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第九章 ザール教騒乱
戦神は自らドラフォード国王に出兵命令を下しました
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アレクは執務室に入ると悠然に陳国国王に繋がせる。
「これはこれは外務卿。いかがなされました」
「陳国王。先日宋国でお会いした以来ですな。筆頭魔導師様からの要請を伝えます。直ちにザール教国に1個師団を派遣いただきたい」
「えっ、教皇アードルフが殺されて貴国に聖戦を叫んでいるザール教国にですか」
驚いて国王は言った。
「ほう、陳国は恩知らずと言える。先日クリス様の御慈悲でお助けいただいたのを忘れたのか」
アレクの目がギロリと光る。
「いえ、そのような。ドラフォードを始めすべての国に見捨てられたこの国を助けて頂いた御恩は忘れておりません」
慌てて陳国王は言い直した。
「それであれば良いのです。何、今回の件は戦神シャラザール様のご命令なのです」
「な、なんと、あの戦神様からですか」
驚いて陳国王は言った。戦の後見せつけられたあの戦神の強さは本物だった。戦場では無敵だった暴風王女や赤い死神が使い走りのようにこき使われているくらい、強さは別格だった。
「ザール教国の行いに戦神はご立腹です。今回はご自身で親征されます」
「えっ、シャラザール様自らですか」
陳国王はあの死のような特訓を思い出していた。ザール教が一瞬でも抵抗できるとは思えなかった。
「そうです。ザール教は一瞬で殲滅されるでしょう。貴国にはその後の治安維持にご協力いただきたい」
「はっ。シャラザール様にはよしなにお伝え下さい。直ちに2個師団出兵させます」
陳国王は頭を下げた。
「何だオーウェン。貴様、この忙しい所にまた、ザール教なんてとんでもないものに手を出しおって」
ドラフォード国王ピーターは電話で初っ端から怒りモードだった。
「いくら貴様らが大国の皇太子の連合体とはいえ、ドラフォードの歴代国王や英雄と呼ばれている歴史上有名な国王もザール教には手を出さなかったのだぞ。彼奴らの影響力をお前らは軽視しすぎておるのではないか」
ピーターでさえザール教には少し恐怖を感じているのだ。
「父上。彼奴らは各国皇太子に刺客を送ってきたのですぞ。既に各国は麻薬禁止令と奴隷禁止令違反、それに国家反逆罪で対策を取り出しています」
「それは判るが、何故我が国がザール本国に出兵して火の粉をかぶらねばならんのだ」
ピーターは肝心のことを言った。
「何だ。オーウェン。まだうまくいかんのか」
後ろから声がして、シャラザールが画面に入った。
「何だ。貴様は」
ピーターは更にいきり立った。
「ふんっ。余の子孫のくせに貧相な顔をしておるな」
「何だと!」
「余の顔も覚えておらんとは本当に不肖の子孫じゃ」
「何を!」
シャラザールの言葉に更にピーターはヒートアップするが、その顔はどこかで見たことがあった。そして、それはとても大切なというか偉大な・・・・偉大・・・・
ピーターは目を見開いた。
「シャ、シャラザール」
ピーターは信じられないものを見るように見た。そう、その凛々しい姿形は国王室に掲げられている戦神シャラザールの肖像画と同じだった。
「やっと思い出したか」
呆れてシャラザールが言った。
「いや、しかし、伝説の戦神様が何故ここに」
ピーターは驚きで混乱していた。
「ふんっ。貴様らがしっかりせんから余が自ら出てきたのだ」
シャラザールは胸を張って言った。
その理由を知っているジャルカが白い目で見ていたが、シャラザールは無視して続ける。
「余は我が子孫の一人である、ドラフォード国王に告ぐ。余は我が子ザールが始めたザール教を、麻薬禁止令、奴隷禁止令違反で本日をもって廃教とする。余自ら軍を率いてザールは制圧する。その方の国からも今後の治安維持のために1個師団を寄越せ」
「はっ」
ピーターは頭を下げた。
「判って入ると思うが、余のことは内密にな」
シャラザールはそう言うと電話を切った。
ピーターは切られた電話を呆然と見つめていた。
何でここにシャラザールが現れたか全く判っていなかったが、とりあえず、ブル―ノ・ハウゼン軍務大臣を魔導電話で呼び出した。
「これは国王陛下。いかがなされましたか」
嫌味たらたらとブルーノは言った。
先日の閣議で軍部から出ていたザール教国への出兵案を拒否されてへそを曲げているのだ。そこへ身を翻して出兵命令を下すのは躊躇われたが、ここでやめるわけにもいかない。
「ブルーノ。直ちに東方第2師団をザール教国に向かわせろ」
「はっ?出兵なさるのですか。連中はクリス様に手を出したザールは許せんと言ってましたから喜ぶとは思いますが、陛下は出兵はならんとおっしゃられていたような気がしますが」
ブルーノは嫌味を言う。そう、皇太子暗殺も計画したザールへ軍からの出兵要請は国王に断られたところなのだ。
「状況が変わったのだ」
ピーターは言い訳をする。
「しかし、火中の栗は拾うなとおっしゃられていたと思いますが」
中々ブルーノは頷かない。
「皇太子らがザール教本国に攻撃に向かうのだ。放っておくわけにも行くまい」
「な、なんと、あの慎重な皇太子殿下がザール教に手を出されると」
ピーターの言葉にブルーノは食いついた。
「そうだ。貴様らの好きなクリスも先陣を切っていくそうだぞ」
「それは本当ですか」
ブルーノは身を乗り出して聞く。
「本当だ。今、皇太子から連絡があった」
ピーターは詳細は聞かなかったが、戦神が行くならばいくだろうと適当に頷く。
「可及的速やかに第2師団をザールに向かわせよ」
