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第十二章 婚活と雪女
晩餐の時間まで赤い死神はテレーゼ3姉妹の相手をしました
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それからが大変だった。
食事の手配は空港からフェビアンが指示出して変更していたが、大広間の机の配置の変更から何から全てを1時間で変更する。
一方で魔導師や文官、兵士を動員して部屋の準備を必至に整えた。
それをオーウェンとフェビアンを中心として行い、応接室の中はクリス、アレク、アメリアが中心になって接待した。
ジャンヌは絶対に無理と言って魔導師団に逃げ出したが、それでも夕食の前には戻ってくると約束させられていたが・・・・
「アレクサンドル皇太子殿下。この絵はあなたがトリポリから取り寄せられたとか」
「はい。トリポリ国王が快くこちらに寄贈してくれました」
オリビア女王の問いにアレクが答える。
「左様か。予がいくら頼んでもトリポリ国王はこの絵をくれなんだが」
幾分悔しそうにオリビアが言う。
アレクは思い出していた。はるか昔、トリポリ国王に相談されていたことを。確かレンブランドの絵をテレーゼ女王が欲しがっていると。絵などどうでも良いと思っていたが、シャラザール3国に嫌がらせのために、絶対に断れと指示ししたのだったか・・・・本人は今までそう指示したことも忘れていた。
この絵は、たまたま先日トリポリに寄った時に、トリポリ国王から自慢たらたら見せられて、その絵がシャラザールの勇姿だったので、即座に奉納させたのだ。
来臨したシャラザールに見せたら喜んでいたので、良しとしたのだが。
「先程クリスにもお願いしたのだが、これはテレーゼ建国の折の始祖シャラザール様の勇姿を描いたもの。もし、よろしければお譲り頂けると有り難いのだが」
オリビアの言葉にアレクは必死に考えた。
テレーゼはシャラザール3国の1つで、べつに絵をテレーゼに移してもおそらくシャラザールは何も言わないだろう。何しろシャラザール教の教会の中に自分の勇姿の絵を貼り出すくらいだから。それにマーマレードの同盟国の女王の心象を良くすることはジャンヌとの婚姻にもプラスだ。
「クリスティーナ様はなんと」
アレクがクリスに様をつけたことを皆驚いた。基本は礼儀作法から言うと様つけはいらない。何しろ隣りにいるアメリアもアレクは呼び捨てだ。しかし、赤い死神が様つけするなんて余程だ。
クリスの言葉を思い出して、苦虫を噛み潰したようにオリビアは黙る。
「すいません。アレクサンドル様。私はアメリア様とヘルマン様の婚姻祝にお贈りするとアレクサンドル様に断りもなしに言ってしまったのですが、アレクサンドル様がご不満ならば撤回しますが・・・・」
「滅相もございません。クリスティーナ様がそうお決めになられたのなら、そうしていただければトリポリ国王も喜びましょう」
このアレクの反応に、またテレーゼ姉妹たちとクリスの母は目を見張ってアレクを見る。身内なのに、クリスだけが様付けだ。傲岸無比の赤い死神が、何故クリスだけに謙る?
