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第十一章 パレルモ王国の陰謀
アデリナは誘拐されました
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その昼過ぎにアーサー達は宮殿謁見の間に案内された。
アーサーは中を見て驚いた。
国主の座る仰々しい椅子がないのだ。
謁見の間はフラットな床が広がっているだけだ。
「どうぞこちらに」
そして、イザベラが上座と思しき位置を指すのに流石に驚いた。
「いや、私は国王陛下の代理人とはいえ、上座に位置するわけには参りませぬ」
アーサーが断ろうしたが、
「申し訳ありません。閣下。こちらが我が筆頭魔導師様の御意志でしてお客様を下座に立たせるわけには参らぬと」
イザベラが説明した。
そして、20分が経った。しかし、クリスらは入って来なかった。
いつもならばすぐにクリスが入ってくるのに、どうしたのだろう。
いい加減3人がじれた時に慌ててクリスらが入場してきた。クリスの後ろにはオーウェンとアルバートら近衛の3人が付き従っていた。
「遅れてしまい申し訳ありません、アルフェスト卿」
「いえいえ、お忙しいところお時間賜りありがとうございます」
二人は礼をした。
「奥様には1年前の御国を訪問させていただいた時に大変お世話になりました。後ろにいらっしゃるのはその時にお伺いしたご子息様ですか」
「はい。息子のライナーです」
アーサーは息子を紹介した。
「お初にお目にかかります。アーサー・アルフェストが息子のライナーです」
「クリスティーナ・ミハイルです」
ライナーが礼をするのに、クリスも会釈を返した。
一方の王宮の作戦室では最終カウントダウンが始まっていた。
「ターゲットの馬車。所定の位置に止まりました」
「アデリナ、授業終了しました」
「ザール教のアジト包囲間もなく完了です」
「国都の全検問準備完了しました」
「よし、これを機に一気に不穏分子を拘束するぞ」
ジャンヌの声が作戦室に響いた。
「で、アルフェスト卿、今回のご訪問の要件がお有りでは」
クリスが話を振った。
「実は我が国の皇太子殿下からのたってのご希望でして」
「えっ、皇太子殿下ってオーウェン様からのご要望ですか」
クリスは驚いて後ろに控えているオーウェンを見た。
「アーサー、そう言う能書きはいいからさっさと始めてくれ」
不機嫌にオーウェンが言った。
「実はクリスティーナ様が子供の頃に私共の皇太子に頂いたお手紙の件でして」
「えっ、あの手紙の件ですか」
真っ赤になってクリスが聞く。まさか国の使節がそんな件で派遣されるとは思ってもいなかった。
「申し訳ありません。あのようなお手紙を差し上げたこと身分違いも甚だしく、子供の戯言とお許し頂けませんか」
真っ赤になってクリスが言う。
「いえいえ、子供の手紙とおっしゃられてもそれに対してお返事もしなかった点については大変失礼を致しました。我が主もその点について詫び状をしたためた次第でして」
「えっ、国王陛下から詫び状など、あのような不躾な手紙の件はお忘れ頂ければ幸いかと」
クリスが赤くなったまま叫ぶ。
「アーサー。そう言うことではなくて、クリスの手紙は俺が見ていない点が問題なんだろう」
「はあ、申し訳ありません。クリスティーナ様。あのお手紙はそのままうちの殿下に渡すと国際問題に發展するかもしれないと国王陛下の所で留め置かれたので、我々共の皇太子殿下の目には一切触れられておりません」
「そうだ。クリス。だから私は返事しなかったのではなくて、存在すら知らなかったのだ」
オーウェンはここぞと力を込めて言った。自分の知らない所で返事がないと文句を言われていたオーウェンは貯まったものではなかっのだが、
「いや、あの、あの手紙のことは私も恥ずかしいことですので、このような公の場で何も触れられなくても」
クリスにも堪ったものではなかった。
「プライベートでは話も聞いてくれないではないか」
