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第十二章 婚活と雪女
雪女はクリスの怒りの雷撃の前に地上から消滅させられました。
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チャドウィックの目は驚愕に見開かれていた。
クリスの魔術によってまさか山々が消失するなんて思ってもいなかったのだ。
たしかにクリスには戦神シャラザールが憑依しており、シャラザールが出てくれば何かしでかすとは思っていた。しかし、クリスだけでこのようなことをやるなど予想の範囲外だった。
戦神が出てきたら果たしてどうなるのだろう。
前回は自分自身が生き残れたのが奇跡なのだとチャドウィックは思い知らされた。
その横の宰相のオモンディは開いた口が塞がらなかった。
まさか、華奢なクリスが山々を魔力によって消失させるとは思ってもいなかったのだ。
南の山々は聖なる山々としてサウス王国では崇拝の対象になっていた。それを破壊させたとあっては下手したらオモンディの首が飛びかねない。
何しろ戦神シャラザールが嫌われる理由は聖なる北の山を破壊したことなのだ。
どうすれば良いかとオモンディは必死に考えだした。雪女のことなど全く脳裏から消えていた。
「グゥワーーーー」
クリスの魔力攻撃は雪女の脳内にも凄まじい痛みを与えた。
頭を抱えてのたうち回る。
そして、やっと立ち上がれるようになって、雪女は呆然とした。
何があったのだ。
外の気配を探ると巨大な洞窟の天井部分から空が見えていた。
空が・・・・・
「えっ」
雪女の思考が止まった。
この上には吹雪を吹き下ろす山々があったはずなのだ。
何年もかけて作り上げた冷却装置が無くなっていた。
と言うか山々が消え去るなんて事があり得るのか?
そんな事が出来るのは神々だけだ。
そして、こんな事をするのはあの考え無しの男女だけだ。
「やばい」
雪女は蒼白になった。
あのシャラザールには絶対に勝てない。
地界で落とされれば次は地獄しかない。
確か昔、言い寄ってきた閻魔を手ひどくふった記憶があった。
「あやつは根に持つタイプじゃ。絶対に妾を許さんじゃろう」
雪女は地下通路を作って逃げ出そうとした時だ。
「雪女みいーつけた」
ジャンヌの大声が上からした。
雪女は慌てて氷の魔術をジャンヌに放つ。
ジャンヌは慌てて避けた。
時間がない。
今から地下通路を作っている暇はないだろう。
雪女は強行突破することにした。
地上に出る。
「ゲッ」
「出たー」
雪女はクリスらの戦闘隊形の中に出てしまったのだ。
目の前にはこの前凍らせたチャドウィックがいた。
攻撃しようとした雪女だが、チャドウィックは一瞬で遠くに飛び去る。
やむを得ず、雪女は近くにいたオモンディを捕まえた。
「動くな。動くとこの者の命がないぞ」
雪女が叫ぶ。
周りを見る限りはシャラザールはいなかった。
あの山を壊したくらいだ。絶対に近くにいるはずだ。
雪女は山々を壊したがクリスだとは気づいてもいなかった。
「ふんっ、諸悪の根源、雪女。貴様さえ倒せればこの国の危機は去るだろう。宰相殿も自分ひとりの命で済めば喜んで命を差し出すはずだ」
アレクがニヤリと笑って言った。
「いえ、少し、お待ち下さい」
オモンディは慌てた。山々のことをどうすれば責任逃れ出来るか必死に考えていて、雪女のことは忘れていたのだ。
自業自得なのだが、赤い死神は非情だ。いくつもの国家を滅ぼしてきたのだ。
その言葉通りにオモンディもろとも雪女に攻撃をかけかねない。
雪女もそれを感じた。
こんな年寄り、盾にもならぬか。
「アレク様」
そのアレクの脅しに、思わずクリスが声をかけた。
「オモンディ様はこの国の宰相様です。諸共に攻撃するのはどうかと」
「左様ですか」
爆炎魔術を浴びせようとしていたアレクはクリスの声を聞き残念そうに言う。
アレクとしてはなんとしてもシャラザールの出てくる前にかたを付けたかった。
出てきたら更に碌でもないことが起こるに違いなかった。
武力だけならまだ耐えられたが、最近は事務仕事までさせられるのにはやってられなかった。
