の休みの日にお邪魔するわ」
「おい」
私は小躍りしていた。これで3人めゲットだ。今回は陛下の名前を使って脅迫しなくても何てうまくいけているんだろう。

「おい、お前!」
後ろから男が不機嫌そうな声をかけてきた。
私は男が接近しているのに気づかなかった。
それよりも私は友達作りに忙しいのに、邪魔しないでほしい!

こいつは、前に食堂で私に喧嘩を売ってきたたしか、
「あんたは確かカマクラ!」
「誰だそれは」
男が怒って言った。

「じゃあ、ヤヨイガルド」
私の言葉に横に来たメラニーが首を振る。

「ぜんぜん違うじゃない。なんで原始時代に戻るのよ」
「えっ、そうだっけ。顔貌がなんとなく」
「あんたね。私と聖女にしか判らないギャグ言っているんじゃないわよ」
「えっ、いや、そんな事無いんだけど、どうでもいいやつのことはちゃんと覚えていなくて、確か時代の名前かなって」
「貴様ら、いつまで人の悪口を言っているんだ」
そこに怒った、室町ガルドが口を挟んできた。もう少しで思い出すのに・・・・

「で、何なのよ。モモヤマガルド」
「誰が桃だ、誰が! 俺はエドガルドだ。覚えておけ」
騎士団長の息子が青筋立てて怒っている。

「ああ、江戸時代だったんだ。そう言えば松平健に似ていると思ったのよ」
「はっ、まつなんとかって、どこまで馬鹿にしたら気が済むんだ」
「いや、バカにはしていないわよ」
「ええい、もう良い! 平民女! 貴様に決闘を申し込む」
江戸時代がとんでもないことを言ってくれた。

決闘、決闘って西部劇の世界じゃない!

「おいおい、女に決闘って・・・・」
「ええええ! 本当に!」
アルマンが余計な事を言おうとしたのを、私は喜びのあまり遮った。

「海賊退治は出来るわ、今度は西部劇の決闘が出来るなんて、何て素晴らしいの!」
私は嬉しさのあまり思わず江戸時代の手を握りしめていたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~

五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。 「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」  ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。 「……子供をどこに隠した?!」  質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。  「教えてあげない。」  その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。 (もう……限界ね)  セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。  「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」    「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」    「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」  「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」  セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。  「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」  広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。  (ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)  セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。  「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」  魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。  (ああ……ついに終わるのね……。)  ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。  「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」  彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。  

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。