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第七章 魔王復活

大国皇太子は暴風王女を押し倒して張り手で弾き飛ばされました

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その後が大変だった。
シャラザールの怒りはクロチアの王都を灰塵としただけでは収まらず、魔王カーンを分子の段階まで分解するだとか訳の判らないことを叫んで、魔王を探し回ったが、爆発の跡に残っていたのはなぜ消滅しなかったか不明だが、ボロボロになったカーンの姿のみで、憑依していた魔王はどこにも見つからなかった。
一説によると爆風に紛れて胡散臭い匂いをプンプンさせた黒い石が空の彼方に飛んで行ったとか行かなかったとか。

結局いつもの如く生き残ったアレクたちがシャラザールの死の特訓に付き合わされたのだった。

幸いな事にクリスを恐れた住民が逃亡したおかげでクロチアの王都が消滅したにもかかわらず、被害者はほとんどなかった。


鬱陶しいのでジャルカの前から追い出すために、衝撃吸収装置のない、スカイバードに乗せられて飛ばされたオーウェンは、幸いな事に!?クロチアの王都手前で失速、着地に失敗して、シャラザールに見つかることはなかった。
オーウェンは命からがら、クロチアの廃墟の跡地に急遽作られた臨時の野戦病院に夜中に到着した。
そして、兵士たちをしごくだけしごいて日頃のうっ憤を発散した後にシャラザールの憑依を解かれたクリスが運び込まれた病室にたどり着いたオーウェンは、クリスが無事なことを知って歓喜していた。
何故クリスが無事なのかは誰に聞いても目を逸らして答えてくれなかったが。

シャラザールが去る間際にオーウェンに言うことまかりならぬと伝言していったからだ。
シャラザールの意思に逆らうなどという暴挙に及びそうな者は魔王カーン以外は存在しなかった。


そのクリスは夢を見ていた。

何故か、アレクやジャンヌを顎で使って、特訓させている夢だった。
それも何故か、アレクはクリスが指示するたびに怯えていた。
いつもアレクには何故か怯えられているような気がしていたが、今日はいつにも増して怯えられていた。

「そんなに怯える必要はありませんよ」
アレクに声をかけようとしてはっとクリスは目を覚ました。

周りを見渡すと、簡易テントの中のベッドの上で寝ていた。
なぜ自分がここにいるかわからなかった。
そして、横でベッドに突っ伏して寝ているオーウェンの横顔があった。
その姿があまりにもあどけなくて、思わずクリスは見とれていた。
「でも、どうしてここに」
クリスははっとした。
そうだ。魔王に胸を刺されたんだ。

慌てて自分の胸元を広げて胸を見る。
しかし、刺された跡なんてどこにもなかった。

どうしたんだろうと思ったところでオーウェンが身じろぎして起き上がった。

「クリス」
オーウェンが気付いてクリスを見る。
そして、広げられた胸をはっきりと見た。

「キャーーーー」
慌てて悲鳴を上げてクリスが胸元を隠す。

「ごめん」
慌ててオーウェンが視線を外したところに、クリスの悲鳴を聞きつけてウィルが飛び込んできた。


「姉上。オーウェンに何かされたの」
ウィルがオーウェンとの間に入って今にもオーウェンに抜いた剣を振り下ろそうとする。

「いや、待て、ウィル。俺は何もしていないぞ」
「問答無用」
ウィルが剣で切りかかる。
それをオーウェンが躱して逃げる。

「ちょっとウィル」
クリスが止めようとしたが、二人は慌てて病室を飛び出していた。

クリスは真っ赤になって固まっていた。
「どうしたんですか」
そこにウィルに続いて外に待機していた侍女のミアやアデリナが飛び込んで来た。

「もう最低。胸がないのに見られた」
クリスは胸を見られたこと自体も嫌だったが、胸が殆ど無いことを知られたのも嫌だった。

「えっクリス様。オーウェン様に胸見られたんですか」
「もう最低ですね。オーウェン様は」

「えっ。いや、そうではなくて」
クリスは独り言を聞かれたことに慌てた。

「本当にオーウェン様もいやらしい」
「男ってみんな同じですね」
二人の侍女は憤慨する。

クリスは傷跡がないかどうか自分で見た時にたまたまオーウェンが目を覚まして見られたとは言えなかった。

オーウェンは怒った二人によってしばらく病室に出入り禁止となった。

しかし、クリスは夜通し、オーウェンが傍で看護してくれていたことを聞いて、喜んだ。

あの魔王カーンに刺し殺されそうになった時に、オーウェンの事が脳裏を過ったのも思い出していた。親切にしてくれたオーウェンの事が本当は気になっていることも。
クリスは侍女たちがオーウェンに怒っているのは判ったが、自分も恥ずかしかったが、でも、いつも優しくしてくれるオーウェンの顔が見たかった。
忙しい中、無理やりジャルカに言って衝撃遮断装置なしのスカイバードに乗ってわざわざ心配して飛んできてくれたオーウェンに会いたかった。
でも、侍女たちはなかなか許さなかった。

その日の夕方にようやく、謝罪しに来たオーウェンを侍女たちは迎え入れていた。

「ごめんクリス。朝方は」
「いえ、私の方こそ、オーウェン様がいらっしゃるのに気づかなくてはしたないことをしてしまってすいません」
言いにくそうに二人が謝る。

「でも、本当にクリスが無事でいてくれて良かった。
カーンに刺されのが見えた時は本当に死ぬ思いだった。
よく無事だったね」
「私もどうなったか良く判らなかったんですけど、本当にあの時はもう終わりだと諦めました」
「クリス。無事でよかった」
思わずそのクリスの手をオーウェンが握る。
握られてクリスはドギマギした。

「クリス。目を覚ましたんだって」
そこにシャラザールに明け方まで散々しごかれて、今までダウンしていたジャンヌが飛び込んで来た。

「えっお前らそういう関係だったの」
手を取り合っている二人をジャンヌはジト目で見る。

「いえっ、そういう訳では」
慌ててクリスがオーウェンの手を振り払った。

「えっクリス冷たい」
思わずオーウェンはつぶやく。

「いえっオーウェン様。これは」
クリスは恥ずかしくてこっぴどくオーウェンの手を振り払ったことを、今度は邪険にしすぎたかと気にする。

「ふうううん。二人の仲は進展したんだ」
ジャンヌのからかいに。

「えっ、いえ、そういう訳では」
しどろもどろにクリスが言い訳しようとする。

「いや、実はそうなんだ」
今度はオーウェンがクリスの肩を抱いた。

「えっ」
今度はクリスが一瞬唖然とする。

「いや、オーウェン様」
真っ赤になったクリスは思いっきりオーウェンを突き離した。

勢いあまってオーウェンはジャンヌと重なってそのままジャンヌを押し倒した形になった。

「えっ」
慌ててオーウェンは立ち上がろうとして思いっきりジャンヌの胸を触っていた。

「すまん」
「この変態」
オーウェンはジャンヌの張り手を顔に受けてそのまま、テントごと外に弾き飛ばされていた。

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人物紹介
ミア・フェルト19。クリス付きの侍女
元々ボフミエの皇帝に結果的に反逆したジャスティンの組織の一員。
クリスが飛ばされてきて、そのあとクリスの世話をしているうちに侍女になる。
ボフミエに平和を取り戻してくれたクリスに心酔している




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