まあ、最悪の場合は今日はライナー等文官二人を連れてきている。アレクとしてはオーウェンを連れてきて確実に対処させたかったが、オーウェンがクリスを怒らせたので、それは叶わなかったが・・・・
そのアレクが別のことを考えてスキを見せた時に唐突に雪女は行動に移った。
アレクに指示を出した女が華奢で何も出来ない女に見えたのだ。
その前にいる女騎士二人も大したことはない。
雪女は一気に詰めるとオモンディを女騎士らに投げ出して氷の魔術を繰り出す。
思わず女騎士は避けた。
その一瞬の隙に女騎士らを避けてクリスの後ろに回ると後ろからクリスに抱きついた。
「動くな。動くとこの女を殺すぞ」
雪女は今度こそうまくいったと思った。
その華奢な女は何も出来まい。それにこの部隊の指揮官らしかった。
この女さえ人質にすれば何とか逃げられると愚かな考えにとりつかれた。
「クリス様」
護衛騎士のメイらは一瞬の隙きを突かれたことに驚いた。
本来ならば護衛失格だろう。
しかし、今この中で一番強いのはクリスなのだ。
その体制でクリスが雷撃しても倒れるのは雪女だけだ。
それに最悪シャラザールが来臨する。最近はクリスを守るよりも守られる方が圧倒的に多かった。シャラザールが来臨したら、今回の不手際をあげつらわれてまたぼろぼろになるまで特訓させられるのは目に見えていたが。
その最強のクリスに抱きつくなんて雷撃されろといっているようなものではないだろうか。これは飛んで火にいる夏の虫なのではないだろうか。
周りは呆れたように雪女を見た。
「な、何じゃ」
指揮者を人質にとったつもりなのに、残念な者を見るように周りから呆れて見られて雪女は流石に動揺した。
何か間違ったのか・・・雪女には判らなかった。
一方クリスの背に雪女の豊かな胸が押し付けられていた。その胸の大きさを強調するように。
オーウェンが顔を埋めていた大きな胸だ。
対して雪女の抱いているクリスの胸は小さい。
クリスは雪女の胸に抱かれて喜んでいるオーウェンのほおけた顔を思い出していた。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
クリスが怒りに震える。
「やばい、避けろ」
全員クリスから遠ざかろうとする。
「えっ」
雪女は理解に苦しんだ。本来人質を開放するために近づいてくるのではないのか。何故みんな爆発物から逃げるように遠ざかっていく???
「でかい胸を自慢するな」
次の瞬間クリスの怒りが爆発した。
「ギャーーーー」
雪女の悲鳴とともに
光の柱、雷柱がクリスから天に伸びる。
周りは一瞬で真っ白になりホワイト・アウトした。
そして、その閃光が消えたとき、雪女は地界から綺麗サッパリ消滅していた。
クリスの魔術によってまさか山々が消失するなんて思ってもいなかったのだ。
たしかにクリスには戦神シャラザールが憑依しており、シャラザールが出てくれば何かしでかすとは思っていた。しかし、クリスだけでこのようなことをやるなど予想の範囲外だった。
戦神が出てきたら果たしてどうなるのだろう。
前回は自分自身が生き残れたのが奇跡なのだとチャドウィックは思い知らされた。
その横の宰相のオモンディは開いた口が塞がらなかった。
まさか、華奢なクリスが山々を魔力によって消失させるとは思ってもいなかったのだ。
南の山々は聖なる山々としてサウス王国では崇拝の対象になっていた。それを破壊させたとあっては下手したらオモンディの首が飛びかねない。
何しろ戦神シャラザールが嫌われる理由は聖なる北の山を破壊したことなのだ。
どうすれば良いかとオモンディは必死に考えだした。雪女のことなど全く脳裏から消えていた。
「グゥワーーーー」
クリスの魔力攻撃は雪女の脳内にも凄まじい痛みを与えた。
頭を抱えてのたうち回る。
そして、やっと立ち上がれるようになって、雪女は呆然とした。
何があったのだ。
外の気配を探ると巨大な洞窟の天井部分から空が見えていた。
空が・・・・・
「えっ」
雪女の思考が止まった。
この上には吹雪を吹き下ろす山々があったはずなのだ。
何年もかけて作り上げた冷却装置が無くなっていた。
と言うか山々が消え去るなんて事があり得るのか?