「了解しました」
嬉々としてブルーノは頷いた。
「これはこれは外務卿。いかがなされました」
「陳国王。先日宋国でお会いした以来ですな。筆頭魔導師様からの要請を伝えます。直ちにザール教国に1個師団を派遣いただきたい」
「えっ、教皇アードルフが殺されて貴国に聖戦を叫んでいるザール教国にですか」
驚いて国王は言った。
「ほう、陳国は恩知らずと言える。先日クリス様の御慈悲でお助けいただいたのを忘れたのか」
アレクの目がギロリと光る。
「いえ、そのような。ドラフォードを始めすべての国に見捨てられたこの国を助けて頂いた御恩は忘れておりません」
慌てて陳国王は言い直した。
「それであれば良いのです。何、今回の件は戦神シャラザール様のご命令なのです」
「な、なんと、あの戦神様からですか」
驚いて陳国王は言った。戦の後見せつけられたあの戦神の強さは本物だった。戦場では無敵だった暴風王女や赤い死神が使い走りのようにこき使われているくらい、強さは別格だった。
「ザール教国の行いに戦神はご立腹です。今回はご自身で親征されます」
「えっ、シャラザール様自らですか」
陳国王はあの死のような特訓を思い出していた。ザール教が一瞬でも抵抗できるとは思えなかった。
「そうです。ザール教は一瞬で殲滅されるでしょう。貴国にはその後の治安維持にご協力いただきたい」
「はっ。シャラザール様にはよしなにお伝え下さい。直ちに2個師団出兵させます」
陳国王は頭を下げた。
「何だオーウェン。貴様、この忙しい所にまた、ザール教なんてとんでもないものに手を出しおって」
ドラフォード国王ピーターは電話で初っ端から怒りモードだった。
「いくら貴様らが大国の皇太子の連合体とはいえ、ドラフォードの歴代国王や英雄と呼ばれている歴史上有名な国王もザール教には手を出さなかったのだぞ。彼奴らの影響力をお前らは軽視しすぎておるのではないか」
ピーターでさえザール教には少し恐怖を感じているのだ。
「父上。彼奴らは各国皇太子に刺客を送ってきたのですぞ。既に各国は麻薬禁止令と奴隷禁止令違反、それに国家反逆罪で対策を取り出しています」
「それは判るが、何故我が国がザール本国に出兵して火の粉をかぶらねばならんのだ」
ピーターは肝心のことを言った。
「何だ。オーウェン。まだうまくいかんのか」
後ろから声がして、シャラザールが画面に入った。
「何だ。貴様は」
ピーターは更にいきり立った。
「ふんっ。余の子孫のくせに貧相な顔をしておるな」
「何だと!」
「余の顔も覚えておらんとは本当に不肖の子孫じゃ」
「何を!」
シャラザールの言葉に更にピーターはヒートアップするが、その顔はどこかで見たことがあった。そして、それはとても大切なというか偉大な・・・・偉大・・・・
ピーターは目を見開いた。
「シャ、シャラザール」
ピーターは信じられないものを見るように見た。そう、その凛々しい姿形は国王室に掲げられている戦神シャラザールの肖像画と同じだった。
「やっと思い出したか」
呆れてシャラザールが言った。
「いや、しかし、伝説の戦神様が何故ここに」
ピーターは驚きで混乱していた。
「ふんっ。貴様らがしっかりせんから余が自ら出てきたのだ」
シャラザールは胸を張って言った。
その理由を知っているジャルカが白い目で見ていたが、シャラザールは無視して続ける。
「余は我が子孫の一人である、ドラフォード国王に告ぐ。余は我が子ザールが始めたザール教を、麻薬禁止令、奴隷禁止令違反で本日をもって廃教とする。余自ら軍を率いてザールは制圧する。その方の国からも今後の治安維持のために1個師団を寄越せ」
「はっ」
ピーターは頭を下げた。
「判って入ると思うが、余のことは内密にな」
シャラザールはそう言うと電話を切った。
ピーターは切られた電話を呆然と見つめていた。
何でここにシャラザールが現れたか全く判っていなかったが、とりあえず、ブル―ノ・ハウゼン軍務大臣を魔導電話で呼び出した。
「これは国王陛下。いかがなされましたか」
嫌味たらたらとブルーノは言った。
先日の閣議で軍部から出ていたザール教国への出兵案を拒否されてへそを曲げているのだ。そこへ身を翻して出兵命令を下すのは躊躇われたが、ここでやめるわけにもいかない。
「ブルーノ。直ちに東方第2師団をザール教国に向かわせろ」
「はっ?出兵なさるのですか。連中はクリス様に手を出したザールは許せんと言ってましたから喜ぶとは思いますが、陛下は出兵はならんとおっしゃられていたような気がしますが」
ブルーノは嫌味を言う。そう、皇太子暗殺も計画したザールへ軍からの出兵要請は国王に断られたところなのだ。
「状況が変わったのだ」
ピーターは言い訳をする。
「しかし、火中の栗は拾うなとおっしゃられていたと思いますが」
中々ブルーノは頷かない。
「皇太子らがザール教本国に攻撃に向かうのだ。放っておくわけにも行くまい」
「な、なんと、あの慎重な皇太子殿下がザール教に手を出されると」
ピーターの言葉にブルーノは食いついた。
「そうだ。貴様らの好きなクリスも先陣を切っていくそうだぞ」
「それは本当ですか」
ブルーノは身を乗り出して聞く。
「本当だ。今、皇太子から連絡があった」
ピーターは詳細は聞かなかったが、戦神が行くならばいくだろうと適当に頷く。
「可及的速やかに第2師団をザールに向かわせよ」
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嬉々としてブルーノは頷いた。
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