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第七章 魔王復活

魔王はクリスに降伏の使者を送りました

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国王と王妃を叩っ切った血まみれの剣を握って男は立っていた。
多くの周りの者は腰を抜かしていた。

男は宰相のアラクシに剣を向けた。

「ヒィィィぃ」
アクラシは思わず後ずさった。

「貴様も死にたいか」
男はにやりと笑って言った。

アクラシは首を振るしか出来なかった。

「良かろう。面倒だ」
男は剣をしまった。

「アクラシ。予の為に直ちに国をまとめよ。反抗するものは殺せ」
「はっ」
アクラシは恐怖に震えた。
こいつは今までのカーンではない。
何か別のものだ。
それもとてつもなく恐ろしい。

思わずひれ伏していた。

「ふんっ。それがうまくいったら、貴様の大好きな陰謀を思う存分震える舞台を整えてやるわ」


*****

というクーデターから1ヶ月が経った。
アクラシは恐怖に震えながら、あっという間にモルロイの国をまとめた。
口うるさい貴族を2、3カーンによって殲滅させただけで国内は恐怖に震えてカーンに従った。

カーンはモルロイ帝国の復活を掲げて各国への侵略戦に臨む方針を立てた。
まずそのターゲットを復興間もないボフミエに向けた。

そして、手始めに行ったカーンによるボフミエ偵察戦はうまくいったのだったが、
「その後の小娘に対しての扇動はうまくいかなかったか」
カーンは笑って言った。
「はい。申し訳ありません。筆頭魔導師への住民の不満を高める事は失敗いたしました」
「まあ良かろう。一度でうまくいく訳は無かろう。
テムゲ」
カーンは弟を呼んだ。

「はっ」
母を虐殺されたテムゲだったが、どうしようもなくカーンに付き従っていた。
「ボフミエに行って小娘にボフミエ筆頭魔導師の地位を余に譲れと伝えよ」
「しかし、」そのような事を認めましょうか」
テムゲは反論した。
「何だあの小娘が怖いのか」
「いえっそのような」
テムゲは慌てた。
何をするか判らないカーンの方が恐ろしかった。

「気にせずとも貴様には何もしないよ。あいつらはな。所詮おままごと王朝だ。
こう言え。
『ボフミエ国の筆頭魔導師は世界最強魔導師がなるはず。
余の方が強い事はこの前のカロエ戦で証明したにもかかわらず、いつまでその地位に固執しているのかとな
。ゆずなない場合は次はワットの村に災いをもたらす』と伝えよ」
「はっ」
テムゲは平伏した。

「このモルロイ帝国の威信を辱めるなよ。傲慢な態度で命令しろ」
「しかし、そのような事をしては」
「赤い死神に殺されるか」
テムゲは黙り込んだ。
赤い死神はカーン程では無いにしても何をするかは判らなかった。
「筆頭魔導師の前では何もできんよ。所詮赤い死神は今回倒した正義の騎士レベルだ」
カーンは笑って言った。

「行け。テムゲ」
「はっ」
テムゲは平伏すると出て言った。


「カーン様。テムゲ様は生きて帰って来れますかな」
それを見送ったアクラシが聞いた。

「ま、殺されたらそれまでの男だ。
クーデターで殺さずにここまで生かせてやったのだ。
感謝しても恨まれる事にはなるまい」
カーンは当然のことのように言う。
アクラシはいや、絶対に恨むと思ったが、口には出せない。

「まあ、もし赤い死神に殺されたら余が仇は取ってやる」
カーンは笑って言った。
「まあ、気にするな。赤い死神風情、正義の騎士とか言うやつとそんなにレベルは変わらんよ。
余の敵ではない」
カーンは言い切った。
「うまくいってボフミエを制圧出来たらテムゲにボフミエを治めさせてやっても良い」
カーンは笑って言った。
「ボフミエの小娘さえ倒せば後は余の敵になるようなものは無い。世界をモルロイ帝国が支配するのだからな」
カーンは立ち上がって周りを睥睨した。
「モルロイ帝国の為に」
「モルロイ帝国の為に」
全員の唱和が宮殿内に響き渡った。
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