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第七章 魔王復活
クロチアの玉座は魔王によって血まみれにされました
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その日にモルロイ軍の動きは無かった。
「敵は動かんな」
「我が方の対応が早かったので、動きづらくなったかと」
国王の言葉にセサルが意見を言う。
「そうだな。所詮3流国のモルロイだ。我が方の対応の速さに慌てふためいているのかもしれん」
喜んで国王は言った。
「さようでございます。カーン目が反乱を起こした相手は所詮3流国のモルロイの兵士。百戦錬磨の我が方の軍の反応に手順が狂って慌てふためいておるのやもしれません」
セサルも同調した。
(本当にそうなのだろうか。何か策があるのではないか)
と内務長官のルチッチは思った。
反逆の時の暴虐さは聞く限りすさまじいものだった。
これくらいの軍勢に恐れをなすとは到底思えなかった。
「申し上げます。モルロイから使者が参りました」
兵士が奏上した。
「モルロイからか」
「当てが外れて早速和平交渉かもしれませんな」
「そうじゃな、我が軍の方が大軍じゃ。逆侵攻される事を恐れて使者をよこしたか」
早くも国王らは戦勝気分に陥っていた。
「いかがなさいますか」
「そうじゃの。脅してみるか。案外賠償金を吹っ掛ければ払うかもしれんて」
「さようでございますな。まず、何故軍を国境に集めたか問い詰めるのも宜しかろうと存じます」
国王は使者を謁見することにした。
近衛騎士に囲まれて1人の使者が謁見の間に入って来た。
その男はどこか不遜な態度で進み出ると礼もせずにいきなり話し出した。
「クロチアの国王に告げる。直ちに降伏せよ」
男は傲岸にもそう言い切った。
「何だと」
「貴様使者風情のくせに何たる態度」
「陛下に対して失礼であろう。礼をしろ」
周りの閣僚が叫ぶ。
「あっはっはっはっ」
使者はいきなり笑い出した。
「な、なにがおかしい」
セサルが言う。
「ふんっ。愚かな奴らよ。死なねば愚か者はなおらぬと言うが本当だな」
「使者の分際で、無礼であろうが」
息まいてセサルは言う。
「愚かなクロチアの者どもよ。予の顔を見ても誰かもわからぬのか」
「何だと」
一同男の顔を見る。
見るからに不遜な態度だが、男は整った顔立ちをしていた。
そして、場慣れしていた。
「も、もしかしてモルロイのカーン陛下?」
驚いてルチッチが言った。第一王子のカーンにルチッチは会った事はあった。
しかし、今のように自信たっぷりな態度ではなくどちらかというとうつむき加減の陰気な感じをその時は醸し出していた。
「内務長官のルチッチか」
ルチッチはカーンに名前と顔を覚えられていることに驚いた。
1度しか会った事は無かったはずだ。
「な、なんと国王自らが乗りこんで来たのか」
クロチア国王ダーヴィトが言う。
「そうだ。貴様らの為に皇帝自ら出てきてやったのだ。感謝するが良い」
「な、なにが皇帝だ。」
「簒奪者のくせに」
「貴様の方こそ降伏しろ」
国王らが言う。
「ふんつわざわざ忠告しに来てやったのに、その態度か。愚かな」
「ええい、その無礼者を捕えよ」
「貴様こそ飛んで火にいる夏の虫よ」
衛兵が捕まえようとするが、カーンは一瞬で衛兵たちを弾き飛ばしていた。
「ふんっ。予がわざわざ来てやってその態度か」
にやりとカーンは笑った。
「ええい、そのカーンを切れ。殺して構わん。」
王が兵士たちに指示する。
剣を抜いて騎士が切りかかった。
手を振り上げて一瞬でカーンは5名の騎士を血の塊に変えていた。
「ギャっ」
その血をもろに受けた国王が叫び声を上げた。
「使者を殺そうとするなど、クロチアは野蛮だな」
「親を虐殺した貴様が言う事か」
国王が言う。
「ふんっ。口だけは達者だな。命だけは助けてやろうとしたのに、愚かな王だ」
次の瞬間に国王は胴と首が離れていた。
「キャー――――」
後ろにいた侍女たちの悲鳴が響く。
「おのれカーン」
騎士団長も剣を抜いて切りかかろうとするが、一瞬で上半身と下半身が離れていた。
慌ててその場にいた兵士たちはカーンに切りかかる。
しかし、大半は一瞬で肉の塊と化しいていた。
そして、ほとんど時間がかからずに動いている兵士たちはいなくなった。
残された閣僚たちは皆唖然としていた。
「動くな。一歩でも動くと肉塊に変えるぞ」
カーンが叫んだ。
「死にたいものは動くがよい」
カーンの言葉に誰もが固まっていた。
高笑いする血まみれのカーンの前に反抗する者はもはやいなかった。
*********************
人物紹介
アレクサンドル・ボロゾドフ ノルディン帝国王太子28 元北方第一師団長
赤い死神。赤髪の皇太子。当然魔法騎士。現ボフミエ国外務卿。
本来この魔王並みの非情さ。故に赤い死神。
彼の為に亡くなった国は片手では収まらない。
しかし、シャラザール(クリス)を前にして、恐ろしさになりふり構わず逃げ出した。
最近は能力がそれほど変わらないジャンヌを追いかけて3枚目風に書かれているが、本来はこの魔王のように傍若無人
国王を王と見ず。自国の皇帝ですら一目置いている。
