上 下
434 / 446
第十三章 全能神の逆襲

無敵の戦神が来臨しました

しおりを挟む
クリスはゼウスの闇の一撃を躱す自信はなかった。
しかし、今回の作戦の目的はアレクらの救出だ。ゼウスに勝つことではなかった。それで今まで攻撃せずにただただ、耐えてきたのだ。
しかし、防御だけでは限界だった。

闇の奔流がクリスに向かってきた時、クリスは攻撃することを決意した。
真っ黒な塊がクリスに到達する直前クリスは転移した。



「クリス!」
一方ボフミエの宮城ではオーウェンが悲鳴をあげていた。
「クリス様」
今回は全員が画面を見て悲鳴、ないし固唾を飲んでみていた。
クリスが真っ黒な闇の奔流が到達する前に消えて皆ホッとする。


ゼウスの必殺超超スーパー闇の一撃、聞いているだけで恥ずかしいネーミングの必殺技はクリスの転移で行き場を失い、後ろの宮殿を直撃、凄まじい爆発音とともに、宮殿は崩壊した。

「なっ」
ゼウスが思わず声を漏らした時だ。
クリスがゼウスの前に転移してきたのだ。
ゼウスはぎょっとした。

「これでも喰らいなさい」
クリスは残りのすべての力を使って雷撃していた。
凄まじい光の雷撃は至近距離からゼウスを直撃した。
ゼウスは弾き飛ばされた。


普通は弾き飛ばされてまっ黒焦げになるはずが・・・・
たしかにゼウスは弾き飛ばされたが、まっ黒焦げにはなっていなかった。


「うそ」
それを見てオーウェンが唖然としていた。
「クリス様の必殺技が効いていない」
イザベラらは唖然とした。
「クリス、逃げろ」
オーウェンは大画面にかじりついて叫んでいた。


ゼウスはニタリと笑ったのだ。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
「わっはっはっはっ」
そして高笑いをあげた。

「小娘よ。余に雷撃など効かんわ。愚か者」
そして、余裕で歩こうとするが、少しよろける。
「んっ?」
ゼウスは焦った。全くの無傷というわけではなく、少しは効いているようだった。何しろ聖女クリスの攻撃には聖魔術も含まれているのだ。

「ふんっ、小娘よ。少しは出来るようじゃな」
しかし、ゼウスはニタリともう一度笑った。これくらいなら大したことはない。

「しかし、これまでじゃ。余の必殺技食らうが良い」

クリスはもう立っているだけで精一杯だった。

横を見ると魔王は親衛隊の大半を倒し、ジャルカはのらりくらりとポセイドンの攻撃を躱しているところだった。

まだ、帰るわけにはいかなかった。

でも、次の一撃を躱すすべは無かった。
(皆、オウ、ごめん、ここまでしか出来なかった)
クリスは心のなかで謝った。


「必殺超超スーパー闇の一撃」
そう叫ぶやゼウスは杖を振り下ろした。

ゼウスの周りに真っ黒悩みの塊が渦巻き、それがクリスに向かって怒濤のごとく殺到した。
もう立っているのもやっとのクリスにそれに対抗する手段はなかった。

真っ黒な奔流はクリスを直撃するとクリスはボロ雑巾のように吹っ飛ばされていた。


「クリス!」
「クリス様」
オーウェンの大声と皆の悲鳴が執務室に響く。


クリスは今までのことが走馬灯のように脳裏を過った。
楽しかったことも苦しかったこともそしてオウのことも。
しかし、クリスは施政者だった。すべてのボフミエの民に責任があり、今回の攻撃軍の総責任者だ。
本来ならばゼウスを倒すかどうにかせねばならなかったのだ。しかし、その力もなかった。クリスは最後に神に祈った。
(シャラザールよ。何卒お力をお貸し下さい!)
(判った、小娘よ。さっさと気を失え!)
(えっ?)
クリスは気を失う前に変な声を聞いたような気がした。

「ふんっ、シャラザールの子分共がどれだけやれるかと期待して来てやったのに、大したことは無かったの」
ゼウスはつぶやいていた。

「さて、残った敵を片付けるか」
そう言うと後ろを見ずに立ち去ろうとした。

その瞬間だ。

ダンっ


凄まじい巨大な威圧感の塊が背後に現れたのだ。

「な、何だ」
慌てて振り向いたゼウスに、凄まじい斬撃が直撃していた。
油断していたゼウスはひとたまりも無かった。
斬撃に吹っ飛ばされて隣の宮殿に頭から突っ込んでいた。



「ふんっ。ゼウスのボケナスめ。長引かせよって、今回も出番が無いかとヒヤヒヤしておったわ」
そこには斬撃を放った剣を持った、巨大な気を纏った戦神シャラザーがやる気満々で、仁王立ちしていたのだった。


********************************************************************

ついに真打ち登場です。
帝都は消滅してしまうのか。次話は今夕更新予定です。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

この誓いを違えぬと

豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」 ──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。 ※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。 なろう様でも公開中です。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

この偽りが終わるとき

豆狸
恋愛
「……本当なのか、妃よ」 「エドワード陛下がそうお思いならば、それが真実です」 この偽りはまだ終わるべきときではない。 なろう様でも公開中です。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

婚約は破棄なんですよね?

もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!

義妹に婚約者を取られて、今日が最後になると覚悟を決めていたのですが、どうやら最後になったのは私ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フェリシティーは、父や義母、義妹に虐げられながら過ごしていた。 それも、今日で最後になると覚悟を決めていたのだが、どうやら最後になったのはフェリシティーではなかったようだ。 ※全4話。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

処理中です...