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第十一章 パレルモ王国の陰謀
世界の闇を支配するサクサ公爵は攻撃命令を発しました
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「公爵様。アルフェスト卿の乗ったスカイバードの爆破に成功しました」
珍しく笑みを浮かべてシッランバーは公爵の執務室に入ってきた。
「左様か、ボフミエのスカイバードに搭乗する前の持ち物検査等の防諜機能がどのようなものか心配したが、大したことはなかったのだな」
公爵も喜んで言った。
「我らの秘伝の魔導爆弾を使いましたからな。ドラフォードに潜ませていた文官がうまい具合にアルフェスト卿の従者となっておりましてそれが上手くいったかと」
「本当だな」
外交に来た来賓を自慢のスカイバードで送迎したのに、その自慢の機が爆発したのだ。ボフミエ魔導国の威信にひびが入ったのは確実だった。
「これでボフミエ魔導国のスカイバード網もほころびが入ろうて。いつ爆発するかわからないとなれば高い金を払って人も乗らなくなるだろうからな」
「左様でございます。安全性に疑問が生じますと誰も乗らなくなりましょう」
「あと、2、3爆発させてみるか」
「早急に手配を」
「しかし、よく自爆してくれたものだ。あの影は我らと関係を絶ってから2世代たっておろう」
「娘を人質にしたのです」
いやらしい笑みを浮かべてシッランバーは言った。
「左様か。それで死んでくれたか」
「はい。きちんと自爆したのが判れば娘は必ず開放すると約束致しましたら、きっちりと自爆してくれました」
シッランバーは頷いて言った。
「その娘はどうした。約束通り開放したのか」
「まさか、せっかくこちらの手になったのです。次の工作員の苗床にしようとドラフォードのスラム街のアジトに連れ込みましてございます」
シッランバーは血も涙も無かった。
「その方も悪じゃの。死んだ工作員も報われんの」
「公爵様ほどではございません。まあ、国の役に立ったのです。地獄で喜んでおりましょう」
「まさかな」
二人は顔を見合わせて笑いあった。
「よし早速次の手に入るぞ。皇太子がボフミエに人質に行くのは聞いておるな」
「はい」
「それに紛れて工作員を送り込む」
「はい、既に人選は済ませております」
「よし、全世界の影共に通信を繋げよ」
「御意」
シッランバーは魔道具を操作した。
「閣下。繋がりました」
「全世界の由緒あるパレルモ王国の影よ。余は第64代サクサ公爵である」
真っ黒な画面に向かってサクサは話し出す。
「その方共の影の働きにより、我がパレルモ王国は世界の裏を支配してきた。
かのシャラザールですらその方ら影を恐れて我らに手出しをしてこなかった。
にもかかわらず、ボフミエの小娘が我らに手向かおうとしておる。由緒正しきそちら影がバカにされたのだ」
ここで公爵は言葉を切った。
「このような屈辱、許せるものか。彼の国とそれに与する者共に影の恐怖を知らしめてくれる。いついかなる時もどんなところでも誰から襲われるか判らぬ恐怖、とくと思い知らせるのじゃ」
両手を挙げてサクサは命じていた。
「我が影の恐怖を」
「我が影の恐怖を」
一斉に復唱が返ってきた。
何度も何度も。
そう、影の恐怖に勝てるものなど何者もないのだ。
赤い死神だろうが、ボフミエの小娘であろうが、同じだ。
サクサ公爵の高笑いがいつまでも響いていた。
珍しく笑みを浮かべてシッランバーは公爵の執務室に入ってきた。
「左様か、ボフミエのスカイバードに搭乗する前の持ち物検査等の防諜機能がどのようなものか心配したが、大したことはなかったのだな」
公爵も喜んで言った。
「我らの秘伝の魔導爆弾を使いましたからな。ドラフォードに潜ませていた文官がうまい具合にアルフェスト卿の従者となっておりましてそれが上手くいったかと」
「本当だな」
外交に来た来賓を自慢のスカイバードで送迎したのに、その自慢の機が爆発したのだ。ボフミエ魔導国の威信にひびが入ったのは確実だった。
「これでボフミエ魔導国のスカイバード網もほころびが入ろうて。いつ爆発するかわからないとなれば高い金を払って人も乗らなくなるだろうからな」
「左様でございます。安全性に疑問が生じますと誰も乗らなくなりましょう」
「あと、2、3爆発させてみるか」
「早急に手配を」
「しかし、よく自爆してくれたものだ。あの影は我らと関係を絶ってから2世代たっておろう」
「娘を人質にしたのです」
いやらしい笑みを浮かべてシッランバーは言った。
「左様か。それで死んでくれたか」
「はい。きちんと自爆したのが判れば娘は必ず開放すると約束致しましたら、きっちりと自爆してくれました」
シッランバーは頷いて言った。
「その娘はどうした。約束通り開放したのか」
「まさか、せっかくこちらの手になったのです。次の工作員の苗床にしようとドラフォードのスラム街のアジトに連れ込みましてございます」
シッランバーは血も涙も無かった。
「その方も悪じゃの。死んだ工作員も報われんの」
「公爵様ほどではございません。まあ、国の役に立ったのです。地獄で喜んでおりましょう」
「まさかな」
二人は顔を見合わせて笑いあった。
「よし早速次の手に入るぞ。皇太子がボフミエに人質に行くのは聞いておるな」
「はい」
「それに紛れて工作員を送り込む」
「はい、既に人選は済ませております」
「よし、全世界の影共に通信を繋げよ」
「御意」
シッランバーは魔道具を操作した。
「閣下。繋がりました」
「全世界の由緒あるパレルモ王国の影よ。余は第64代サクサ公爵である」
真っ黒な画面に向かってサクサは話し出す。
「その方共の影の働きにより、我がパレルモ王国は世界の裏を支配してきた。
かのシャラザールですらその方ら影を恐れて我らに手出しをしてこなかった。
にもかかわらず、ボフミエの小娘が我らに手向かおうとしておる。由緒正しきそちら影がバカにされたのだ」
ここで公爵は言葉を切った。
「このような屈辱、許せるものか。彼の国とそれに与する者共に影の恐怖を知らしめてくれる。いついかなる時もどんなところでも誰から襲われるか判らぬ恐怖、とくと思い知らせるのじゃ」
両手を挙げてサクサは命じていた。
「我が影の恐怖を」
「我が影の恐怖を」
一斉に復唱が返ってきた。
何度も何度も。
そう、影の恐怖に勝てるものなど何者もないのだ。
赤い死神だろうが、ボフミエの小娘であろうが、同じだ。
サクサ公爵の高笑いがいつまでも響いていた。
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