しかし、シャラザールの前には雑用係と化し、いじめられ役。ゆえにクリスには頭が上がらない。
「敵は動かんな」
「我が方の対応が早かったので、動きづらくなったかと」
国王の言葉にセサルが意見を言う。
「そうだな。所詮3流国のモルロイだ。我が方の対応の速さに慌てふためいているのかもしれん」
喜んで国王は言った。
「さようでございます。カーン目が反乱を起こした相手は所詮3流国のモルロイの兵士。百戦錬磨の我が方の軍の反応に手順が狂って慌てふためいておるのやもしれません」
セサルも同調した。
(本当にそうなのだろうか。何か策があるのではないか)
と内務長官のルチッチは思った。
反逆の時の暴虐さは聞く限りすさまじいものだった。
これくらいの軍勢に恐れをなすとは到底思えなかった。
「申し上げます。モルロイから使者が参りました」
兵士が奏上した。
「モルロイからか」
「当てが外れて早速和平交渉かもしれませんな」
「そうじゃな、我が軍の方が大軍じゃ。逆侵攻される事を恐れて使者をよこしたか」
早くも国王らは戦勝気分に陥っていた。
「いかがなさいますか」
「そうじゃの。脅してみるか。案外賠償金を吹っ掛ければ払うかもしれんて」
「さようでございますな。まず、何故軍を国境に集めたか問い詰めるのも宜しかろうと存じます」
国王は使者を謁見することにした。
近衛騎士に囲まれて1人の使者が謁見の間に入って来た。
その男はどこか不遜な態度で進み出ると礼もせずにいきなり話し出した。
「クロチアの国王に告げる。直ちに降伏せよ」
男は傲岸にもそう言い切った。
「何だと」
「貴様使者風情のくせに何たる態度」
「陛下に対して失礼であろう。礼をしろ」
周りの閣僚が叫ぶ。
「あっはっはっはっ」
使者はいきなり笑い出した。
「な、なにがおかしい」
セサルが言う。
「ふんっ。愚かな奴らよ。死なねば愚か者はなおらぬと言うが本当だな」
「使者の分際で、無礼であろうが」
息まいてセサルは言う。
「愚かなクロチアの者どもよ。予の顔を見ても誰かもわからぬのか」
「何だと」
一同男の顔を見る。
見るからに不遜な態度だが、男は整った顔立ちをしていた。
そして、場慣れしていた。
「も、もしかしてモルロイのカーン陛下?」
驚いてルチッチが言った。第一王子のカーンにルチッチは会った事はあった。
しかし、今のように自信たっぷりな態度ではなくどちらかというとうつむき加減の陰気な感じをその時は醸し出していた。
「内務長官のルチッチか」
ルチッチはカーンに名前と顔を覚えられていることに驚いた。
1度しか会った事は無かったはずだ。
「な、なんと国王自らが乗りこんで来たのか」
クロチア国王ダーヴィトが言う。
「そうだ。貴様らの為に皇帝自ら出てきてやったのだ。感謝するが良い」
「な、なにが皇帝だ。」
「簒奪者のくせに」
「貴様の方こそ降伏しろ」
国王らが言う。
「ふんつわざわざ忠告しに来てやったのに、その態度か。愚かな」
「ええい、その無礼者を捕えよ」
「貴様こそ飛んで火にいる夏の虫よ」
衛兵が捕まえようとするが、カーンは一瞬で衛兵たちを弾き飛ばしていた。
「ふんっ。予がわざわざ来てやってその態度か」
にやりとカーンは笑った。
「ええい、そのカーンを切れ。殺して構わん。」
王が兵士たちに指示する。
剣を抜いて騎士が切りかかった。
手を振り上げて一瞬でカーンは5名の騎士を血の塊に変えていた。
「ギャっ」
その血をもろに受けた国王が叫び声を上げた。
「使者を殺そうとするなど、クロチアは野蛮だな」
「親を虐殺した貴様が言う事か」
国王が言う。
「ふんっ。口だけは達者だな。命だけは助けてやろうとしたのに、愚かな王だ」
次の瞬間に国王は胴と首が離れていた。
「キャー――――」
後ろにいた侍女たちの悲鳴が響く。
「おのれカーン」
騎士団長も剣を抜いて切りかかろうとするが、一瞬で上半身と下半身が離れていた。
慌ててその場にいた兵士たちはカーンに切りかかる。
しかし、大半は一瞬で肉の塊と化しいていた。
そして、ほとんど時間がかからずに動いている兵士たちはいなくなった。
残された閣僚たちは皆唖然としていた。
「動くな。一歩でも動くと肉塊に変えるぞ」
カーンが叫んだ。
「死にたいものは動くがよい」
カーンの言葉に誰もが固まっていた。
高笑いする血まみれのカーンの前に反抗する者はもはやいなかった。
*********************
人物紹介
アレクサンドル・ボロゾドフ ノルディン帝国王太子28 元北方第一師団長
赤い死神。赤髪の皇太子。当然魔法騎士。現ボフミエ国外務卿。
本来この魔王並みの非情さ。故に赤い死神。
彼の為に亡くなった国は片手では収まらない。
しかし、シャラザール(クリス)を前にして、恐ろしさになりふり構わず逃げ出した。
最近は能力がそれほど変わらないジャンヌを追いかけて3枚目風に書かれているが、本来はこの魔王のように傍若無人
国王を王と見ず。自国の皇帝ですら一目置いている。
しかし、シャラザールの前には雑用係と化し、いじめられ役。ゆえにクリスには頭が上がらない。
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