14 / 103
王太子視点1 厄災娘を親切な侯爵令息が娶ってくれて平和が訪れました
しおりを挟む
俺の名前はエドワード、この国の王太子だ。
俺は基本は父王に次いで偉いのだ。普通に。
そして、俺の朝は一杯の優雅なコーヒーで始まるはずだった……
「殿下、大変です!」
「何だ、朝から騒々しいな。どうしたのだ?」
その時までは俺は優雅に手紙を持ってきた側近のカーティスを窘めていたのだ。
「ブライアンから至急の手紙です」
「ブライアンから? あいつはこの春から地方の騎士団の副騎士団長ではなかったか? そいつが俺に何のようだ?」
ブライアンが赴任した地は国境からも離れているし魔物も出ないはずだった。
普通王太子の俺に直接至急の手紙を書いてくるなんておかしかった。
「それがジャンヌ様が怒っていると」
「ブファーーーー」
私は思わず飲みかけのコーヒーをカーティスに吹き出したのだ。
「な、何だと!」
俺はむせた背を周りに叩かれながら、なんとか声を出した。
「ジャンヌって誰だ?」
「さあ、殿下の新しい女じゃないか」
後ろの方で新しく入った側近の囁きが聞こえた。
「何を言っている。貴様らジャンヌも知らんのか! オルレアン侯爵夫人だ!」
「ああ、あのこの前旦那を亡くされたという」
「とてもきれいな人ですよね」
側近たちは気楽なものだ。
「愚か者! お前らは、ジャンヌの恐ろしさを知らないから言うのだ」
俺の叫びにも側近たちはキョトンとしている。
ジャンヌと俺は幼馴染だ。連れてこなくてもいいのに、父のウェリントン将軍が連れてきて、俺達はよく一緒に遊ばされたのだ。
チャンバラごっこや、王宮探検は可愛いもので、盗賊退治は序の口で、ダンジョン探検や、竜の巣の探検、ゴブリン討伐など散々な目に付き合わされた。
ジャンヌはどこでも無敵だから言うことはなかったが、付き合わされた一般人の俺達はたまったものではなかった。最後はジャンヌが助けてくれるのだが、死にかけたことなど片手では到底足りなかった。俺と昔からの側近のカーティス、それとジャンヌの実の弟のブライアンがどんな目に遭ってきたか……本当によく生命があったと思う。
そんなジャンヌが何をトチ狂ったのか学園に入った途端に生徒会長で侯爵令息のシャルルに恋したのだ。俺には信じられなかった。あのジャンヌが恋したことも、あのジャンヌに惚れた奴がいることも!
「皆行くわよ。遅れたら罰ゲームだからね」
と裸踊りを罰ゲームにしてダンジョンに突撃させていたあのジャンヌが、真っ赤に顔を染めていたのだ。
からかった俺達は半殺しの目にあったが……
しかし、そんなジャンヌがシャルルの前ではしおらしい乙女を演じていた。
いつかボロが出ると俺達は踏んでいたのだが、シャルルがいる間はしおらしかった。
シャルルが卒業すると元にも戻って、学園はまた阿鼻叫喚の地獄になったが……
たが、そのジャンヌもなんと卒業と同時にシャルルと結婚したのだ。
俺達は信じられなかった。
でも、カラミティ(天災)・ジャンヌは俺達の前から消えてくれた。
俺達はしばらくこの幸運が信じられなかった。
俺達が祝杯を上げたのは言うまでもない。
ジャンヌを娶ってくれたシャルルは俺達にはまさしく神様に見えたのだ。
そう、ジャンヌがいない間は本当に平和だったのだ。
俺は基本は父王に次いで偉いのだ。普通に。
そして、俺の朝は一杯の優雅なコーヒーで始まるはずだった……
「殿下、大変です!」
「何だ、朝から騒々しいな。どうしたのだ?」
その時までは俺は優雅に手紙を持ってきた側近のカーティスを窘めていたのだ。
「ブライアンから至急の手紙です」
「ブライアンから? あいつはこの春から地方の騎士団の副騎士団長ではなかったか? そいつが俺に何のようだ?」
ブライアンが赴任した地は国境からも離れているし魔物も出ないはずだった。
普通王太子の俺に直接至急の手紙を書いてくるなんておかしかった。
「それがジャンヌ様が怒っていると」
「ブファーーーー」
私は思わず飲みかけのコーヒーをカーティスに吹き出したのだ。
「な、何だと!」
俺はむせた背を周りに叩かれながら、なんとか声を出した。
「ジャンヌって誰だ?」
「さあ、殿下の新しい女じゃないか」
後ろの方で新しく入った側近の囁きが聞こえた。
「何を言っている。貴様らジャンヌも知らんのか! オルレアン侯爵夫人だ!」
「ああ、あのこの前旦那を亡くされたという」
「とてもきれいな人ですよね」
側近たちは気楽なものだ。
「愚か者! お前らは、ジャンヌの恐ろしさを知らないから言うのだ」
俺の叫びにも側近たちはキョトンとしている。
ジャンヌと俺は幼馴染だ。連れてこなくてもいいのに、父のウェリントン将軍が連れてきて、俺達はよく一緒に遊ばされたのだ。
チャンバラごっこや、王宮探検は可愛いもので、盗賊退治は序の口で、ダンジョン探検や、竜の巣の探検、ゴブリン討伐など散々な目に付き合わされた。
ジャンヌはどこでも無敵だから言うことはなかったが、付き合わされた一般人の俺達はたまったものではなかった。最後はジャンヌが助けてくれるのだが、死にかけたことなど片手では到底足りなかった。俺と昔からの側近のカーティス、それとジャンヌの実の弟のブライアンがどんな目に遭ってきたか……本当によく生命があったと思う。
そんなジャンヌが何をトチ狂ったのか学園に入った途端に生徒会長で侯爵令息のシャルルに恋したのだ。俺には信じられなかった。あのジャンヌが恋したことも、あのジャンヌに惚れた奴がいることも!
「皆行くわよ。遅れたら罰ゲームだからね」
と裸踊りを罰ゲームにしてダンジョンに突撃させていたあのジャンヌが、真っ赤に顔を染めていたのだ。
からかった俺達は半殺しの目にあったが……
しかし、そんなジャンヌがシャルルの前ではしおらしい乙女を演じていた。
いつかボロが出ると俺達は踏んでいたのだが、シャルルがいる間はしおらしかった。
シャルルが卒業すると元にも戻って、学園はまた阿鼻叫喚の地獄になったが……
たが、そのジャンヌもなんと卒業と同時にシャルルと結婚したのだ。
俺達は信じられなかった。
でも、カラミティ(天災)・ジャンヌは俺達の前から消えてくれた。
俺達はしばらくこの幸運が信じられなかった。
俺達が祝杯を上げたのは言うまでもない。
ジャンヌを娶ってくれたシャルルは俺達にはまさしく神様に見えたのだ。
そう、ジャンヌがいない間は本当に平和だったのだ。
16
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる