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第九章 ザール教騒乱

ザール教の同時多発テロはほとんど防がれ、クリスの怒りの雷撃がザール教本国の大聖堂を直撃しました

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「騎士団長」
詰め所に入ったジャスティンに男が近付いた。
「どうした」
「ザール教の秘密のアジトの場所を知っています」
男が言いながら近付く。
「それはどこだ」
「水道橋の側でさあ、教える代わりに何卒お助けを」
「事実ならば考えてやらないわけでもない」
それを聞いた、ジャスティンの目の前の男に急激に魔導反応が起こった。
「えっ、そんな馬鹿な」
男は蒼白になって叫んだ。

「来たか」
ジャスティンは冷静に言うや、居合で剣を男に突き刺していた。
「ぎゃぁ」
男の悲鳴と同時に魔導反応が消滅した。



「先生。僕たち、麻薬を売っている奴を知っているんです」
男子生徒の一人がアレクに言った。

「それは誰だ?」
「あいつです」
男の一人がとある生徒を指差した。アレクがその男子生徒を見た瞬間4人の男子生徒たちに巨大な魔導反応が起こった。
(うそ、4人なんてむちゃだ。でも、成功しないとシャラザールに殺される)
アレクは次の瞬間剣を抜くや、剣に浄化魔術を込めて目にも留まらぬ速さで4人の腹を次々に突き刺していた。


クリス達が執務室を出た後に、女官の一人が書面を持って現れた。
「コレキヨ様」
女官は書面をコレキヨに差し出した。
コレキヨはその書面をもらい開けようとする。
その瞬間女官に急激な魔導反応が起こった。
「はっ」
ため息をつくとコレキヨは剣を抜いて女官を刺し貫いていた。



クリスはオーウエンとアルバート、メイ、ナタリーを連れて謁見の間に入った。

そこには男が3人の女と一人の移動ベッドに乗った男を連れていた。

「これは筆頭魔導師様。私、ザール教枢軸卿のヘンリク・パイヤと申します」

「ザール教の者が何の用だ」
オーウェンが鷹揚に声を掛ける。
「麻薬の販売及び奴隷禁止条項違反で、ザール教は全土で禁教となったはずだが」

「これは異なことを。この度の麻薬や奴隷販売の件は全てアルヴィ・パーテロがやっていたことで、本部は何も存じておりません」
にこやかに笑ってヘンリクは言った。
「それを証拠にこの度、アルヴィの屋敷を教皇騎士団が急襲、奴隷3人とそこで拘束されていたボフミエの方を救出、お連れした次第です」

「ケビン!」
クリスのはるか後ろに控えていたアデリナが小さく叫んだ。アデリナを奴隷商人に売った幼馴染の男がそのベッドに倒れていた。憎んでも憎みきれない男だった。
でも、昔は一緒に遊んだ仲だった。その彼が真っ青な顔で移動ベッドに倒れていた。

「来るな!」
いきなり倒れている男が声を出した。

ヘンリクはぎょっとした。ケビンは麻薬漬けで声を出せるような状況ではなかったのだ。

「罠だ」
ケビンは目をかっと開いて言葉を吐いていた。そのケビンの今際の声だった。


その瞬間、奴隷の女達が前に飛び出していた。

「筆頭魔導師様。どうかお助けを」
「この方は良くしていただいたのです」
「捕まっていたところを救出していただのです」
口々に叫びながら近付いてきた。

アルバートらが慌てて制しようとした。

ヘンリクはニヤリと笑った。

次の瞬間大きな魔力が女達に宿る。次の瞬間クリスは飛び出していた。
クリスが光ると同時に3人の女にクリスから発せられた光が浴びせられる。
女達は同時に気を失って倒れ込んだ。


(何故だ。何故女達は爆発せん)
ヘンリクは体を固まらせた。

慌てて動こうとした3人の騎士とオーウェンを制してヘンリクの横を無視してクリスはケビンに近寄る。目を見開いたまま、ケビンはもう動かなかった。

「ケビン。御免なさい。あなたにはつらい思いをさせたわ」
クリスはそう言うとケビンの見開いた目を閉じさせた。

「ケビン」
アデリナは泣き出した。

「ヘンリク・パイヤ」
クリスの氷のような冷めた声が謁見室に響いた。

「ヒィィィ」
思わずヘンリクは悲鳴を上げた。

クリスにはケビンから拷問にかけられた苦しみ。目の前でなぶり殺しにされる同僚たち、そして、それを見て笑う者達の顔が流れ込んできた。目の前のヘンリクもその中にいた。

「その方ら、我がボフミエの民を傷つけ、虐殺せしこと、万死に値する」
「いえ、筆頭魔導師様、決してそのようなことは」
ヘンリクは必死に言い訳しようとした。

「許しません!」
クリスの怒りが爆発した。

怒りの雷撃がヘンリクを直撃した。

「ぎゃぁぁぁぁ」
男は雷撃を受けて黒焦げになって倒れた。

クリスの怒りはそれでは収まらなかった。
高笑いをしている教皇の顔が脳裏に蘇った。

「教皇、あなたも許しません」
クリスから怒りの雷撃が空に伸びた。修繕された謁見室の天井の一部が吹き飛ぶ。それはボフミエの宮殿の天井を突き破ると一直線にザール教本国に伸びた。


その頃、ザール教大聖堂の地下室で教皇アードルフ・ナッティネンはナッツァからの吉報を今か今かと待っていた。
女どもを侍らして淫靡な行いをさせていた。

空は晴天、大聖堂のステンドグラスが無駄に輝いていた。

その空を切り裂いて雷撃が轟いた。

凄まじい光とともに一瞬で大聖堂は稲妻に包まれた。
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