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第十一章 パレルモ王国の陰謀

影共の攻撃は世界各地で防がれ、パレルモ国境に大国連合軍が攻め込みました。

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パレルモ王国の影達はこの時間次々にターゲットに接触しようとしていた。

男はマーマレードの王宮近くのホテルの2階から階下を通る馬車を見詰めていた。

今回のターゲットはボフミエの小娘の父親だった。小娘ほどの魔力はないと聞いていた。
もうじきこの下を馬車で通るはずだ。
ボフミエの小娘も実の父を殺されて悲観にくれるが良い。
男は思った。

もっとも今日のボフミエ王宮の暗殺計画でその小娘が殺されているかもしれないが。
馬車がゆっくりと階下を通る。距離にして20メートル。爆裂魔術で一瞬だろう。

男は「爆発せよ」
呪文を唱えた。

男の体から爆裂魔術が発動する。
しかし、魔術は馬車の前で四散する。

「な、何だと」
男は驚いた。

次の瞬間馬車の窓から白い手が伸びた。

そこから放たれた魔術が男を捕らえた。男は2階から地上に叩き落されていた。

地面に這いつくばる。

地面に胸を叩きつけられて肋が何本か折れたはずだ。

まさか、侯爵にこんな魔導師がいたとは。

止まった馬車からスラリとした美しい婦人が降り立つ。

「あなたが、殿下のおっしゃるパレルモのゴキブリの一人なの」
女性は口を扇子で覆って話した。

「おのれ」
男はなんとか立ち上がろうとした。

「少しはやるようね」
馬鹿にして婦人は言った。

「シャーロット。後ろ」
馬車から侯爵が声を出した。

後ろから迫った男がナイフを突き出した。

しかし、シャーロットに近づく前に弾き飛ばされる。

「おのれ」
周りから現れた男たちが一斉に魔術を放つ。

「ふんっ、クズは何人集まってもクズね」
全てをシャーロットは障壁で弾く。


「えっ」
そのシャーロットは上空から巨大な魔力が接近しているのを感じた。

「出来たらここでお前たちの相手をしたかったけれど、時間切れみたい。あなた達も命が惜しければ逃げなさい」
シャーロットは周りの影共に言ってやる。

「何を言う。逃げなければならないのは・・・・・」
その瞬間に天空から落雷が枝分かれしてパレルモの影だけに襲いかかった。

凄まじい爆雷の音の後、黒焦げになった影達の死体しか残っていなかった。

「あなた達、ウチの娘に何をしたの。ここまで怒らせたらもう終わりね」
哀れんでシャーロットは言った。

「シャーロット大丈夫か」
慌てて侯爵が飛び出してきた。

「大丈夫よ。クリスがやってくれたわ」
「えっ、クリスが? しかし、クリスは何千キロも離れたボフミエに居るのだぞ」
「ええ、更にパワーアップしているわ」
嘆息してシャーロットは言った。

こんな事をクリスがしたと世間に知られたらまた、嫁の貰い手が減ってしまう。
シャーロットはクリスを欲しいと言ってくれるオーウェンにいっそのこと渡してしまおうかと本気で考え始めた。何しろ娘はドラフォードでも多くのシンパを既に抱えているのだ。
娘に一度話してみようと本気でシャーロットは思った。



一方今回のヘイモ皇太子とクリスの会見の様子は、魔導電話を使って全国中継されていた。
ジャルカが終わった後にパレルモの影に対してゴキブリホイホイを発射して影共に恐怖に落とすために使おうと思って手配していたのだ。


解説には事務官のフェビアンと侍女のアデリナが急遽当てられていた。

「なんと、なんと、ドラフォードのアルフェスト卿は、パレルモのクズによって娘を人質にされたバルトルト事務官の自爆攻撃で亡くなっていたのですね。パレルモのクズどもはその後娘さんも殺したとか、もう悪逆非道としか言いようがないですね」
フェビアンがマイクに台本通り読む。