みんなの疑問を無視してアレクはクリスの口からそうでたのならば問題ないと頷く。クリスイコールシャラザールなのだ。シャラザールが後で文句を言ってもクリスから言われたと言えば黙認するだろう。
「王宮の目立つ所に置いていただけたらシャラザール様の勇姿も映えましょう」
その言葉に4人の目が点になる。神なんて信じないと思われた赤い死神が戦神を様付けで呼んでいる。
「いかがされましたか」
4人の態度に気づいてアレクが聞く。
「いや、アレクサンドル殿下が戦神を褒められたので、驚いたのだ。戦神はノルディンではタブーではないのか」
オリビアが訊く。
「滅相もございません。私はシャラザール様の忠実な下僕。いついかなる時もシャラザール様に忠誠を誓っております」
アメリアはシャラザールにごまするアレクを白い目で見、4人の母親たちは驚きの目で見た。
「左様か。我々はシャラザール様の子孫。当然我々もシャラザール様には忠誠を誓っておる」
「そうでしょう。そうでしょう。その点は私も皆様方と同じというわけです」
アレクは笑って言った。そう、アレクは絶対にシャラザールしいてはクリスに逆らわない。
「ノルディンの他の方々はどうなのですか」
マーマレードのエリザベス王妃が尋ねる。
「この国に居るものは同じ考えですし、軍の大半もそうです。皇帝は違う考えのようですが、なあに、皇帝などシャラザール様の前には手も足も出んでしょう。クリス様の雷撃の前に、宮殿を破壊されて震えているくらいですから」
「アレクサンドル様。過ぎ去った古傷を突かないでください」
アレクの言葉に赤くなってクリスが言う。
周りものものは超軍事国家の父皇帝を簡単にこき下ろすくせにクリスに様付けで話すアレクを奇異な生き物でも見るように見たが・・・・。
「アレクサンドル殿下。不躾で申し訳ありませんが、あなたクリスに好意を抱いていらっしゃるの?」
思わずエリザベスが聞いた。アレクの態度が思わず余計なことを尋ねさせた。
「義母上。何を仰るのですか。クリスティーナ様には忠誠を捧げておりますが、恋愛感情はジャンヌ殿下一筋に捧げております」
「誰が義母上じゃ」
そこへ転移してジャンヌが現れて思いっきりアレクの頭を叩いた。
「痛い」
アレクが頭を抱えるが、
「ジャンヌ。なんてはしたない」
「ゲッ」
エリザベスに注意されてジャンヌは固まっていた。
「申し訳ありません。アレクサンドル殿下」
「いえいえ、こういうじゃれ合いはいつもの事。二人の親愛の現れです」
笑ってアレクが言った。もう一発しばこうとして、母と目があって慌てて手を引っ込めるジャンヌだった。
そこへノックの音がしてオーウェンが準備が整ったことを知らせてきた。
「では皆様。晩餐の用意が整いましたので、こちらへどうぞ」
クリスが立ち上がって一同を案内した。
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わざわざこの話読んで頂いてありがとうございます。
次話は明日朝です。
引き続きよろしくお願いします。
食事の手配は空港からフェビアンが指示出して変更していたが、大広間の机の配置の変更から何から全てを1時間で変更する。
一方で魔導師や文官、兵士を動員して部屋の準備を必至に整えた。
それをオーウェンとフェビアンを中心として行い、応接室の中はクリス、アレク、アメリアが中心になって接待した。
ジャンヌは絶対に無理と言って魔導師団に逃げ出したが、それでも夕食の前には戻ってくると約束させられていたが・・・・
「アレクサンドル皇太子殿下。この絵はあなたがトリポリから取り寄せられたとか」
「はい。トリポリ国王が快くこちらに寄贈してくれました」
オリビア女王の問いにアレクが答える。
「左様か。予がいくら頼んでもトリポリ国王はこの絵をくれなんだが」
幾分悔しそうにオリビアが言う。
アレクは思い出していた。はるか昔、トリポリ国王に相談されていたことを。確かレンブランドの絵をテレーゼ女王が欲しがっていると。絵などどうでも良いと思っていたが、シャラザール3国に嫌がらせのために、絶対に断れと指示ししたのだったか・・・・本人は今までそう指示したことも忘れていた。
この絵は、たまたま先日トリポリに寄った時に、トリポリ国王から自慢たらたら見せられて、その絵がシャラザールの勇姿だったので、即座に奉納させたのだ。
来臨したシャラザールに見せたら喜んでいたので、良しとしたのだが。
「先程クリスにもお願いしたのだが、これはテレーゼ建国の折の始祖シャラザール様の勇姿を描いたもの。もし、よろしければお譲り頂けると有り難いのだが」
オリビアの言葉にアレクは必死に考えた。
テレーゼはシャラザール3国の1つで、べつに絵をテレーゼに移してもおそらくシャラザールは何も言わないだろう。何しろシャラザール教の教会の中に自分の勇姿の絵を貼り出すくらいだから。それにマーマレードの同盟国の女王の心象を良くすることはジャンヌとの婚姻にもプラスだ。
「クリスティーナ様はなんと」
アレクがクリスに様をつけたことを皆驚いた。基本は礼儀作法から言うと様つけはいらない。何しろ隣りにいるアメリアもアレクは呼び捨てだ。しかし、赤い死神が様つけするなんて余程だ。
クリスの言葉を思い出して、苦虫を噛み潰したようにオリビアは黙る。
「すいません。アレクサンドル様。私はアメリア様とヘルマン様の婚姻祝にお贈りするとアレクサンドル様に断りもなしに言ってしまったのですが、アレクサンドル様がご不満ならば撤回しますが・・・・」
「滅相もございません。クリスティーナ様がそうお決めになられたのなら、そうしていただければトリポリ国王も喜びましょう」
このアレクの反応に、またテレーゼ姉妹たちとクリスの母は目を見張ってアレクを見る。身内なのに、クリスだけが様付けだ。傲岸無比の赤い死神が、何故クリスだけに謙る?
