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第七章 魔王復活
閑話 赤い死神が恐れる人
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「はい。皆さんおはよう」
アレクが壇上に上がった。
その日も特別授業で今日はノルディン帝国についてだった。
講師は現皇太子のアレクがするという事で今日も講堂は満員だった。
講堂の後ろには各国からの大使やら、王族やら、わんさか押しかけていた。
特に北方地域、ノルディンと国境を近くするものが聞きつけてきていた。
次期ノルディン国王と言われる。現皇太子が講演するのだ。
彼らにとっては今後の自国の方針を決定する上でもとても大切な事だった。
「今日はアメリア学園長からノルディンの事について話してくれと言われてやってきました」
アレクはそう言うと、周りを見渡す。
「何故か多くの王族の方々や外交関係の方々もいらっしゃいますが、まあ、講義することはそんなに慣れていないので不慣れな事もあるとは思いますが、聞いていただきたい」
そう言うとアレクは講義を始めた。
そして、アレクは皆に知られている帝国の歴史をかいつまんで説明した。
「そう、こうしてノルディン帝国は軍事力の力で、近隣諸国に恐怖を植え付けてここまで大きくなってきたのです」
帝国の歴史のまとめをアレクはした。
「ここまでで何か質問ありますか」
アレクは一同を見渡す。
「すいません。ノルディン帝国が巨大な軍事力を背景に大きくなってきたのはよく判ったのですが、
何故、3年前のマーマレード戦では負けられたのですか」
怖いもの知らずの1年生が質問した。
北方の王族たちは真っ青な顔をしていた。
特にトリポリ国王は自分に被害が無いように、この場を逃げ出そうかとそわそわしだす。
アレク自身はその質問にむせていた。
絶対に聞かれたくない事だった。
だからその話は一つもしなかったのに。
何故触れる。
アレクは睨みつけようとして、クリスと一瞬目が合う。
(やばい)
そう、ここにはクリスがいるのだ。
クリスを怒らせて何かの拍子に戦神シャラザールが来臨することだけは避けたかった。
「うーん、戦いは時の運でもあります。完全だと思っても負ける事はあるんです」
アレクは適当に誤魔化そうとする。
「その戦いの事はいろいろ調べたのですが、何故マーマレードが勝ったか、大切な事が書かれていなくて、当事者の殿下なら何かご存知かなと思いまして」
(そらアそうだろう。戦いに伝説の戦神シャラザールが出てきて勝ったなんて、史書に書ける訳無いし)
とアレクは思った。
「まあ、機密事項も多々存在しますから、そこはそれでご理解ください」
アレクは笑って誤魔化した。
「はい。殿下が帝国の皇帝なら、このボフミエ魔導国と戦うとしたらどのように戦われますか」
別の質問を童顔の生徒の一人が聞く。
「おいっ余計な事を聞くなよ」
トリポリ国王は独り言を言った。
そんな事になったらボフミエへの途上の小国は物資の供給から兵員の供出まで大変なのだ。
良い事は何もない。
冗談でも言ってほしくなかった。
「私が皇帝ならば絶対にボフミエには手を出しません」
一顧だにせずアレクが言った。
アレクらしからぬ返答に周辺諸国の首脳陣は驚く。
赤い死神が丸くなったのだろうか。
「それは今、アレクサンドル殿下がボフミエにいらっしゃるからですか」
生徒が聞く。
「それは無いですね。ノルディンの皇帝は自国の王子でも、必要とあらば切り捨てます」
そうだそうだとトリポリ国王は頷いた。
だからノルディンから出たアレクに恐怖を感じなかったのだ。
もっともアレク自体が赤い死神だという事を忘れていたが。
「ドラフォードの皇太子殿下がいらっしゃるからですか」
他の生徒が聞く。
「まあ、確かに、ドラフォードと我が国は良く争っています。
でも、戦わなければならない時にはドラフォードとも戦ってますよね」
アレクが言う。そしていつも負けているが。
「正義の騎士様がいらっしゃるからですか」
更に別の生徒が聞く。
「確かにジャスティンは脅威ですが、やらなければいけないとなれば戦いますよ」
いい加減この話題はやめて欲しいとアレクはいらだった。
「判った。ジャンヌ殿下がいらっしゃるからですね」
「なんで私が関係する」
座っていたライラの声にジャンヌが否定する。
「気分的にはそうですが、戦わなければならない時もあるでしょう」
アレクは笑う。
「じゃあいったいなぜ即座に戦わないと言われたのですか」
最初の生徒が皆を代表して聞いた。
「それは絶対に勝てないからです」
アレクが言う。
その言葉の衝撃に近隣諸国の首脳陣は驚愕した。
(赤い死神が戦う前に諦めるなんてありえるのか。何故だ?)
