27 / 120

逃げ出した先で勉強させられてしまいました

しおりを挟む
私達が踊り終わると、目の色を変えた令嬢達がこちらに向かってきた。

「ルード様!」
「次は私と踊って下さい」
「私よ」
「私のほうが先よ」
令嬢達が睨み合っている隙に、ルードは私の手を引いて駆け出してくれたのだ。

「ちょっと、ルード様!」
「お待ち下さい!」
令嬢達は私とルードを追いかけてきた。

その先頭はデジレだ。ピンクの髪の毛を振り乱して追ってくる。
その後をたくさんの令嬢が追いかけてきた。

私は走ることはそんなにしていなかったので、すぐに息が切れたが、ルードは許してくれない。
そのまま校舎の中にもつれる足で駆け込まされたのだ。

ルードは校舎の中に入り込むと、前から一人の騎士が歩いてきた。

「後は任せた。クルト!」
そう叫ぶと、私が最初に連れてこられた部屋に飛び込んだのだった。

「騎士様。こちらに二人連れが駆けてきませんでした」
デジレの声が聞こえる。
「あちらに走っていかれましたよ」
騎士の声が聞こえて、周りは静かになった。
騎士は別の方向を指さしてくれたみたいだ。


「もう、ルード、逃げるなら自分ひとりで逃げてよ」
私が文句を言うと
「何言っているんだ。元々俺はレセプションでは踊るつもりはなかったんだ。でも、昔、クラウが舞踏会で踊ってみたいと言っていたのを思い出したから踊ってやっただけだろう」
ルードの言葉に私はキョトンとした。
「えっ、そんな事言ったっけ?」
「言ったぞ。私も帝国の学園に行けたら、ルードと踊ってあげるわって、えらく上から目線で言われた」
ルードがムッとしていってきたが、
「上から目線はルードでしょ。たとえそのような事を私が言ったとしても、踊ってあげるとは言っていないはずよ」
私が言い返した。

「変わらないことを言っていた気がするぞ」
「と言うか、令嬢達と踊るのが嫌なんだったら、一人で逃げればよかったでしょ! なんで、私まで、ここに連れてくる必要があったのよ!」
私が文句を言った。
これでまた明日から、ルードと一緒に二人でパーテイー会場を抜け出したとか、ルードと踊りたかったのに私に邪魔されたとか言って令嬢達に虐められるのが決まってしまったではないか!

「何を言うんだ! あのままお前を置いて逃げたら、お前がアイツラに捕まって大変だろうと思って連れてきてやったんだよ。それに今日の分の補講がまだだろう」
「えっ、補講って、まだ、やる気なの?」
私は唖然としてルードを見た。

「当たり前だろう。クラウ、前期にどれだけ覚えないといけないと思っているんだ!」
昨日残していった本の山を見せつけつつルードが説明してくれた。

「えっ、これ1年間でやるのではなくて、前期だけでやる分なの?」
私は本の山を見て呆然としたのだ。

「当たり前だろう! 帝国の学園は最高峰の教育機関なんだよ。普通の貴族はここに来る前に大半の勉強は終わらせてるんだ」
ルードは言ってくれるが、
「そんな事言われても、私、これだけ覚えられる自信がないんだけど」
私はもう涙目だ。

「泣くな! だから俺がない時間をひねり出して面倒を見てやろうとしているんだろ」
「ええええ! でも、ルード教えるの下手でしょ」
「お、お前なんて言うことを言うんだ! クラス分けテストは貴族点なしでも俺がトップだったんだぞ! それに比べてお前は最下位だ! 最下位の分際で俺に文句を言うのか?」
ルードは言ってくれるが、

「勉強ができるイコール教え方がうまいってことはないでしょ。
出来るやつほどできない理由が判らなくて、なんでこんな物も出来ないんだって怒ることになるじゃない! ルードも昔はよくそう言って怒ってきたじゃない!」
私が言い張ると

「できるだけ善処する。俺ももう16だからな! 大人なんだから」
ルードは胸を張っていってくれるが、
「でも、私が理解できなかったら、なんでこんなの理解できないんだって怒り出さない?」
「善処する」
ルードは頷いてくれた。
善処かよと思わないでもなかった。

「うーん、本当かな」
私が疑い深そうに聞くと、
「じゃあクラウ。お前これだけの量一人で覚えられるのか」
逆に開き直られてしまった。

「いや、流石にそれは……」
そんなのは絶対に無理だ。途中で投げ出してしまいそうだ。

「それ見てみろ。俺が見てやった方が良いだろう!」
自慢気にルードが言ってくれた。
「うーーーー」
私は唸るしか出来なかった。

「じゃあ、帝国の歴代皇帝だ。今から何やったのか説明していくからな。後の細かいことは本を読んで覚えるんだぞ」
ルードは帝国の皇帝の名前とその主な業績を教えてくれ始めたのだ。


「どうだ? 判ったか?」
「そんなのこんな短時間で覚えられるわけはないでしょ」
私は文句を言った。

「全然覚えられなかったのか?」
「少しは入ったかな」
そう言いつつも、ある程度の流れは頭に入った。
まあ、前世の受験時代に結構暗記はしたのだ。ある程度はなんとかなるだろうと私は思えてきた。
思ったよりもルードの教え方もまともだった。

「うーん、まあ良い。明日の放課後までに皇帝の名前とその業績は全て頭に入れてこい」
「ええええ! こんなにたくさん?」
「これだけ覚えなければいけないんだから、仕方がないだろう。やる気になれば出来る」
私は強引に覚えてくると約束させられたのだ。


その後、要らないと言ったのにルードは寮の前まで送ってくれることになった。

もうパーティーも流石にお開きになっていた。

外に出るとまだ4月の夜は寒かった。

「これでも着ていけ」
ルードは薄いコートを貸してくれた。

空は晴れていて星空がきれいに見えた。
まあ、前世の地球の星空とは当然違ったが、星空はきれいだった。

「この前は見れなかったが、オイシュタットの星空は今もきれいなんだろうな」
「そうだと思う。あまり星を見る暇もなかったけれど」
夜は疲れて寝ていたし、寝る時間も遅かったのだ。下手したら鞭で打たれていたし……

「悪かったな。クラウがあんな目にあっているって知らなくて」
私はルードの言葉に驚いた。ルードが私のことを心配してくれたなんてあり得なかった。

「悪いのはルードではないから」
私が首を振ると
「クラウのお母さんが死んだと聞いた時にもう少しちゃんと気にしておけば良かった」
ルードは反省してくれた。

「ううん、それよりもわざわざ時間を作って私をここにつれてきてくれて有難う」
私がお礼を言うと

「そうだ。時間のない俺様が時間を作っているんだからな。ちゃんと勉強しろよ」
「えっ、そう来るんだ」
私はその言葉にげっそりとしたが、気を取り直した。もともとそう言うやつなのだ。
ルードは。

「じゃあ、ここまで送ってくれて有難う」
私は寮の前でルードにお礼を言った。

「またな」
ルードは手を振って去っていった。
私は少しの間その後姿を見つめていたのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...