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第七章 魔王復活

暴風王女はちょこまか転移して魔王を翻弄しました

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クロチアの王都に風が吹いた。

ヒュー

しかし、風は建物には当たっても人一人当たることは無かった。
時たま兵士たちには当たったが、庶民には一人も当たらない。
そう、ものの見事に王都にいた人々はいなくなっていた。
魔王よりも恐ろしいクリスティーナ襲来の噂を聞いて。

「どういう事だ」
王城の城壁に立ったカーンが聞いた。

「戦乱が近いという事で逃げ出したようです」
参謀のアクラシが言う。
「戦乱が近いか。しかし、余が使者で来た時はもっと人がいたように思うが」
不審そうにカーンが聞く。
「何でもボフミエの魔女が来ると言うので慌てて皆逃げ出したようです」
新たにカーンの補佐についたマリオが言った。カーンの腰巾着としておべっかを言いまくっていた。

「おなご共が言うには、魔王よりも怖いと」
何でもないようにマリオは言った。

「何だと。余よりも強いだと」
カーンはぎろりとマリオを睨みつけた。

「いえ、そのような。陛下よりも強い方はこの世に入らっしゃいません」
慌ててマリオは否定する。

「しかし、魔王よりも怖いのだろうが」
マリオの襟首を掴んで持ちあげる。
「ヒィィィ、ご容赦を。」
「どのように怖いのだ」
「なんでも、魔女は雷撃を浴びせたとか」
「それで余が反撃せなんだとか」
「いえいえ、そんな事はお許しを」
必死に許しを請うが

「まずは貴様を先陣の露払いと化してやるわ」
カーンはマリオに向けて衝撃波を放った。
「ギャっ」

一瞬にてマリオは肉塊とかして城壁の下に飛んで行った。

「者ども、これより全軍出撃する。
遅れる者はこの者のようになる。
死にたくなければ全力でついて来い。
一気にボフミエの小娘を血祭りにあげるぞ」
そう脅すと先頭を切って歩き出した。
その後をクロチアモルロイの兵士1万人が続いた。


ジャンヌ達魔導中隊は先行して偵察していた。

「姫。前方にモルロイの兵士発見。約総勢1万」
索敵魔法を使っていたライラが報告する。
「魔王はいるのか」
ジャンヌが聞く。
「1万と言えば本軍だと思います。おそらくいるかと」
「よし、一矢報いて逃げるぞ」
「何かその使い方違います」
ライラが言うがジャンヌは全く無視した。
「貴様ら全軍後退しろ」
「しかし…・・」
ザンが言う間もなくジャンヌは転移していった。


魔王カーンは全軍の先頭に立ってゆっくりと歩いていた。

「ん」
前方に魔力を感じる。
「敵だ」
「戦闘用意」
「敵襲」
次々に伝令が出る。

兵士たちは散開して備える。


しかし、前方の敵は散開し、逃げ出した。
「敵は逃走を始めました」
「さすが陛下ですな」
「ふん、雑魚が。戦の先陣として叩き潰してやろうと思ったのに」
そう高笑いをしようとした時に真横にいきなりジャンヌが転移ししてきた。
「喰らえ」
ジャンヌはカーンに向けて全力で爆裂魔法をくらわせた。

カーンは障壁を張る。

すさまじい爆発が両者の間で起こった。

その爆発の煙の後に少しすすで汚れたカーンが現れた。

「ちっ全く効かずか」
上空にいたジャンヌは舌打ちする。

「ふんっこのような攻撃が余に聞くと思ってか」
余裕をもってカーンが立っていた。

「ふんっ単なる挨拶をしただけだ」
ジャンヌが言う。

そして、ボールのようなものをそっと投げた。

カーンは思わず障壁で防ぐ。

しかし、それは障壁に当たるとすさまじい光を発していた。

周りの兵士たちは思わず目を押えて叫ぶ。

それと同時にジャンヌは爆裂魔法を周りに散らばした。

四方ですさまじい爆発が起こった。

爆発の後ではうめき声をあげて倒れている多くの兵士がいた。

「おのれ、生意気な」
カーンが爆裂魔法を放つ。

ジャンヌは転移して避けた。


「ほう、転移持ちか」
カーンがニヤリと笑う。

「ふんっ魔王というとどんなに強いかと思ったが、クリスの敵ではないな」
ジャンヌは笑って言った。

「何だと小娘」
カーンは無詠唱で爆裂魔法をジャンヌに浴びせる。
しかし、その前にジャンヌは転移する。

次々転移するジャンヌめがけて爆裂魔法を浴びせるがそのたびにジャンヌは転移する。
そして、そのたびに周りの兵士が爆裂魔法をもろに食らった。


「おのれちょこまかと逃げおって」

「あっ、クリス」
「何だと」
ジャンヌの声にカーンは反応して思わず後ろを見た。

「あっはっはっは。馬鹿な魔王だ」
馬鹿にしたジャンヌの声が響く。

「おのれ。もう許さん」
カーンは完全に頭に来ていた。
そのまま無詠唱で今までの100倍ほどの超強烈な爆裂魔法をジャンヌに向けて放っていた。

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人物紹介
魔王カーン28 父王らに殺されそうになり暗黒面におちる すなわち魔王に憑依された。
元々魔力量少なく、魔王の本来の力で威圧し、圧政をひいている。
元々いい人だが今は魔王の性格が完全にカーンをのっとっている。
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