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第十二章 婚活と雪女

クリスらはサウス王国に遠征に行き、宰相から山を吹き飛ばしても良いとお墨付きをもらいました

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翌日クリスらを乗せたスカイバードの特別機が一路サウス王国を目指した。

ナッツァの空港ではオーウェン、ウィル、アルバートらがついていきたいという希望を述べて犬のようにしっぽを振るようにしていたが、クリスは全く無視したのでしゅんとしていた。

ロルフは彼らと何とか変わって欲しいとそれを見ていたが、その希望を打ち砕かれてがっかりしてスカイバードに乗った。

そして、一番うしろに座るが、後ろから見るとアレクとジャンヌの大きな魔力の塊にそれを上回ってスカイバードの中に到底収まりきらないクリスの巨大な魔力の塊に押しつぶされそうな気分に襲われる。これが数時間続くのかと思うと、暗澹とする気分だった。

「クリス様。これよりスカイバードはまだ雪害にあっていないサウスの北部のノースゲートに向かいます。ノースゲートには王都から逃れた宰相のオモンディが迎えてくれるそうです」
アレクが報告する。

「わかりました。雪女はどこにいると思われますか」
「一時期は王都にいたようですが、今は南の山脈地帯にいるのではないかと思われます」
「山脈地帯に乗り込むのか」
ジャンヌがワクワクして聞く。

「しかし、ジャンヌ。吹雪の中、北の山脈に行くのは南国育ちの者には厳しいのではないか」
寒い国であるノルディン帝国やマーマレードの北部は寒い地方だったが、ボフミエ出身のビアンカやロルフは厳しそうだった。

「やはりジャルカ様がおっしゃっておられたように、冷気の元を叩く必要があると思います」
クリスが言う。

「えっ、じゃあ南山脈を吹き飛ばすのか」
驚いてジャンヌが聞いた。

「いえ、さすがに吹き飛ばすのは難しいかと思いますが、私が攻撃すればある程度の氷は溶けると思うんです。そこで動揺した雪女が出て来たところを叩くのはどうでしょうか」
クリスが言う。

連れてきた魔導師や騎士はお互いをみやった。

クリスが攻撃したら南山脈の山々が無事に済むという保証はないのではないかと。

何しろクリスは既に山を2つ消滅させている。

これが3っつめにならないと言えるものは誰一人としていなかった。と言うか反対に大半の者はそうなるのではないかと危惧したのだった。



数時間の長時間飛行を終えて、スカイバードの特別機はサウスゲートに着陸した。
海に水しぶきを上げて着陸すると臨時に作られた桟橋に横付けされる。

「これはこれは北の皇太子殿下。ようこそこの南の王国にいらっしゃいました。私はサウス王国の宰相のオモンディと申します」
先頭で降り立ったアレクに壮年の宰相が声を駆けてきた。

「お出迎え痛みいる。ボフミエ魔導国の外務卿のアレクサンドルだ」
二人は握手をした。

「そして、我が国の筆頭魔導師様のクリスティーナ様だ」
アレクはクリスを紹介したが、

「これはようこそ、いらっしゃいました」
一応オモンディは頭は下げたが、即座にその後ろから降りてきた自国の皇太子に向いた。

「これは皇太子殿下。北の皇太子殿下をお連れ頂けるなど、大層なご活躍でしたな」
宰相はその労をねぎらう。
サウスでは女性はあまり重きを置かれていず、オモンディは降りてきた女性が、その華奢な姿かたちからも世界最強魔導師だとはとても思えなかった。



一同は状況把握のために広い部屋に案内された。

「状況はひどいのか」
チャドウィックが聞く。

「報告したように王都はもはや氷漬けです。大半の民は北の穀倉地帯に逃しましたが、このままではジリ貧です。何としても冷気の進出を止めないと」

「その冷気なのだが、南の山脈を魔術で攻撃して氷を溶かすといてのはどうだろうか」
アレクが提案する。

「それが出来ればそうしていただきたいのですが、いくら貴方様でもなかなか厳しいのでは」
宰相が疑問視する。巨大な氷を溶かすには大量の魔力がいるし、普通の魔術師がやっても焼け石に水だった。

「私でなくて筆頭魔導師様がしていただけると思うのだが」
アレクの一言で、宰相はクリスを見る。

「このような華奢な令嬢がですか」
いぶかしそうにオモンディは言った。

「筆頭魔導師様は貴国の皇太子を追ってきた雪女の分身を一撃で退治されたのだ。おそらく有効な手段になると思うが」

「まあ、北の皇太子殿下がそうおっしゃられるならお任せいたしますが、そのお体では山々はびくともしないのではありませんかな」
馬鹿にしたようにオモンディは言った。

「どこまで出来るか判りませんが、全力で勤めさせて頂きます」
クリスが下手に出る。

「ええ、ええ、山を吹き飛ばすなり、消滅させるなり、好きにして頂いて全然構いませんよ」
笑って宰相のオモンディは言った。

周りのボフミエの者たちは宰相からのお墨付きに安堵した。
特にクリスはそう思った。
これで山々を消滅させても何も文句は言われないと。

宰相はクリスの魔力量の多さを見誤っていた。

宰相は後ほどこのように言った事をとても後悔することになるとは思ってもいなかった。
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