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第十三章 全能神の逆襲
赤い死神が行方不明になりました
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その日も小春日和というか、もう、ボフミエのの国都ナッツァは夏日和だった。
真夏の太陽が燦々と降り注いで皆の体力を奪っていた。
風通しは良いのだが、うだるような暑さの中、仕事は続けられていた。
クーラーなるものも出来ていたのだが、7月まではつけないという暗黙の了解がなされていたのだ。
「オーウェン、暑いあつすぎるぞ」
ヘルマンが大執務室の内務の席で叫んでいた。
みんな、やる気がそげていたが、そんな中でもびくともせずに仕事をしているのが二人。
一人はボフミエ魔導国の筆頭魔導師のクリスティーナ・ミハイル。マーマレードの侯爵家令嬢でもある。金髪碧眼の彼女は涼して顔をして、淡々と仕事をしていた。
そしてもう一人はオーウェン・ドラフォード、大国ドラフォードの皇太子で、このボフミエ魔導国では内務卿をしていた。こちらは目の前の画面を次々に切り替えて署名をしていく。
横で見ているヘルマンは到底かなう気がしなかった。
「暑い、暑いというのは仕事をしてから言ってくれ。ヘルマン、次の資料が遅いぞ」
「ヒェぇぇぇ」
「お前ら3人もいてなんで俺より遅いんだ」
「すいません、次の資料回します」
シュテファンが慌てて資料を回してくる。
そこへふらりとジャンヌがやって来た。
こんな暑い時に、この灼熱地獄の執務室にやってくるなんて、珍しいこともある。
「クリス、ちょっと聞きたいんだけど」
ジャンヌがクリスに聞いてきた。
「すいません。あと少しだけ待ってもらえますか。今きりをつけますので」
その周りでは、イザベラやフェビアンがホッとした顔をする。こちらもクリスに合わせて仕事をしていて、流石に限界だったのだった。
「はい。お姉様。どうされましたか」
クリスが顔を上げてジャンヌに聞いた。
「今日はアレクから連絡があったか」
「いえ、今朝はまだこちらにありませんけれど」
クリスは外務の方を見る。
「こちらにも外務卿からは連絡はありません」
外務の居残り部隊の悠然が首を振って、答える。
「どうかしたんですか」
「うーん、起きている時はアレクから毎時間何らかのメールが入るんだけど、今日はまだ全然入っていなくて」
「えっ、毎時間アレク様から連絡が入るんですか」
クリスは驚いてジャンヌを見た。やろうと思えばそれだけまめになれるんだとクリスは感心した。
「アレク様のことだから、どこかで遊んでいらっしゃるのではないですか」
横の内務からシュテファンが言う。
「いやあ、それなら良いんだけど、今までこんなことはなかったもんだから」
「えっ、アレク様ってまめなんですね」
クリスは感心した。
「信じられんな」
オーウェンが首を傾げる。
「いや、大したメールじゃないんだよ。お昼が美味しかったとか、空がきれいだとか、ススキ野原を見たら私を思い出したとか・・・・、」
皆がジト目でジャンヌを見ていた。
「え、みんなどうしたの?」
「いやあ、ジャンヌ殿下は愛されているんですね」
イザベラが両手を握って言った。
「えっ?」
「だって、ススキ野原を見て君を思い出したですって」
外務の悠然も目を輝かして言う。
「私も言われてみたいです」
そこにいたアデリナにまで言われてしまいジャンヌは真っ赤になった。、
「オーウェン様もアレク様を見習われたらいかがですか」
横でシュテファンが茶化した。
「そうだよな。その手もあったか」
オーウェンは今度から外遊の時はクリスに30分おきに、元気メールを送ろうと心に誓ったのだ。それが迷惑メールに振り分けられる危険があるのに・・・・・
「悠然、昨日でノルディン皇帝、即位50周年の周年行事は全て終わったのよね」
「はい。今日は南部の地に視察のために移動される予定ですけど」
「メールは送ろうと思えば送れるはずよね」
クリスが頭を傾げた。
「電話してみましょうか」
「え、いやクリス、何もそこまでしないでも」
ジャンヌは慌てるがクリスはもう手を動かしていた。
「このお探しの電話は現在繋がりません・・・・時間をおいておかけ直し下さい」
電話の声が執務室の中に響いた。
「えっ、ノルディン帝国にいるはずなのに、繋がらないってどういう事何でしょう」
クリスが思ったことを声に出した。
「悠然。他の同行者に連絡を」
「はいっ、判りました」
「いや、でも、クリスそこまでしなくても」
「お姉様。ちょっと気になるんです。アレク様は魔力も多いですし、普通ノルディン帝国内ならばどこでも繋がるはずなんです。わざと電話を切っていらっしゃるならば良いのですが」
「クリス様。ペトロ様繋がりません。ライナー様も・・・・」
「ガチャ、おい、敵の攻撃が」
画面上には出ずに声だけが聞こえる。
「ライナー様。どうされたんですか」
「えっ、非常事態です。ノルディンのこう・・・・」
電話は途中でキレた。
「ライナー様!」
クリスが叫ぶが電話はそれからうんともすんとも言わなかった。
「ツーツーツーツー・・・・・」
切れた電話の音だけが執務室に響いていた。
**************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
『王太子に婚約破棄されたので、ぶった斬りました!何を?!出来損ない令嬢の波乱万丈恋愛物語』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/425620227
