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第七章 魔王復活

クロチア最終決戦10 シャラザール来臨す

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ここまで読んで頂きありがとうございます。
ついにラスボス???いやラストヒーローが登場です。


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ウィルの目には、胸を貫かれて瀕死のクリスから魔王カーンが手を引き抜き、クリスが血を噴き出して倒れこむ様子が映っていた。

姉さまがやられた。
ノルディン帝国の侵略戦で破竹の勢いだった赤い死神にも負けなかったクリスが、
王弟との戦いでも魔人と化した王弟を一撃で倒したクリスが
魔王カーンに胸を突きさされて倒された。


「ウィル、大丈夫よ。絶対に助けるから」

ノルディン戦で魔力を使い果たして動けなくなったウィルにクリスがけなげにもかけてくれた言葉だった。その時はクリスの声の通りに助かった。

「ウィルありがとう。わざわざ来てくれて」
サマーパーティーで皇太子に代わってウィルがエスコートした時に、少し悲しそうに笑うクリスも可憐だった。

その姉が、目の前で魔王カーンにやられた。

「おのれ、許さん!」
ウィルは怒りのあまりプッツン切れていた。
その感情のままに転移し魔王の前に出現すると満身の力を込めて叩き切っていた。


「ふんっ。雑魚が」
カーンは人差し指を突き出すと爆裂魔法をウィルに向かって放つ。

「グウォ」
一瞬でウィルはもろに喰らって弾き飛ばされていた。



アルバートは自らの主のクリスが血まみれになって倒れるのを呆然と見ていた。
本来ならば護衛騎士なのに、クリスと魔王の戦いには力が違いすぎて全く手も足も出なかった。

「クリスティーナ・ミハイルと申します」
初めて見た時はクリスはかわいいお人形のような人だなとは思った。
でもそれだけだ。己を託せるとは到底思っていなかった。
しかし、
「アルバート様は近衛で乗馬の達人であるとお伺いしております」
クリスがすらりとアルバートの事を言った事に驚いた。今日会うなんて全く知らせていなかったはずだ。アルバートの事にそこまで関心を持ってくれているなんて、少しうれしかったのは事実だ。
そして、父の命に従ってクリスの騎士になった。
しかし、本当に驚かされたのは、魔術で一瞬でシャラザール山を破壊した時だった。
なおかつ魔人と化した王弟を殴り倒して普通の人に戻した事も信じられなかった。
反乱に加担した兵士達を救うために自ら戦場に立った事に感動した。
この人なら自分の将来を任せるに値するとアルバートはクリスを信頼しきっていた。

そのクリスが倒された。
自分は護衛の役割も全くできないうちに。
アルバートは自らの力の無さを恥じた。
ここで一太刀浴びせなくて何が護衛騎士か。

ウイルがはじき飛ばされた瞬間には身体強化して魔王に剣を振り下ろそうとした。


「お前もだ」
人差し指をアルバートの前に突き出すと爆裂魔法で弾き飛ばす。


後ろから剣を振りかぶって迫ったナタリーも振り向いて人差し指で弾き飛ばした。

その横のメイにも指で爆裂魔法を繰り出すが、メイはミラーを張る。
カーンの放った爆裂魔法はメイのミラーで反射された。

「えっ」
カーンはメイなんて端役の騎士に反射されるなんて心の片隅にも思っていなかった。
今は能力アップした状態なのだ。ボフミエの小娘以外に負けるわけなどないと思っていた。


カーンは慌てて障壁を張るが弱かった。
すさまじい爆発音と爆風と衝撃がカーンに襲い掛かる。
一瞬で自らの障壁を弾き飛ばされ自ら放った爆裂魔法をもろに受けて弾き飛ばされた。

メイはクリスが小さい時から護衛騎士として仕えていた。
クリスは侯爵家の長女であり、皇太子の婚約者になった。
でも、クリスは気さくで決して偉ぶることはなかった。
使用人たちの事を本当に考えてくれていて、メイの事も気にしてくれていた。
そんなクリスがメイは好きだった。
しかし、クリスが重要人物になるにつれていろんな危険なことが増えて、最近は自らの能力の足りないと思う事も多々あった。
特にGAFAの襲撃の時は足手まといになり、メイがやられたがために、クリスは怒りのあまり雷撃をGAFAの本拠地に叩き込んでくれた。
でも、このまま弱いままではクリスの足を引っ張ってしまう。
メイは戦神に祈った。そして、ある夜現れた戦神からミラーを教えてもらい、特訓されたのだ。
それがやっと役に立った。
でも、クリスは倒れてしまった。

魔王カーンに一矢報いた。
でももう魔力は限界だ。
今の魔王カーンの爆裂魔術を跳ね返すために、すべての力を使ってしまった。


「おのれ。雑魚のくせに余に逆らうとは」
黒焦げになりながら魔王カーンは立ち上がった。
雑魚にやられて切れていた。
この戦場ごと破壊してやる。
魔王カーンは両手を振り上げた。

「闇の一撃」
渾身の一撃をメイに目掛けて放とうとした。

「クリス様」
メイは祈った。
(自らの主の元にこれでいける。天国でもメイがクリスを守るのだ)
そう思った。

その瞬間だ。

その場にすさまじい力が出現した。

「どけ!小娘!」
メイは突き倒されていた。

すさまじい黒い奔流がメイのいた空間に流れ込む。

が、その中から光が膨れ上がって周りを圧倒した。
黒いもやもやを一瞬で飲み込む。

「待たせたな」
その光の中には戦神シャラザールが立っていた。

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人物紹介
戦神シャラザール
1000年前の歴史上の人物。
混沌とした戦乱の世の中を統一した女帝。
ドラフォード王国、テレーゼ王国、マーマレード王国の3国はそのシャラザール帝国が3っつに分かれたもの。
ボフミエ魔道国はそのシャラザールに反抗した3魔導士が建国したともいわれている。
その時現れた魔王と刺し違えたとか、圧倒したが裏切られたとかいろんな説がある。
それは今後少しは明らかになる予定。
現在は子孫の中で一番魔力の多いクリスに憑依している。
ノルディン侵攻軍を殲滅したのはこのシャラザール。
赤い死神はその時見栄もプライドも投げ捨ててただひたすら逃げたのであまりにも哀れに思ったシャラザールが許したともいわれている。その時からアレクはシャラザールに頭が上がらない。
もっとも赤い死神に盾突けるものはいないが……




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