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第十章 マーマレード元皇太子の反撃

クリスの母は判断を誤りました

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「はっ?、クリスに会えない?」
侍女のアガサの言葉にシャーロットは驚いた。昨日の感じでその日のうちに帰れそうだった。王妃らが無理をさせても何だから1日くらい泊まっていけばと引き止めたからいさせただけだったのだが。

「何故なの?」
「さあ、よくは判らないのですが、クリス様は少し混乱していらっしゃるようで、少し考えをまとめたいみたいなことをおっしゃっていらっしゃっていて」
アガサも良く判っていないようだった。

確かにクリスはオーウェンにキスされて悩んでいた。でも、それは母のシャーロットに相談してある程度は吹っ切れたはずだった。

「今日一日、じっくりと考えたいとおっしゃっていらっしゃっていて」

「皇太子殿下に何か言われたの?」
シャーロットは聞いた。1昨日シャーロットと話したあとでクリスが変わったことと言えば、この宮廷で皇太子に会った事だった。それも婚約破棄されて以来1年ぶりのはずだった。皇太子に何か言われて更に悩みだした可能性もある。

「一度いらっしゃいましたけど、5分くらいで出ていかれましたし、そんなことはないと思うのですけど」
「あなたはその場にいなかったの?」
咎めるようにシャーロットが言う。

「皇太子殿下の部下の方もいらっしゃいましたし、クリス様がお茶を準備するようにおっしゃられたので」
アガサは申し訳無さそうに言う。

「その後クリスに変わった所はあった?」
「いえ、目に見えてはなかったかと」

アガサの言葉にまあ、5分くらいで出たならば、皇太子もあまり何も言えなかったかと、シャーロットは判断した。

「そうなの。判ったわ。あなたは引き続いてクリスについていて。明日の朝はきちんと迎えに来るから」
そう言うとシャーロットは客間を出た。


その足のまま王妃を訪れる。

「王妃様。どういうことでしょうか?」
シャーロットがエリザベスに問いただす。

「どうって、何の話?」
王妃は不審そうに聞く。

「クリスがもう1日いろいろ考えたいと私にも会いたがらないんですけど」
「えっ、あなたにもなの」
「王妃様にも会わなかったんですか?」

「だってクリスはまだ、私に心を許してくれていないし、昨日夕方行った時は既に寝ていたし、今日の朝行った時は、一人で色々考えたいことがあるから会いたくないと言われてしまって、会えていないのよね」

「そうですか。エドワード殿下に何か言われたみたいなのですが」
シャーロットは聞いてみる。

「昨日は先日のやらかしたことを誠心誠意謝っただけだし、今日も少し様子を見に行っただけだと言っていたけれど」

やはり気のせいかも知れない。しっかりしてそうで、クリスもまだ18才。元婚約者に会って色々思うところもあるのだろう。

「そうですか。ではすいません。クリスをもう一日お願いできますか」
取り敢えず、シャーロットはもう一日待つことにした。後で強引にでもクリスに会っておけば良かった、と後悔することになるのだったが。
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