「それはその・・・・・」
オーウェンの言葉はそのとおりなのだが、もうクリスも限界だった。なんで公式の記録の残るこの謁見の間でこのような話を蒸し返されなければならないのか。
クリスは真っ赤になってただただ戸惑うしか無かった。後で影でコソコソと話してもらっても良かったのではないの…………。こんな所で公式記録に載るなんて、なんてこと・・・・・
クリスの戸惑いが最高潮に達したときだ。
「アデリナ、学園の門を出ました」
「ターゲットの女も馬車を降りました」
「ランデブーしました」
作戦室に報告の声が響く。
「よし、行くぞ」
ジャンヌが転移した。続いてアレクが。続いて3人の魔道師団員が転移する。
彼らは屋台の裏に転移する。
「アデリナさん、久しぶりね」
ピローネンが声をかけた。
「ピローネン先生」
アデリナは戸惑った。確かザール教の件で学校を辞めさせられたはずだった。何故ここにいるんだろう。
「そう、学校も追い出されちゃったし、このままここにいても食べていけないので、故郷に帰ろうと思うの。その前に世話になったクラスのみんなに挨拶できればと思って」
ピローネンは悲しそうにアデリナを見た。
「それでアデリナさんに聞きたいことがあって、少し教えてほしいんだけど」
「なんですか」
そんなふうに言われたら、アデリナは無碍に出来なかった。
「ここではなんだから、馬車に乗ってきたから中で少しだけ教えてくれたら有り難いんだけど」
「ええ、良いですよ。少しなら」
そんなに時間が取られなければ問題ないだろう。アデリナは馬車に乗った。
そこには知らない男が乗っていた。
慌ててピローネンを振り返ろうとした時、男が後ろからしがみついてきた。
「いや、止めて・・・・」
叫ぼうとしたアデリナの口を薬品に浸したハンカチで鼻と口を覆われる。
*************************************************
さて、陰謀通りアデリナは誘拐されました。
どうなる誘拐犯・・・・
何故か犯人が心配されているような気がします…………
アーサーは中を見て驚いた。
国主の座る仰々しい椅子がないのだ。
謁見の間はフラットな床が広がっているだけだ。
「どうぞこちらに」
そして、イザベラが上座と思しき位置を指すのに流石に驚いた。
「いや、私は国王陛下の代理人とはいえ、上座に位置するわけには参りませぬ」
アーサーが断ろうしたが、
「申し訳ありません。閣下。こちらが我が筆頭魔導師様の御意志でしてお客様を下座に立たせるわけには参らぬと」
イザベラが説明した。
そして、20分が経った。しかし、クリスらは入って来なかった。
いつもならばすぐにクリスが入ってくるのに、どうしたのだろう。
いい加減3人がじれた時に慌ててクリスらが入場してきた。クリスの後ろにはオーウェンとアルバートら近衛の3人が付き従っていた。
「遅れてしまい申し訳ありません、アルフェスト卿」
「いえいえ、お忙しいところお時間賜りありがとうございます」
二人は礼をした。
「奥様には1年前の御国を訪問させていただいた時に大変お世話になりました。後ろにいらっしゃるのはその時にお伺いしたご子息様ですか」
「はい。息子のライナーです」
アーサーは息子を紹介した。
「お初にお目にかかります。アーサー・アルフェストが息子のライナーです」
「クリスティーナ・ミハイルです」
ライナーが礼をするのに、クリスも会釈を返した。
一方の王宮の作戦室では最終カウントダウンが始まっていた。
「ターゲットの馬車。所定の位置に止まりました」
「アデリナ、授業終了しました」
「ザール教のアジト包囲間もなく完了です」
「国都の全検問準備完了しました」
「よし、これを機に一気に不穏分子を拘束するぞ」
ジャンヌの声が作戦室に響いた。
「で、アルフェスト卿、今回のご訪問の要件がお有りでは」
クリスが話を振った。
「実は我が国の皇太子殿下からのたってのご希望でして」
