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第七章 魔王復活

幕間 クロチア再建 クリスは嬉し恥ずかし動画を全国に流されました

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クロチアの王都を魔王が破壊したため、実際はシャラザールが魔王に怒りの鉄拳制裁をしたためなのだが、ボフミア魔導国軍というよりも、連合軍は王都再建作業に入っていた。
そのための巨大テント村が王都郊外の戦場跡地に造られていた。
そして、その中でもひときわ大きなテントの中ではクリス達が戦後処理を次々に行っていた。

「クロチア国の扱いですが、私は基本はクロチアの王族に引き継いでもらうのが一番いいと思うんですけど」
クリスが考えを述べた。
戦乱の元凶のモルロイと違ってクロチアは占領された被害国だ。
王女が生存しているならば、そのまま王国を引き継がすべきだと思っていた。

「筆頭魔導師様がおっしゃるのは正論だとは思いますが、クロチア国民にアンケートしたところでは
そのまま、ボフミエに統治してもらいたいが7割超えたん出すけど」
クリスの補佐官のフェビアンが言った。

「えっそんなに?」
一同は驚いた。
「でも、私、クロチアの方々には魔王よりも恐ろしい雷魔導師とか、世紀末魔導師とか呼ばれて恐れられていたと思うんですけど……」
クリスがボソリと言う。クリスが来ると聞いてクロチアの王都は全員逃げ出して廃墟のように、誰もいなくなったのだ。そのおかげで人的被害は殆ど出なかったのだが。そんな女が筆頭魔導師の国の統治など、忌避されるに違いないとクリスは思っていた。

「それが、戦後クリス様を見た国民がこのように美しく華奢な方ならそんな酷いことをされないだろうと、人気が鰻登りでして、皆、クリス様の本質を理解されたのかと」
フェビアンが言う。
「私の来るのを知って、皆逃げ出して廃墟になった王都を見たのにそれを信じろというの?フェビアン」
クリスが懐疑的に聞く。
「お任せ下さい。王都の再建活動においては全てクリス様のご命令であると事あるごとに住民に唱えろと1兵士に至るまで徹底いたしました」
フェビアンが胸を張って言った。
「えっ、そんな事しているの?」
クリスは嫌そうな顔をした。
「基本的には力仕事は現場の兵士の皆さんの頑張りだから、私は関係ないと思うのですが」
「そうは言ってもその兵士に指示なさっているのは最終的には筆頭魔導師様になられますから」
クリスにフェビアンが言う。
「でも、そんな事で私の人気が上がるの?」
信じられないという顔でクリスがフェビアンを見る。
「クリス様があまりにも気にしていらっしゃいましたので、ジャルカ様にお願いして、大々的な情宣活動をしていただきました」
補佐官のイザベラがニコっと笑って言った。
「えっ、ジャルカ様を巻き込んで大規模な情宣活動?」
クリスは不吉な予感がした。

「左様でございます。クリス様が化け物のように扱われたとお聞きしまして慌てて作りました」
魔導電話で参加しているジャルカが嬉々としていった。

「何かとんでもない事をされたような気がするんですけど……」
クリスは不安そうに言う。

「ボフミエ本国留守居部隊が総力を結集して作らさせて頂きました」
ジャルカが指を鳴らすと画面が変わり、マーマレードにいる、王宮の侍女の息子のジャックが画面いっぱいに写った。
「ジャック」
バックはマーマレードの下町だ。
クリスはマーマレードにいた時のことを思い出していた。

「クリス姉ちゃん元気ですか」
ジャックの日常風景の姿にジャックのナレーションが重なる。
右下にはクリスの日常が映し出されていた。
「僕は元気にやっています。父ちゃんは戦で死んだけど、僕がいじめられた時や寂しい時に、いつも姉ちゃんが慰めてくれて感謝しています。異国の地でもがん張って下さい」
最後はジャックと抱き合う、クリスの姿で終わっていた。
そして、テロップが
- 二度とあなたを悲しません!ボフミエ魔導国筆頭魔導師クリスティーナ・ミハイル -

「あのこれって、ジャックのビデオレターでは無いですよね」
クリスが恐る恐る聞く。最後のテロップが不気味に光っていたような。
「はい。これが情宣動画です」
「えっ情宣動画って………」
「クロチア各地にスクリーン張って映し出したり、魔導電話の前後に流しました」
ニコニコしながらジャルカが説明した。
クリスは真っ赤になる。
これを流しただと…………

次の動画は確かマーマレードの時のクラスメイトの女の子だ。
クラスの風景の中で女の子の後ろ姿が、
「忙しい中隠れてクリス様が魔導電話をかけていらっしゃるので、すわ婚約者に隠れて男がいるって思ったんです」
少女の後ろ姿がから覗き込むように画面が魔導電話をアップすると、そこにはジャックが写っていた。
「クリス様は侍女の子供の戦災孤児を慰めていらっしゃったんです。寝る間も惜しんで彼女はその子を慰めていらっしゃったんです。私、この人こそ、真の聖女だと思いました」
- 兵士の皆さん!あなた達の後ろは私が守ります!ボフミエ魔導国筆頭魔導師クリスティーナ・ミハイル -

「いかがですか。クリス様。お気に召しましたか」
ジャルカが喜んで聞いてきた。
「あの、この動画を皆に流したのですか」
真っ赤になってクリスが絞り出すように聞いた。
「はい。これ以外にもクリス様の日常とか筆頭魔導師クリス様の全てとか、特集も作らせてもらいまして、全世界に流させていただきました」
サラリとジャルカは言った。

「うそ、こんなのもう外に出られないじゃない」
クリスは机に突っ伏していた。
「ありえない。ありえないよ」
クリスがボソボソ呟いている。

「良いじゃないか。クリス。このような動画で。私なんか、罰として、昔、城壁を破壊してしまった時の反省動画を全マーマレードに流されたのだぞ。それに比べればよほどマシだ」

確かにジャンヌに比べればマシかも知れないが、これが全世界に流されたとなるとクリスは真っ赤に固まっていた。
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