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第十三章 全能神の逆襲
大国皇太子は良い所で恋する者の弟に邪魔されてしまいました
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クリスが目覚めると何故かオウが横で突っ伏して寝ていた。その手は、クリスの手を掴んでいる。
看病疲れで、そのまま寝てしまったのだろう。
クリスは邪神ゼウスにやられて・・・・
「あっ、ゼウスは?」
思わず声に出てしまった。その声でオウを起こしたみたいだった。
「あっ、クリス、元気になった?」
「看病してくれたんですね。ありがとうございます」
クリスは礼を言った。
「いや大した事はしていないのだが」
「他の皆様は?」
控えめに言うオーウェンにクリスは一番聞きたいことを聞いた。
「ああ、クリスのお陰で一応全員無事に帰還できたよ」
「えっ? でも私ゼウスにやられて」
「ああ、ゼウスはクリスの放った最後の攻撃が効いていて、強制帰還装置が働いた時に防げなかったんだよ」
「えっ、そうなのですか。そんなに効いていたようには見えなかったんですけど」
どう見ても防がれたとクリスは思っていたのだが、
「そんなことはないよ。あとは皆で力を合わせて、牽制して脱出するのがチャンと見えたよ」
シャラザールの存在はシャラザールからクリスには言うなと止められているので言えない。
「何か、古の戦神に助けていただいたように思ったのですが」
「えっ?」
オーウェンは一瞬固まった。
「やっぱり変ですよね。気を失う前に神様にお願いしたら、任せろって言われたような気がして」
「まあ、神が助けてくれたのかもしれないね」
戦い足りないと我儘三昧の神だったけれど・・・・
あの後もトリポリ軍はしばらくしごかれたらしい。
「そうですよね。やるだけやれば神様が助けて頂けたのかもしれません。相手は邪神でしたし」
もともと、全能神を退治したシャラザールの自業自得のような気もするけれど・・・・とオーウェンは思っても戦神怖さに何も言えなかった。
昔シャラザールにやらされた死のトレーニングは二度とやりたくなかった。
「アレク様も無事でした?」
「まあ、結構やられたみたいだったけど、あいつは不死身だからね。それよりもペトロが重症みたい」
「そうですか。随行した方々にも酷い目に合わせてしまいましたね」
「まあ、あいつの場合はエカテリーナを助けるために犠牲になったみたいだけど」
「エカテリーナ様を助けるために?」
「そう、あと何故かボリスも助けてくれたみたいだし」
「そうなんですか。ボリス殿下にもお力添えいただいたのですね」
クリスは頷いた。
「それよりもクリス、その話し方他人行儀なんだけど」
「他人行儀も何も他人です」
ブスッとしてクリスが言った。
「えええ、それは酷い、昔はオウって言ってくれていたのに」
「女ったらしのオウは嫌い」
「いや、だから、このまえのは間違えたんだって」
「手もすぐ繋いでくるし」
自分の手を見てクリスが言う。
「何言っているんだよ。手を伸ばしてきたのはクリスの方だよ」
オーウェンはサラリと嘘を言った。
「えっ、そうなの?」
疑り深そうに聞く。
「それに俺が自ら手をつなぐ人なんてクリスだけだよ」
そう言うとオーウェンはクリスの手の甲にキスをした。
「ちょっとオウ、何をするのよ」
クリスが真っ赤になって慌ててオーウェンと繋いでいる手を抜こうとしたが、ギュッと掴んでオーウェンは抜かさなかった。
「酷いじゃないか。クリス。俺を残して戦いに行くなんて」
オーウェンが恨めしそうに言った。
「だって、後方で完ぺきに出来るのなんてオウしかいないじゃない」
クリスも赤くなって言う。
「でも、それでも、君と一緒に行きたかった」
オーウェンはクリスの手を愛おしそうに撫ぜながら言った。
「ごめんね、オウ」
「いや、俺がもっと訓練して君のそばにいれるようにすればいいのんだ。後方も俺の代わりを作れば良いんだよね」
「前者はともかく、オウの代わりを作るのは無理じゃない?」
「いや、そんな事はないはずだ・・・・」
そう言ってオーウェンはクリスを見た。
クリスと目が合う。
二人は見つめ合った。
その時だ。
ドカーン
という音とともに、扉が吹っ飛んでいた。
「えっ」
慌てて見る二人の前に、剣を抜こうとして周りに押さえられているウィルがいた。
「オーウェン、貴様、姉さまが倒れているのを良いことに何をしている」
「ちょっとウィル様。せっかく良いところだったのに」
ミアらが残念そうに言っている。
クリスとオーウェンは慌てて離れた。
「ちょっとウィル様。この扉高かったんですが」
トリポリ国王が呆然としている。
しかし、ウイルは無視した。
「オーウェン、もう許さん」
そしてねアルバートの腕をかいくぐり飛び出した。
「ちょっと待てよ、ウィル」
オーウェンは逃げる。
「ええい、そこに直れ」
斬りつけるウイルを躱して二人は飛び出した。
「ちょっと、これ以上宮殿を壊さないで下さいよ」
その後ろを心配そうに追いかけていくトリポリ国王の悲鳴が響いていた。
戦力の多くを失ったノルデイン帝国はしばらく沈黙した。その沈黙が不気味だったが、クリスたちはその間に大国間の協議をこまめにして、次なる戦いに備えたのだった。
戦いが短期に終わり、被害にあったのはノルディン帝国の帝都のみだったので、ボフミエの民は戦いの被害は殆ど及んでいなかった。
クリスらが帰ってきた国都ナッツァは戦時中だと感じられないほど活気に溢れていた。
次に始まる戦いまでのしばしの休息だった。
*********************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
取り敢えず完結です。次章は夏くらいに書く予定です。
宜しくお願いします。
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「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。王子にまとわりつく聖女、更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
ぜひともお読み下さい
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「他の皆様は?」
控えめに言うオーウェンにクリスは一番聞きたいことを聞いた。
「ああ、クリスのお陰で一応全員無事に帰還できたよ」
「えっ? でも私ゼウスにやられて」
「ああ、ゼウスはクリスの放った最後の攻撃が効いていて、強制帰還装置が働いた時に防げなかったんだよ」
「えっ、そうなのですか。そんなに効いていたようには見えなかったんですけど」
どう見ても防がれたとクリスは思っていたのだが、
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「えっ?」
オーウェンは一瞬固まった。
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「まあ、神が助けてくれたのかもしれないね」
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「まあ、結構やられたみたいだったけど、あいつは不死身だからね。それよりもペトロが重症みたい」
「そうですか。随行した方々にも酷い目に合わせてしまいましたね」
「まあ、あいつの場合はエカテリーナを助けるために犠牲になったみたいだけど」
「エカテリーナ様を助けるために?」
「そう、あと何故かボリスも助けてくれたみたいだし」
「そうなんですか。ボリス殿下にもお力添えいただいたのですね」
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「他人行儀も何も他人です」
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「いや、だから、このまえのは間違えたんだって」
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「何言っているんだよ。手を伸ばしてきたのはクリスの方だよ」
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「ごめんね、オウ」
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