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第九章 ザール教騒乱
国民の識字率向上への初等教育の開始が閣議決定されました
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執務室では朝からギスギスした空気が広がっていた。
執務室の真ん中にいるクリスはブスッとしていた。皆の前で結婚の申込みをしてきたオーウエンに切れていたのだ。先日はアレクとオーウェンの二人によってどこかの仏像か生き神様みたいに拝まれるし、冗談にも程がある。それ以降、いろんな人から拝まれるんだけど、私を拝んでもどうしようもないと思うし、頼むから止めてほしい、等々・・・・・・。
そして、その内務卿のオーウェンは何故か切り傷だらけになって現れていた。二人の間の空気が何か怖い。財務卿のコレキヨは二人に挟まれて気まずい思いをしていた。クリスが怒るとオーウェンみたいに傷だらけになってしまうのだろうか。でも温厚なクリスがそんな事をするはずはないと思うのだが、そう言えばノルディンの王子もクリスの怒りに触れて雷撃死したんだっけ。
二人に挟まれたコレキヨは少し不安になった。
「スティーブ。どうしたの。あの二人」
コレキヨは自分の後ろの席の財務次官のスティーブ・スミスの席に近づいてこっそり聞いた。
「ああ、コレキヨ様。いつものことですよ。また、オーウェン様がいらないことしたんじゃないですか」
全く気にしていない風にスティーブが言う。
「そ、そうなの。いつものことなのか」
コレキヨは二人を振り返りながら見遣る。
「コレキヨ様。どうかされました?」
きっとクリスが睨み返す。
「いえ、何でもありません」
慌ててコレキヨは否定する。
「コレキヨ様。あの二人のことは放っておいたら良いんです。下手に関わると大変ですよ」
笑ってスティーブが言う。
「そうみたいだな」
「それよりもこれ閣議の資料です」
「凄まじい額だな。これだけのお金あるの?」
初等教育を始めるに当たっての費用は結構な額だった。コレキヨには疑問だった。
「コレキヨ様。それを考えるのは僕らの仕事なんですけど」
「金勘定だけでなくて、金の算段もしなければいけないの?」
うんざりしてコレキヨが言う。
「まあ、内務と協力していかなければいけませんが、やっていくしか無いでしょう」
「まあ、これからが大変だな」
コレキヨは前途を不安視して溜息をついた。
閣議は9時から始まった。
「ボフミエ国民の識字率アップを図るために初等学校を全土に作る件について。まず、教育卿のアメリア様から発表してもらいます」
司会のクリス付きの事務官のフェビアンが話しだした。
「教育卿になったアメリアです。10歳から12歳の子供に読み書き、計算、魔導の教育を行うというのが、今回の案件です。約6万人に、教育を行うとすると、50人に1クラスとすると、1200名の教員が要ります」
「そんなにいるのか」
ジャンヌが驚いて言った。
「少なく見積もってね。辺境の地とかは歩いていける範囲に初等科を作るとなると10人に1人の先生とかになって増える可能性もあるわ」
「教員の確保の方はどうなっているんだ」
アレクが聞く。
「今の所教員養成学校は、アメリア魔導学園の中にあるだけ。取り敢えず、促成で年間200人教育するようにしたけれど」
アメリアが答える。
「6年かかるか」
「それにかかる費用は」
アレクが聞く。
「1200校作るとなると金貨3万枚。人件費は1人1ヶ月金貨2枚とすると年間金貨3万枚です。その他諸々入れると10万枚近くかかると思われます」
財務卿のコレキヨが答えた。
「全部で食料1万トンくらいか」
ジャンヌが意う。
「殿下は詳しいですね」
驚いてコレキヨが聞いた。
「飢えたから、その点の計算は早くなったからな」
ジャンヌが言った。
「なるほど、飢えを経験されているという事をプラスにされているんですな」
感心してコレキヨは言った。
「まあそんな事を知っても仕方がないかも知れんが、それよりアメリア、今回の件は米1万トン分の価値があるのか」
「すぐには目に見える成果は無理かもしれないけれど、全国民が文字の読み書き計算が出来るのは絶対にプラスになるわ」
アメリアは言い切った。
「そうですか。私には国民が小賢しくなるだけのようにも思えますが」
グリンゲン宮内卿が常識論を展開する。
「まあ全員が出来るようになれば、報告書も部下に書かせられるか」
喜んでジャンヌが言う。
「姫様。魔導師団の面々は今でも姫様よりも優秀です。姫様より出来ないのはザンくらいですわ」
ザンが聞いたら怒りそうな事を平気でジャルカが言った。
「そうか、なら、今度から、報告書はライラに書いてもらおう」
ジャンヌが喜んで言った。
「宜しいのですか。姫様。姫様の礼儀作法が如何になっていないか母上に報告されても知りませんぞ」
「うーん、それはまずいな」
真面目にジャンヌが応えたので、皆笑った。