無事に完結しました。一時期HOTランキング1位獲得出来たのも皆様のおかげです。
ありがとうございました。
真夏の太陽が燦々と降り注いで皆の体力を奪っていた。
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クーラーなるものも出来ていたのだが、7月まではつけないという暗黙の了解がなされていたのだ。
「オーウェン、暑いあつすぎるぞ」
ヘルマンが大執務室の内務の席で叫んでいた。
みんな、やる気がそげていたが、そんな中でもびくともせずに仕事をしているのが二人。
一人はボフミエ魔導国の筆頭魔導師のクリスティーナ・ミハイル。マーマレードの侯爵家令嬢でもある。金髪碧眼の彼女は涼して顔をして、淡々と仕事をしていた。
そしてもう一人はオーウェン・ドラフォード、大国ドラフォードの皇太子で、このボフミエ魔導国では内務卿をしていた。こちらは目の前の画面を次々に切り替えて署名をしていく。
横で見ているヘルマンは到底かなう気がしなかった。
「暑い、暑いというのは仕事をしてから言ってくれ。ヘルマン、次の資料が遅いぞ」
「ヒェぇぇぇ」
「お前ら3人もいてなんで俺より遅いんだ」
「すいません、次の資料回します」
シュテファンが慌てて資料を回してくる。
そこへふらりとジャンヌがやって来た。
こんな暑い時に、この灼熱地獄の執務室にやってくるなんて、珍しいこともある。
「クリス、ちょっと聞きたいんだけど」
ジャンヌがクリスに聞いてきた。
「すいません。あと少しだけ待ってもらえますか。今きりをつけますので」
その周りでは、イザベラやフェビアンがホッとした顔をする。こちらもクリスに合わせて仕事をしていて、流石に限界だったのだった。
「はい。お姉様。どうされましたか」
クリスが顔を上げてジャンヌに聞いた。
「今日はアレクから連絡があったか」
「いえ、今朝はまだこちらにありませんけれど」
クリスは外務の方を見る。
「こちらにも外務卿からは連絡はありません」
外務の居残り部隊の悠然が首を振って、答える。
「どうかしたんですか」
「うーん、起きている時はアレクから毎時間何らかのメールが入るんだけど、今日はまだ全然入っていなくて」
「えっ、毎時間アレク様から連絡が入るんですか」
クリスは驚いてジャンヌを見た。やろうと思えばそれだけまめになれるんだとクリスは感心した。
「アレク様のことだから、どこかで遊んでいらっしゃるのではないですか」
横の内務からシュテファンが言う。
「いやあ、それなら良いんだけど、今までこんなことはなかったもんだから」
「えっ、アレク様ってまめなんですね」
クリスは感心した。
「信じられんな」
オーウェンが首を傾げる。
「いや、大したメールじゃないんだよ。お昼が美味しかったとか、空がきれいだとか、ススキ野原を見たら私を思い出したとか・・・・、」
皆がジト目でジャンヌを見ていた。
「え、みんなどうしたの?」
「いやあ、ジャンヌ殿下は愛されているんですね」
イザベラが両手を握って言った。
「えっ?」
「だって、ススキ野原を見て君を思い出したですって」
外務の悠然も目を輝かして言う。
「私も言われてみたいです」
そこにいたアデリナにまで言われてしまいジャンヌは真っ赤になった。、
「オーウェン様もアレク様を見習われたらいかがですか」
横でシュテファンが茶化した。
「そうだよな。その手もあったか」
オーウェンは今度から外遊の時はクリスに30分おきに、元気メールを送ろうと心に誓ったのだ。それが迷惑メールに振り分けられる危険があるのに・・・・・
「悠然、昨日でノルディン皇帝、即位50周年の周年行事は全て終わったのよね」
「はい。今日は南部の地に視察のために移動される予定ですけど」
「メールは送ろうと思えば送れるはずよね」
クリスが頭を傾げた。
「電話してみましょうか」
「え、いやクリス、何もそこまでしないでも」
ジャンヌは慌てるがクリスはもう手を動かしていた。
「このお探しの電話は現在繋がりません・・・・時間をおいておかけ直し下さい」
電話の声が執務室の中に響いた。
「えっ、ノルディン帝国にいるはずなのに、繋がらないってどういう事何でしょう」
クリスが思ったことを声に出した。
「悠然。他の同行者に連絡を」
「はいっ、判りました」
「いや、でも、クリスそこまでしなくても」
「お姉様。ちょっと気になるんです。アレク様は魔力も多いですし、普通ノルディン帝国内ならばどこでも繋がるはずなんです。わざと電話を切っていらっしゃるならば良いのですが」
「クリス様。ペトロ様繋がりません。ライナー様も・・・・」
「ガチャ、おい、敵の攻撃が」
画面上には出ずに声だけが聞こえる。
「ライナー様。どうされたんですか」
「えっ、非常事態です。ノルディンのこう・・・・」
電話は途中でキレた。
「ライナー様!」
クリスが叫ぶが電話はそれからうんともすんとも言わなかった。
「ツーツーツーツー・・・・・」
切れた電話の音だけが執務室に響いていた。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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