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第十二章 婚活と雪女

クリスは南の山脈を魔術で消滅させました

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ブリーフィングが終わって、出発は明日以降にしたほうが良いという宰相を急かしてスカイバードに乗り込ませた。宰相は残りの全軍を連れて行きたそうだったが、下手したら現場まで何十日もかかりそうだと断ったのだ。

スカイバードの先頭に座らせた宰相は景色にはご満悦だった。
しかし、戦力の少なさが不満だと、たらたらと皇太子に愚痴っていた。



「クリス。あの宰相にあんな好きなこと言わせてよかっのか」
「そうだ。絞めるならば絞めましたが」
後ろの方の席に座ったジャンヌとアレクが振り返って言ってくる。

「いえ、ああ言ってもらったほうが、何かあったときに助かるので」
笑ってクリスが言う。

「何かあったときとは?」
ライナーが不安を覚えて訊いてきた。

「そんなのクリスが山脈を破壊してしまった時のことに決まっているだろう」
ジャンヌが振り返って言う。

「え、まさかそんな事は」
ライナーが思わずクリスを見る。

「そうですよ。お姉さま。いくら私でも山脈まるごと消してしまうことなんて出来ません。ナタリーもそう思うわよね」
クリスは言い切ると自分の騎士に同意を求めた。

「えっ、私ですか。いや、まあ」
驚いたナタリーだったが、返事はすぐには出来なかった。

「何なの、その反応。そう思われますよね。アレク様」
「えっ、ええ、まあ」
クリスの必死の同意を求める声に顔をひきつらせてアレクは頷いた。

「クリス、無理矢理は良くないぞ」
ジャンヌが注意する。

「無理やりじゃないですよね。アレク様」
クリスは必死に言うが、
「それを無理やりというんだ」
ジャンヌに諭される。

「無理やりじゃないのに・・・・・」
クリスはふくれっ面でブツブツ言い出した。

それを見ながら、ライナーは信じられない思いだった。
ボフミエの強力魔導師の2トップである、ジャンヌとアレクがクリスが山脈を消滅させるのが当たり前のように言っているのだ。
ライナーはクリスがいかに強力な魔導師と言えども6000m級の聳える山々を消すことなど不可能だと思っていた。

「前方に巨大山脈見えてきました」
操縦していたザンがインカムで報告する。
「ロルフ何か見えるか」
「山の地下に巨大な魔力感じます。ジャンヌ様やアレク様よりも大きいです」
ロルフが言う。

「よし、ビアンカ障壁を張ってくれ」
「了解しました」
ジャンヌの言葉にビアンカが応じるとビアンカはスカイバードを障壁で囲った。

「よし、ザン、適当な所に着陸させてくれ」
「了解しました」


雪女は飛行物体が近づいてくるのを感知、透視した。

「何じゃあれは」
黄色い鳥型の飛行物体は雪女が初めて見るものだった。
しかし、その機体に障壁が張られているのを察知する。

それはゆっくりと木々を倒して着陸した。

山脈の手前だ。

吹雪の中、中から人がぞろぞろ通りてきた。

「何をするつもりかの。取り敢えず、様子を見るか」
吹雪の中ではあまり何も出来まいと、まずは敵の手を見ようと雪女は静観する構えを見せた。

クリスを中心にボフミエのものは戦闘態勢についた。

それをサウスの5人は静観していた。

吹雪の風が冷たい。
こんな中ではまともに行動するのは10分が限度だろう。

「では、オモンディ様。山をどうしても宜しいのですね」
クリスが最後の確認をする。

「ええ、筆頭魔導師様。出来るなら最悪山脈全てを吹き飛ばしていただいても結構ですよ」
吹雪に飛ばされそうになりながら、絶対にできないだろうと思って宰相は答えていた。

「おいっ、本当に良いのか」
クリスの力を少しは知っているチャドウィックが聞いた。

「大丈夫ですよ。殿下。あのような華奢な方がいくらがんばっていただいても山はびくともしませんよ」
馬鹿にしたように余裕で宰相は答えた。


「よし、クリスが山を吹き飛ばして雪女が出てきたら一斉に攻撃するぞ」
ジャンヌが全員に指示を飛ばす。

「では行きます」

クリスが合図する。

手を広げて天に向ける。

周りから光が次々に集まってくる。

「えっ」
宰相はその光が巨大な光の塊になっていくのを見てドキモを抜かれた。

吹雪の冷気も光に次々に取り込まれていく。

周りの温度が20度以上上がった。

「行きなさーい」
クリスが叫ぶと巨大な光の塊を山脈に向けて放った。

それは一瞬で巨大な光の奔流となって山脈に吸い込まれていった。

辺り一面強烈な光が覆い、皆目が見えなくなる。

次の瞬間に更なる閃光が光り大爆発が起こった。

クリスらは慌てて伏せたが、唖然として突っ立っていた宰相らは爆風に弾き飛ばされて地面に叩きつけられる。


そして、光と爆炎が消えた後には南方の山々は消滅していた・・・・・
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