「えっ、皇太子殿下ってオーウェン様からのご要望ですか」
クリスは驚いて後ろに控えているオーウェンを見た。
「アーサー、そう言う能書きはいいからさっさと始めてくれ」
不機嫌にオーウェンが言った。
「実はクリスティーナ様が子供の頃に私共の皇太子に頂いたお手紙の件でして」
「えっ、あの手紙の件ですか」
真っ赤になってクリスが聞く。まさか国の使節がそんな件で派遣されるとは思ってもいなかった。
「申し訳ありません。あのようなお手紙を差し上げたこと身分違いも甚だしく、子供の戯言とお許し頂けませんか」
真っ赤になってクリスが言う。
「いえいえ、子供の手紙とおっしゃられてもそれに対してお返事もしなかった点については大変失礼を致しました。我が主もその点について詫び状をしたためた次第でして」
「えっ、国王陛下から詫び状など、あのような不躾な手紙の件はお忘れ頂ければ幸いかと」
クリスが赤くなったまま叫ぶ。
「アーサー。そう言うことではなくて、クリスの手紙は俺が見ていない点が問題なんだろう」
「はあ、申し訳ありません。クリスティーナ様。あのお手紙はそのままうちの殿下に渡すと国際問題に發展するかもしれないと国王陛下の所で留め置かれたので、我々共の皇太子殿下の目には一切触れられておりません」
「そうだ。クリス。だから私は返事しなかったのではなくて、存在すら知らなかったのだ」
オーウェンはここぞと力を込めて言った。自分の知らない所で返事がないと文句を言われていたオーウェンは貯まったものではなかっのだが、
「いや、あの、あの手紙のことは私も恥ずかしいことですので、このような公の場で何も触れられなくても」
クリスにも堪ったものではなかった。
「プライベートでは話も聞いてくれないではないか」
「それはその・・・・・」
オーウェンの言葉はそのとおりなのだが、もうクリスも限界だった。なんで公式の記録の残るこの謁見の間でこのような話を蒸し返されなければならないのか。
クリスは真っ赤になってただただ戸惑うしか無かった。後で影でコソコソと話してもらっても良かったのではないの…………。こんな所で公式記録に載るなんて、なんてこと・・・・・
クリスの戸惑いが最高潮に達したときだ。
「アデリナ、学園の門を出ました」
「ターゲットの女も馬車を降りました」
「ランデブーしました」
作戦室に報告の声が響く。
「よし、行くぞ」
ジャンヌが転移した。続いてアレクが。続いて3人の魔道師団員が転移する。
彼らは屋台の裏に転移する。
「アデリナさん、久しぶりね」
ピローネンが声をかけた。
「ピローネン先生」
アデリナは戸惑った。確かザール教の件で学校を辞めさせられたはずだった。何故ここにいるんだろう。
「そう、学校も追い出されちゃったし、このままここにいても食べていけないので、故郷に帰ろうと思うの。その前に世話になったクラスのみんなに挨拶できればと思って」
ピローネンは悲しそうにアデリナを見た。
「それでアデリナさんに聞きたいことがあって、少し教えてほしいんだけど」
「なんですか」
そんなふうに言われたら、アデリナは無碍に出来なかった。
「ここではなんだから、馬車に乗ってきたから中で少しだけ教えてくれたら有り難いんだけど」
「ええ、良いですよ。少しなら」
そんなに時間が取られなければ問題ないだろう。アデリナは馬車に乗った。
そこには知らない男が乗っていた。
慌ててピローネンを振り返ろうとした時、男が後ろからしがみついてきた。
「いや、止めて・・・・」
叫ぼうとしたアデリナの口を薬品に浸したハンカチで鼻と口を覆われる。
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さて、陰謀通りアデリナは誘拐されました。
どうなる誘拐犯・・・・
何故か犯人が心配されているような気がします…………
応援ありがとうございます!
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