誰も判らなかった。
(これが判れば自国の為になるかもしれない)
皆興味津々見守る。
「確かに、アレクサンドル殿下にジャンヌ殿下ジャスティン様オーウェン様がいればボフミエ国は強力です。でも、ノルディン帝国も12個師団もあり、戦力も豊富なのでは無いのですか」
生徒が更に畳みかける。
トリポリ国王もそう思っていた。
何故アレクが戦わないと即座に言うのか。
「なんでだと思う」
アレクが逆に聞いた。
「あと、名前の出ていないのは…」
生徒が考える。周りを見る。
戦いに強い人は皆出たし、あと残っている人は。
そこで内務卿の横に座っている黒メガネが目に付いた。
そう言えば見た目は絶対に違うけど、一人だけいた。
でも、この人では無いと思うけど、そう思って生徒は一人の名前を挙げた。
「筆頭魔導師様ですか」
アレクが固まった。
そう完全に。
トリポリ国王はその言葉にアレクが固まったのが信じられなかった。
そう言えば傲岸無比なアレクが人の下にそれも高々マーマレードの一侯爵令嬢の下についていること自体がおかしいのだ。ジャンヌに懸想して付いて来ただけかとも思ったが、そう言えば頭もきちんと下げていた。
私には下げた事も無いのに…。
「えっ私?」
クリスは黒メガネであることも忘れて独り言ちる。
今まで他人事だと何も考えていなかったのだ。
オーウェンの横に座っていたクリスを全員が振り返って見る。
「私ってことは無いですよね。アレク様」
クリスは思わず声を挙げていた。
「では皆さん、質問が無ければこれで終わります」
クリスを全く無視してアレクは退場していった。
その後は呆然としたクリスとそれを興味津々と見守る他国の要人がいた。
この後、クリスには今まで以上に莫大な釣書が届くようになった。
アレクが壇上に上がった。
その日も特別授業で今日はノルディン帝国についてだった。
講師は現皇太子のアレクがするという事で今日も講堂は満員だった。
講堂の後ろには各国からの大使やら、王族やら、わんさか押しかけていた。
特に北方地域、ノルディンと国境を近くするものが聞きつけてきていた。
次期ノルディン国王と言われる。現皇太子が講演するのだ。
彼らにとっては今後の自国の方針を決定する上でもとても大切な事だった。
「今日はアメリア学園長からノルディンの事について話してくれと言われてやってきました」
アレクはそう言うと、周りを見渡す。
「何故か多くの王族の方々や外交関係の方々もいらっしゃいますが、まあ、講義することはそんなに慣れていないので不慣れな事もあるとは思いますが、聞いていただきたい」
そう言うとアレクは講義を始めた。
そして、アレクは皆に知られている帝国の歴史をかいつまんで説明した。
「そう、こうしてノルディン帝国は軍事力の力で、近隣諸国に恐怖を植え付けてここまで大きくなってきたのです」
帝国の歴史のまとめをアレクはした。
「ここまでで何か質問ありますか」
アレクは一同を見渡す。
「すいません。ノルディン帝国が巨大な軍事力を背景に大きくなってきたのはよく判ったのですが、
何故、3年前のマーマレード戦では負けられたのですか」
怖いもの知らずの1年生が質問した。
北方の王族たちは真っ青な顔をしていた。
特にトリポリ国王は自分に被害が無いように、この場を逃げ出そうかとそわそわしだす。
アレク自身はその質問にむせていた。
絶対に聞かれたくない事だった。
だからその話は一つもしなかったのに。
何故触れる。
アレクは睨みつけようとして、クリスと一瞬目が合う。
(やばい)
そう、ここにはクリスがいるのだ。
クリスを怒らせて何かの拍子に戦神シャラザールが来臨することだけは避けたかった。
「うーん、戦いは時の運でもあります。完全だと思っても負ける事はあるんです」
アレクは適当に誤魔化そうとする。
「その戦いの事はいろいろ調べたのですが、何故マーマレードが勝ったか、大切な事が書かれていなくて、当事者の殿下なら何かご存知かなと思いまして」
