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第十二章 婚活と雪女

雪女の独白

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雪女 スノークィーン、妾の名前じゃ

もっとも、昔は天界では、妾の白い肌と美しい黒髪で雪の女神と呼ばれて崇拝されておった。

妾のあまりの美しさに妾が現れると付近の男どもには妾しか目に入らなくなったと言う。

男どもは妾に声をかけられると呆けたような顔で即座に堕ちた。

女たらしの全能神のゼウスもイチコロ、真面目なふりをしたポセイドンも妾がちょっと流し目を送っただけでめろめろになっておった。

妻一筋の堅物の男ですら、妾が上目遣いに見上げてしなだれかかるだけで妾の虜となったものじゃった。

そんな遊びで引っ掛けた男と情事に勤しんでいる所をあの男女のシャラザールに踏み込まれた。

「貴様らのような淫乱な奴は地界に落ちろ」と何をトチ狂ったか妾を地上に叩き落としてくれたのだ。

シャラザールは男にもてないので、もっとも何故か奴は女にはもてたが、男どもは怖がって奴には近寄ろうとしなかったのが、妾のせいだと嫉妬に狂って逆恨みされて凶刃をふるいおったのだ。

妾の魅力も美しさもその男女の前には全く効力は無かった。

妾はその野蛮な男女に美しい肢体を叩き切られていた。



気づいたときには、地界で倒れていた。

そして、その落とされた地は妾のような繊細な乙女には暑すぎるところであった。

今にも暑さで死にそうになりながら、何とか高山にたどり着いてそこで躰を回復させるのに、長い年月がかかってしもうた。

やっと妾が快適に過ごせるようになって、妾はやっと人並みの生活を持てるようになった。

地界には、天界の神々のように見目麗しい男どもには中々お目にかかれなんだが、妾の美的感覚にたまに耐えうる男に出会えた。

そういう男をいつものように微笑んで心をつかむと束の間の逢瀬を楽しむのじゃ。

男どもは天女のような妾を抱けて満足だったろう。

何故か一夜で凍りついて干からびて朽ち果てたが、至福のときを妾と過ごせたのだから良しとすべきであろう。

妾の力が強まって快適な場所も急激に広まった。

ちょっと冷気を押し出すと、その国の王都までもがその中にすっぽりと含まれるようになった。さすが王都ともなると人の数も増えて、妾の気に入る男どもの数も増えた。

その時に目をつけたチャドウィックなる小僧は、寒いのが苦手とかで、ボフミエとかいう国に逃げていきおったらしい。

天界のゼウスですら妾の虜になったと言うのに、たかだか人間の分際で妾の招待を蹴るなど、あって良いことではなかった。

妾も多くの人間を取り込めたので、力も貯まった。

不埒なチャドウィックなる者を捕まえに行くのに、分身の術も使えるじゃろう。

妾は力の一部を使ってそのボフミエの地に分身を送りこむことにした。

そこが灼熱の地であるということが考えから抜けていたのが、今思うにつくづくヘマをしたと後悔することになるのじゃが、その時はそんなことは考えもしなかったのじゃ。
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