「えっ、でも、娘さん私お世話しましたけど」
時間前に無理やり連れてこられよく判っていない、アデリナがぽろりと言う。
その前に必至に台本を突き出してフェビアンが指差す

「あっ、すいません。間違えでした」
「そう、そして、この悪逆非道のパレルモのクズ」
「いや、黒カビ」
「殿下はゴキブリと呼んでいらっしゃいましたが、は今回聖女クリス様とその周りの方々に攻撃をかけると脅迫してきたのです」
「えっ、じゃあ私もまた狙われるのですか」
「そうですね。パレルモのゴキブリ共は弱いものを狙ってくる人類の敵です。怖いでしょう」
「そんな事ないです」
「えっ」
台本通りに言わないアデリナにまたフェビアンは固まる。

「だって、クリス様が絶対に助けに来てくれますから。前回の拐われた時も一瞬でクリス様が助けに来ていただきましたし。クリス様が本気になったらパレルモのクズなんて一瞬で終わりです。そう思うでしょ。フェビアンさんも」

「えっ、まあ、実際に誘拐犯とそれを煽ったり潜伏したりしているパレルモのゴキブリ共を一撃で処断されましたし」
脚本にかいていないけれどもうこうなったら仕方がないとフェビアンは思った。

「そうなんです。クリス様は本当に正義の味方なんです。そして強いんです。何しろ世界一の魔導師なんです。

奴隷として売られようとしていた私を助けてくれましたし、私達を餓死せさせようとした悪徳商人のGAFAも一撃で殲滅してくれました。現れた人類の敵魔王に対しても雷撃で黒焦げにしてくれましたし」
アデリナはクリスの大ファンで話しだしたら止まらなかった。

しかし、
「キャアアアアア」
突然アデリナが悲鳴を上げた。

画面の中でオーウェンが血しぶきを上げて倒れるのが映ったのだ。


「皇太子殿下!」
その画像を派遣されたザール北部パレルモとの国境の駐屯地で見ていたベン・ドーブネル ドラフォード東方第一師団第一大隊長は声を上げた。

「申し訳ありません。クリス様。そこの皇太子に妹を殺されると脅されてやりました」
その後ろで平伏している男の声を聞いてベンは立ち上がった。

「おのれ、パレルモのゴキブリ共め。もう許さん」
大股で歩き出す。

「全軍出撃するぞ」
叫ぶと扉を開けた。
そして、そこで控えていたパレルモの影が慌てて斬りかかる。

「どけっ。下郎」
一刀のもとベンはパレルモの影を切り倒していた。

「パレルモの影共の襲撃だ。一人残らず切り捨てろ」
全館の中にベンの大声が響いた。
暗殺のために潜り込んでいた影達は次々に見つけられて切り下げられた。

「おのれ、パレルモめ。我らを攻撃するとは許せん。全軍パレルモ領に突入するぞ」
「おう」
第一大隊は騎乗するや集団隊形を取って国境に突進した。


「大変です。また、ドーブネルの第一大隊が攻撃に入りました」
副官が第一師団長のミューラーに報告してきた。

「何だと、まだ本国からは攻撃の命令は来ていないぞ」
ミューラーは文句を言う。あいつはいつもこうだ。

「しかし、皇太子殿下が刺されましたが」
副官が言う。確かにミューラーもその映像は見ていた。

「それにパレルモの影共が兵舎で我らに攻撃を仕掛けてきたとか」
「何だと。直ちに第一戦闘配置だ。影共を探し出せ。即座に殺して構わん」
ミューラーは矢継ぎ早に指示を出す。

「ボフミエ騎士団も攻撃を開始する連絡ありました」
「何。ジャスティンがか」
「はい。我ベン殿に続いて突入せりだそうです」
「止むを得まい。我軍も出撃する」
ミューラーは進軍を決意した。

入り込んでいたパレルモの影五十名は何も出来ずに殺気立った兵士たちに見つけられ次第切リ捨てられていた。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
次話はまたボフミエ王宮に戻ります。
血しぶきを上げたオーウェンはどうなった。
明朝更新予定です。
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