(そらアそうだろう。戦いに伝説の戦神シャラザールが出てきて勝ったなんて、史書に書ける訳無いし)
とアレクは思った。
「まあ、機密事項も多々存在しますから、そこはそれでご理解ください」
アレクは笑って誤魔化した。
「はい。殿下が帝国の皇帝なら、このボフミエ魔導国と戦うとしたらどのように戦われますか」
別の質問を童顔の生徒の一人が聞く。
「おいっ余計な事を聞くなよ」
トリポリ国王は独り言を言った。
そんな事になったらボフミエへの途上の小国は物資の供給から兵員の供出まで大変なのだ。
良い事は何もない。
冗談でも言ってほしくなかった。
「私が皇帝ならば絶対にボフミエには手を出しません」
一顧だにせずアレクが言った。
アレクらしからぬ返答に周辺諸国の首脳陣は驚く。
赤い死神が丸くなったのだろうか。
「それは今、アレクサンドル殿下がボフミエにいらっしゃるからですか」
生徒が聞く。
「それは無いですね。ノルディンの皇帝は自国の王子でも、必要とあらば切り捨てます」
そうだそうだとトリポリ国王は頷いた。
だからノルディンから出たアレクに恐怖を感じなかったのだ。
もっともアレク自体が赤い死神だという事を忘れていたが。
「ドラフォードの皇太子殿下がいらっしゃるからですか」
他の生徒が聞く。
「まあ、確かに、ドラフォードと我が国は良く争っています。
でも、戦わなければならない時にはドラフォードとも戦ってますよね」
アレクが言う。そしていつも負けているが。
「正義の騎士様がいらっしゃるからですか」
更に別の生徒が聞く。
「確かにジャスティンは脅威ですが、やらなければいけないとなれば戦いますよ」
いい加減この話題はやめて欲しいとアレクはいらだった。
「判った。ジャンヌ殿下がいらっしゃるからですね」
「なんで私が関係する」
座っていたライラの声にジャンヌが否定する。
「気分的にはそうですが、戦わなければならない時もあるでしょう」
アレクは笑う。
「じゃあいったいなぜ即座に戦わないと言われたのですか」
最初の生徒が皆を代表して聞いた。
「それは絶対に勝てないからです」
アレクが言う。
その言葉の衝撃に近隣諸国の首脳陣は驚愕した。
(赤い死神が戦う前に諦めるなんてありえるのか。何故だ?)
誰も判らなかった。
(これが判れば自国の為になるかもしれない)
皆興味津々見守る。
「確かに、アレクサンドル殿下にジャンヌ殿下ジャスティン様オーウェン様がいればボフミエ国は強力です。でも、ノルディン帝国も12個師団もあり、戦力も豊富なのでは無いのですか」
生徒が更に畳みかける。
トリポリ国王もそう思っていた。
何故アレクが戦わないと即座に言うのか。
「なんでだと思う」
アレクが逆に聞いた。
「あと、名前の出ていないのは…」
生徒が考える。周りを見る。
戦いに強い人は皆出たし、あと残っている人は。
そこで内務卿の横に座っている黒メガネが目に付いた。
そう言えば見た目は絶対に違うけど、一人だけいた。
でも、この人では無いと思うけど、そう思って生徒は一人の名前を挙げた。
「筆頭魔導師様ですか」
アレクが固まった。
そう完全に。
トリポリ国王はその言葉にアレクが固まったのが信じられなかった。
そう言えば傲岸無比なアレクが人の下にそれも高々マーマレードの一侯爵令嬢の下についていること自体がおかしいのだ。ジャンヌに懸想して付いて来ただけかとも思ったが、そう言えば頭もきちんと下げていた。
私には下げた事も無いのに…。
「えっ私?」
クリスは黒メガネであることも忘れて独り言ちる。
今まで他人事だと何も考えていなかったのだ。
オーウェンの横に座っていたクリスを全員が振り返って見る。
「私ってことは無いですよね。アレク様」
クリスは思わず声を挙げていた。
「では皆さん、質問が無ければこれで終わります」
クリスを全く無視してアレクは退場していった。
その後は呆然としたクリスとそれを興味津々と見守る他国の要人がいた。
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