みんなの疑問を無視してアレクはクリスの口からそうでたのならば問題ないと頷く。クリスイコールシャラザールなのだ。シャラザールが後で文句を言ってもクリスから言われたと言えば黙認するだろう。
「王宮の目立つ所に置いていただけたらシャラザール様の勇姿も映えましょう」
その言葉に4人の目が点になる。神なんて信じないと思われた赤い死神が戦神を様付けで呼んでいる。
「いかがされましたか」
4人の態度に気づいてアレクが聞く。
「いや、アレクサンドル殿下が戦神を褒められたので、驚いたのだ。戦神はノルディンではタブーではないのか」
オリビアが訊く。
「滅相もございません。私はシャラザール様の忠実な下僕。いついかなる時もシャラザール様に忠誠を誓っております」
アメリアはシャラザールにごまするアレクを白い目で見、4人の母親たちは驚きの目で見た。
「左様か。我々はシャラザール様の子孫。当然我々もシャラザール様には忠誠を誓っておる」
「そうでしょう。そうでしょう。その点は私も皆様方と同じというわけです」
アレクは笑って言った。そう、アレクは絶対にシャラザールしいてはクリスに逆らわない。
「ノルディンの他の方々はどうなのですか」
マーマレードのエリザベス王妃が尋ねる。
「この国に居るものは同じ考えですし、軍の大半もそうです。皇帝は違う考えのようですが、なあに、皇帝などシャラザール様の前には手も足も出んでしょう。クリス様の雷撃の前に、宮殿を破壊されて震えているくらいですから」
「アレクサンドル様。過ぎ去った古傷を突かないでください」
アレクの言葉に赤くなってクリスが言う。
周りものものは超軍事国家の父皇帝を簡単にこき下ろすくせにクリスに様付けで話すアレクを奇異な生き物でも見るように見たが・・・・。
「アレクサンドル殿下。不躾で申し訳ありませんが、あなたクリスに好意を抱いていらっしゃるの?」
思わずエリザベスが聞いた。アレクの態度が思わず余計なことを尋ねさせた。
「義母上。何を仰るのですか。クリスティーナ様には忠誠を捧げておりますが、恋愛感情はジャンヌ殿下一筋に捧げております」
「誰が義母上じゃ」
そこへ転移してジャンヌが現れて思いっきりアレクの頭を叩いた。
「痛い」
アレクが頭を抱えるが、
「ジャンヌ。なんてはしたない」
「ゲッ」
エリザベスに注意されてジャンヌは固まっていた。
「申し訳ありません。アレクサンドル殿下」
「いえいえ、こういうじゃれ合いはいつもの事。二人の親愛の現れです」
笑ってアレクが言った。もう一発しばこうとして、母と目があって慌てて手を引っ込めるジャンヌだった。
そこへノックの音がしてオーウェンが準備が整ったことを知らせてきた。
「では皆様。晩餐の用意が整いましたので、こちらへどうぞ」
クリスが立ち上がって一同を案内した。
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わざわざこの話読んで頂いてありがとうございます。
次話は明日朝です。
引き続きよろしくお願いします。
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