そんな事が出来るのは神々だけだ。
そして、こんな事をするのはあの考え無しの男女だけだ。
「やばい」
雪女は蒼白になった。
あのシャラザールには絶対に勝てない。
地界で落とされれば次は地獄しかない。
確か昔、言い寄ってきた閻魔を手ひどくふった記憶があった。
「あやつは根に持つタイプじゃ。絶対に妾を許さんじゃろう」
雪女は地下通路を作って逃げ出そうとした時だ。
「雪女みいーつけた」
ジャンヌの大声が上からした。
雪女は慌てて氷の魔術をジャンヌに放つ。
ジャンヌは慌てて避けた。
時間がない。
今から地下通路を作っている暇はないだろう。
雪女は強行突破することにした。
地上に出る。
「ゲッ」
「出たー」
雪女はクリスらの戦闘隊形の中に出てしまったのだ。
目の前にはこの前凍らせたチャドウィックがいた。
攻撃しようとした雪女だが、チャドウィックは一瞬で遠くに飛び去る。
やむを得ず、雪女は近くにいたオモンディを捕まえた。
「動くな。動くとこの者の命がないぞ」
雪女が叫ぶ。
周りを見る限りはシャラザールはいなかった。
あの山を壊したくらいだ。絶対に近くにいるはずだ。
雪女は山々を壊したがクリスだとは気づいてもいなかった。
「ふんっ、諸悪の根源、雪女。貴様さえ倒せればこの国の危機は去るだろう。宰相殿も自分ひとりの命で済めば喜んで命を差し出すはずだ」
アレクがニヤリと笑って言った。
「いえ、少し、お待ち下さい」
オモンディは慌てた。山々のことをどうすれば責任逃れ出来るか必死に考えていて、雪女のことは忘れていたのだ。
自業自得なのだが、赤い死神は非情だ。いくつもの国家を滅ぼしてきたのだ。
その言葉通りにオモンディもろとも雪女に攻撃をかけかねない。
雪女もそれを感じた。
こんな年寄り、盾にもならぬか。
「アレク様」
そのアレクの脅しに、思わずクリスが声をかけた。
「オモンディ様はこの国の宰相様です。諸共に攻撃するのはどうかと」
「左様ですか」
爆炎魔術を浴びせようとしていたアレクはクリスの声を聞き残念そうに言う。
アレクとしてはなんとしてもシャラザールの出てくる前にかたを付けたかった。
出てきたら更に碌でもないことが起こるに違いなかった。
武力だけならまだ耐えられたが、最近は事務仕事までさせられるのにはやってられなかった。
まあ、最悪の場合は今日はライナー等文官二人を連れてきている。アレクとしてはオーウェンを連れてきて確実に対処させたかったが、オーウェンがクリスを怒らせたので、それは叶わなかったが・・・・
そのアレクが別のことを考えてスキを見せた時に唐突に雪女は行動に移った。
アレクに指示を出した女が華奢で何も出来ない女に見えたのだ。
その前にいる女騎士二人も大したことはない。
雪女は一気に詰めるとオモンディを女騎士らに投げ出して氷の魔術を繰り出す。
思わず女騎士は避けた。
その一瞬の隙に女騎士らを避けてクリスの後ろに回ると後ろからクリスに抱きついた。
「動くな。動くとこの女を殺すぞ」
雪女は今度こそうまくいったと思った。
その華奢な女は何も出来まい。それにこの部隊の指揮官らしかった。
この女さえ人質にすれば何とか逃げられると愚かな考えにとりつかれた。
「クリス様」
護衛騎士のメイらは一瞬の隙きを突かれたことに驚いた。
本来ならば護衛失格だろう。
しかし、今この中で一番強いのはクリスなのだ。
その体制でクリスが雷撃しても倒れるのは雪女だけだ。
それに最悪シャラザールが来臨する。最近はクリスを守るよりも守られる方が圧倒的に多かった。シャラザールが来臨したら、今回の不手際をあげつらわれてまたぼろぼろになるまで特訓させられるのは目に見えていたが。
その最強のクリスに抱きつくなんて雷撃されろといっているようなものではないだろうか。これは飛んで火にいる夏の虫なのではないだろうか。
周りは呆れたように雪女を見た。
「な、何じゃ」
指揮者を人質にとったつもりなのに、残念な者を見るように周りから呆れて見られて雪女は流石に動揺した。
何か間違ったのか・・・雪女には判らなかった。
一方クリスの背に雪女の豊かな胸が押し付けられていた。その胸の大きさを強調するように。
オーウェンが顔を埋めていた大きな胸だ。
対して雪女の抱いているクリスの胸は小さい。
クリスは雪女の胸に抱かれて喜んでいるオーウェンのほおけた顔を思い出していた。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
クリスが怒りに震える。
「やばい、避けろ」
全員クリスから遠ざかろうとする。
「えっ」
雪女は理解に苦しんだ。本来人質を開放するために近づいてくるのではないのか。何故みんな爆発物から逃げるように遠ざかっていく???
「でかい胸を自慢するな」
次の瞬間クリスの怒りが爆発した。
「ギャーーーー」
雪女の悲鳴とともに
光の柱、雷柱がクリスから天に伸びる。
周りは一瞬で真っ白になりホワイト・アウトした。
そして、その閃光が消えたとき、雪女は地界から綺麗サッパリ消滅していた。
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