「では、計画を早急に実践に移すようにします。細かいところは教育省と内務省、財務省で詰めて頂きます」
フェビアンが締めた。
執務室の真ん中にいるクリスはブスッとしていた。皆の前で結婚の申込みをしてきたオーウエンに切れていたのだ。先日はアレクとオーウェンの二人によってどこかの仏像か生き神様みたいに拝まれるし、冗談にも程がある。それ以降、いろんな人から拝まれるんだけど、私を拝んでもどうしようもないと思うし、頼むから止めてほしい、等々・・・・・・。
そして、その内務卿のオーウェンは何故か切り傷だらけになって現れていた。二人の間の空気が何か怖い。財務卿のコレキヨは二人に挟まれて気まずい思いをしていた。クリスが怒るとオーウェンみたいに傷だらけになってしまうのだろうか。でも温厚なクリスがそんな事をするはずはないと思うのだが、そう言えばノルディンの王子もクリスの怒りに触れて雷撃死したんだっけ。
二人に挟まれたコレキヨは少し不安になった。
「スティーブ。どうしたの。あの二人」
コレキヨは自分の後ろの席の財務次官のスティーブ・スミスの席に近づいてこっそり聞いた。
「ああ、コレキヨ様。いつものことですよ。また、オーウェン様がいらないことしたんじゃないですか」
全く気にしていない風にスティーブが言う。
「そ、そうなの。いつものことなのか」
コレキヨは二人を振り返りながら見遣る。
「コレキヨ様。どうかされました?」
きっとクリスが睨み返す。
「いえ、何でもありません」
慌ててコレキヨは否定する。
「コレキヨ様。あの二人のことは放っておいたら良いんです。下手に関わると大変ですよ」
笑ってスティーブが言う。
「そうみたいだな」
「それよりもこれ閣議の資料です」
「凄まじい額だな。これだけのお金あるの?」
初等教育を始めるに当たっての費用は結構な額だった。コレキヨには疑問だった。
「コレキヨ様。それを考えるのは僕らの仕事なんですけど」
「金勘定だけでなくて、金の算段もしなければいけないの?」
うんざりしてコレキヨが言う。
「まあ、内務と協力していかなければいけませんが、やっていくしか無いでしょう」
「まあ、これからが大変だな」
コレキヨは前途を不安視して溜息をついた。
閣議は9時から始まった。
「ボフミエ国民の識字率アップを図るために初等学校を全土に作る件について。まず、教育卿のアメリア様から発表してもらいます」
司会のクリス付きの事務官のフェビアンが話しだした。
「教育卿になったアメリアです。10歳から12歳の子供に読み書き、計算、魔導の教育を行うというのが、今回の案件です。約6万人に、教育を行うとすると、50人に1クラスとすると、1200名の教員が要ります」
「そんなにいるのか」
ジャンヌが驚いて言った。
「少なく見積もってね。辺境の地とかは歩いていける範囲に初等科を作るとなると10人に1人の先生とかになって増える可能性もあるわ」
「教員の確保の方はどうなっているんだ」
アレクが聞く。
「今の所教員養成学校は、アメリア魔導学園の中にあるだけ。取り敢えず、促成で年間200人教育するようにしたけれど」
アメリアが答える。
「6年かかるか」
「それにかかる費用は」
アレクが聞く。
「1200校作るとなると金貨3万枚。人件費は1人1ヶ月金貨2枚とすると年間金貨3万枚です。その他諸々入れると10万枚近くかかると思われます」
財務卿のコレキヨが答えた。
「全部で食料1万トンくらいか」
ジャンヌが意う。
「殿下は詳しいですね」
驚いてコレキヨが聞いた。
「飢えたから、その点の計算は早くなったからな」
ジャンヌが言った。
「なるほど、飢えを経験されているという事をプラスにされているんですな」
感心してコレキヨは言った。
「まあそんな事を知っても仕方がないかも知れんが、それよりアメリア、今回の件は米1万トン分の価値があるのか」
「すぐには目に見える成果は無理かもしれないけれど、全国民が文字の読み書き計算が出来るのは絶対にプラスになるわ」
アメリアは言い切った。
「そうですか。私には国民が小賢しくなるだけのようにも思えますが」
グリンゲン宮内卿が常識論を展開する。
「まあ全員が出来るようになれば、報告書も部下に書かせられるか」
喜んでジャンヌが言う。
「姫様。魔導師団の面々は今でも姫様よりも優秀です。姫様より出来ないのはザンくらいですわ」
ザンが聞いたら怒りそうな事を平気でジャルカが言った。
「そうか、なら、今度から、報告書はライラに書いてもらおう」
ジャンヌが喜んで言った。
「宜しいのですか。姫様。姫様の礼儀作法が如何になっていないか母上に報告されても知りませんぞ」
「うーん、それはまずいな」
真面目にジャンヌが応えたので、皆笑った。
「では、計画を早急に実践に移すようにします。細かいところは教育省と内務省、財務省で詰めて頂きます」
フェビアンが締めた。
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