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第八章 ボフミエ王宮恋愛編

王宮舞踏会1 大国皇太子はクリスにほとんど相手にされません

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オーウェンは式典前にクリスと話す間はなかった。
クリスがギリギリに入ってきたというのもあるが、目も合わせてもらえなかった。と言うか、もろに目をそらされた。
そのオーウェンの焦りの中でも、式典は順調に進んでいった。
式典でコレキヨらの紹介も無事に終わってパーティーに移った。
最初は筆頭魔導師の挨拶だ。

「皆さん。本日はお忙しい中お集まり頂いて有難うございます。
また、災害対策等でまだ現地で働いていらっしゃる皆さん。皆さんのおかげで今のボフミエ魔導国があります。本当に有難うございます。
やっと飢饉対策が終わったと思ったら今回の魔王の侵攻で皆さんには大変なご迷惑をおかけしたと思います。
しかし、皆さんのお力添えと世界各国からの協力のお影で無事に魔王を叩くことが出来ました。本当に有難う。感謝の言葉もありません。
また、今回の騒動の結果モルロイとクロチアの方々がボフミエ魔導国の一員となりました。元々のボフミエの方々はじめ、新しい環境で大変だとは思いますが、皆さん、協力してやっていきましょう。
早く食べさせろとジャンヌ魔導師団長の視線が怖いのでこの辺りでスピーチを終わります。
今後とも宜しくお願いします」
クリスが礼をした。盛大な拍手が起こる。

「ついで、乾杯の音頭をそのジャンヌ魔導師団長宜しくお願いします」
司会のフェビアンが紹介した。

「えっ聞いていないぞ」
ジャンヌは叫ぶが慌てて立ち上がって前に出た。

「食い意地の張っているジャンヌです」
ジャンヌの挨拶に思わず失笑が起こる。

「本来は乾杯っで終わるんですけど、私からも一言。
ここ3ヶ月くらい前、お粥しか食べられなくてとてもつらかったです。
でもそう言うとクリスの侍女のアデリナに、おかゆが食べられるだけマシですって怒られました。
今まで飢えたことなんて殆ど無い私にはその発言は衝撃でした。自分は脳筋だし、突撃隊長だし、クリスらが色々やっていることもよくわかん無いけど、1つだけ心に決めたことがあります。それは飢えない世界を作ろうと思ったことです。
では皆さん。それを乾杯の音頭にします。飢えない世界を」
麦酒のジョッキをジャンヌは掲げた。
「飢えない世界を!」
一拍子遅れて皆がグラスを突き出した。
それぞれグラスを当てる。

「それでは皆さん、しばしご歓談下さい」
フェビアンが歓談の合図を送る。

「姫様。今まで酷いこと色々されてきましたけど、今日の乾杯の言葉は感激しました。姫様も考えられることがあるんだと」
ジャンヌの補佐官的役割のグリフィズが感激していた。
「本当です。姫様も演説なんて出来たんですね」
「てっきりいつもみたいに乾杯だけで終わると思ってました」
ジャンヌの部下のライラやザンは好きなことを言う。

「あのう、一応私もマーマレードの皇太子なんだけど」
「でも、暴風王女でしょ」
「戦いの前でもなんとかなるだろうとしか聞いたこと無いし」
ジャンヌの言葉に対してみんなの言うことは更に酷かった。

「アレクどう思う?」
ブスッとしてジャンヌが聞くと、
「いやあ、まあ、俺もさっきのジャンヌの言葉に惚れ直したよ」
アレクは否定できなくて頓珍漢な答えになった。
「何だよその言い方」
ジャンヌは納得いかなかった。


式典の前にクリスと話す時間もなくて、オーウェンは焦っていた。
「クリス」
声をかけるが、
「あっ、オーウェン様」
やっと捕まえたと思ったのだが、目は相変わらず、合わしてくれない。
「新しく財務鏡になっていただくことが決まったジパグの皇太子殿下のコレキヨ様です」
と隣にいたコレキヨを紹介される。
「コレキヨです。クリス様からオーウェン様の事務処理能力の高さはお伺いしております。いろいろお教え下さい」
コレキヨは頭を下げた。
「内務卿のオーウェンです。私なんてまだまだですよ。こちらこそいろいろ教えて下さい。宜しくお願いします」
二人は握手を交わした。

「オウ、私も筆頭魔導師様に紹介して」
後ろから依然が言う。

「ああ、クリス様。陳国からの留学生で依然王女です」
「クリスティーナ・ミハイルです。宜しくお願いします」
「陳国の依然です。内務でいろいろお世話になる事になりました」
二人は握手を交わした。
「内務で?」
「内務でいろいろお手伝いしていただくことになったんだ」
慌ててオーウェンが言う。
「そうですか。こちらこそ宜しくお願いします」
二人はどこかよそよそしかった。普通クリスがなにか相手の得意なことを話すのにそれもない。
オーウェンは焦った。

「クリス様。おかえりなさい」
そこへペトロがやって来た。
「依然王女殿下。お願いしたクリス様と陳国王の電話会談はどうなりましたか」
なかなか返事をもらえないので、クリスがいる時に聞いておこうと思ったのだ。
「すいません。父が、なかなか捕まらなくて」
「えっでも、」
ペトロは焦った。アレクが怒るとまずい。
「そうなんですか。お忙しいなら仕方がないですね」
クリスは残念そうに言った。
「依然様。護衛の词语様と悠然様なんですけど、外務卿が気にいったみたいで、外務で仕事を手伝って頂く事に問題ありませんか」
「えっ私の護衛の二人ですか。」
嫌そうに依然が言う。
「依然。内務と外務は向かいだし、内務にいる限り問題ないんじゃないかな」
オーウェンが言う。
「オウがそう言うなら」
二人の名前呼びに思わず、クリスはピキッと来たが、特にオーウェンをオウ呼びするのは本来ならばクリスだけのはずなのにと思ったが、ここは大人の対応にすることにした。
「ペトロ様。そう言うことですので、アレク様にもお伝え頂けますか」
「判りました。有難うございます」
クリスはペトロに確認すると、
「では、これで」
二人に挨拶すると
「コレキヨ様。あちらに、お姉様らがいます。紹介しますわ」
そう言うとコレキヨの手を取ってコレキヨを連れて行った。
「あっクリス」
オーウェンが声をかけたが、無視される。

その後にオーウェンらを白い目で一瞥した補佐官のイザベラらが続いた。
「クリス様。コレキヨ様の手を繋いでいましたよね。オーウェン様にもめったに繋がないのに」
ボソリとペトロが言った言葉に改てオーウェンはショックを受ける。

「オウ、手なら私が繋いであげるわよ。あちらに美味しそうなデザートがあるわ」
「えっいや、ちょっと」
依然がそう言うとクリスに未練があるオーウェンの手を引っ張ってクリスとは反対側に連れて行った。
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