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第七章 魔王復活

クリスは遺体安置所で詰められるが、周りのみんなに救われます

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モルロイ暴虐王襲来とジャスティン重症の報はボフミエ国を駆け巡った。

「ジャスティン!」
クリスはジャスティンの病室の扉を蹴破らん勢いで飛び込んできた。

「クリス様。お静かに」
見ていた医者がクリスに注意する。
「症状は」
声を小さくしてクリスが問う。
包帯だらけのジャスティンはベッドの上で眠っていた。

「予断を許しませんが、おそらく命に問題は無いかと」
主治医は答える。
「そう、良かった」
クリスは安どした。
「まあ、ジャステインだからな。元々丈夫だ」
先に来ていたジャンヌが言った。

その時ジャスティンは目を開けた。
「ジャスティン」
思わずクリスが駆け寄る。
「クリス様。すみません」
苦しそうにジャスティンは言った。
「何言っているのよ。ジャスティン。あなたはよくやったわ」
涙目でクリスは言った。
「し か し、多くの 犠 牲 者を」
途切れ途切れにジャスティンが苦しそうに言う。
「ジャステイン様。今は話さない方が」
主治医が注意する。
「ジャスティン。今は話さないで」
クリスも言う。
「すいません」

クリスは病室を後にした。

その後、現場にロルフに案内される。
「ここが現場です。3千人の若者が試験を受けに集まっておりました。
騎士団は500名。ジャスティン様の自爆攻撃でカーンは撃退いたしましたが、受験生含めて106名が殺されました」
クリスは一輪の花をその場に置く。
そして、その場に膝まづいて祈る。

「こんな頼りない筆頭魔導師でごめんなさい」
涙を流してクリスは祈った。

「ここに控えている、ビアンカ・ハイニッヒがカーンの衝撃波を反射によって防ぎ敵魔導師を5名倒してくれました」
跪いているビアンカの元にクリスは跪く。

「危険を冒して皆を守ってくれてありがとう」
その手を押し頂いてクリスが言う。
「そ、そんなめ、めっそうもございません」
緊張のあまり噛みながらビアンカは応えた。
国のトップからかしずかれるなどとんでもない事だった。
というか、ビアンカは絶対にこんな目立ったことはしたくなかった。
周りからは皆称賛の目で見られる。
すぐにも逃げて帰りたかった。

「あなたの勇気とその行動は本当に尊いわ。あなたのおかげで何人もの人が助かった。
本当にありがとう」
クリスは頭を下げる。

「そんな、ひっ筆頭魔術師様」
頭を下げられてビアンカは固まる。
「お友達を助けるためにやったって聞いたわ。本当は怖かったでしょ」
「いえ、もう無我夢中で。何も考えていませんでした」
「そうよね。そんな時は何も考えられないわね。私の初陣も15の時だった。
弟を守るために何も考えずに、アレクサンドル殿下の前に飛び出したの」
昔を思い出すようにクリスが言った。

ノルディン侵攻戦の時だ。
赤い死神の前にクリス様は飛び出されたのか。

周りの者は驚いてクリスを見ていた。
よく無事だったものだと。
というか何故、赤い死神がクリスの下にいるのかもその時の事が繋がっているのだろうと漠然とロルフは思った。
もっともアレクはクリスがシャラザールの化身だから付き従っているだけなのは知らなかった。

「クリス様。そろそろ次に行かれませんと」
アルバートがが声をかける。

「判ったわ」
クリスは立ち上がった。

「ビアンカ。また、国都でお会いしましょう。あなたの活躍を期待しています」
「はい」
ビアンカは頷いてからしまったと後悔しても遅かった。
目立ちたくなかったのに、国都行きが決定してしまってビアンカは呆然とした。


遺体安置所は取り乱した遺族らによって悲しみが満ちていた。
遺体の多くは黒焦げだっり内臓破裂していたり、五体満足なきれいな死体はほとんど無かった。
中に入るとその様子にクリスらは唖然とした。

「なんで試験に行って死ななければならないんだ」
死体に向かって泣いていた男の一人が叫び出した。

「試験は強制的に受けさせられるからって言っただけなのに、こんな死体になってで戻って来ないなんてどういう事だよ。筆頭魔導師様よ」
男はクリスに迫ろうとしてアルバートに止められる。

「あんたがこんな試験をしようとしたからこうなったんだよ」
「何を言っている。試験とモルロイの襲撃は別だ」
「アルバート」
反論しようとするアルバートをクリスが止める。

「申し訳ありません」
クリスが頭を下げる。

「お前がこんな試験しようとするから」
「うちの人を返して」
「お父ちゃんを返して」
一斉に周りの遺族が詰め寄る。
「落ち着け」
それをアルバートが障壁を築いて防ぐ。

「クリス様」
イザベラが促す。
クリスは目をつぶって祈る。

「今更祈ってくれても息子は帰って来ねえよ」
男が言う。

「お前ら誰に向かって言っているんだ」
安置所にいた兵士の一人が叫んだ。
「皆飢え死にするところをクリス様が救ってくれたんだぞ。
そのクリス様になんてこと言うんだ」
その言葉に皆黙りこくった。

「元々飢饉はクリス様は何の関係も無いのに、命張ってGAFAの横暴を抑えて頂けたんだぞ。
皆の飢えが救われるならこの命をGAFAに捧げても良いってな」
兵士が心の底から叫んでいた。

「ありがとう。でも、今はかばってくれなくていいわ」
クリスが言う。

「良くはありませんよ」
横にいた女が叫んだ。
「前の皇帝の暴虐も私たちはだれも止められなかった。
あんたたちも止められなかったじゃないか」
クリスに喰ってかかった男たちに女が言う。

「それを皇帝に攫われて連れて来られたクリス様が皇帝をやっつけて助けてくれたんです。
あなたが。このままいたら死ぬしかなかった所をあなたが助けて頂いたんです」
「そうです。本来この国の為に何もする必要のないあなた様が私たちを助けて頂いたんです。
聖女クリス様が」
「今回の件も悪いのはどう考えても攻撃してきたモルロイです」
「私たちは恩知らずまではありません」
「あなたには助けてもらってばかりだ」
周りにいた人々が次々に言う。
遺体の前で泣いていた人もだ。

「モルロイに攻撃するなら、ご命令下さい」
「絶対にモルロイは許しません」
「そうです」
「クリス様」
「聖女クリス様」
皆あっという間に憎しモルロイとなる。

「暴虐王カーンに死を」
「打倒モルロイ」
「モルロイに鉄槌を」

クリスは皆の叫びを呆然としてみていた。
そして、多くの人がこんな事があったにもかかわらず、自らの事を応援してくれることに感激してた。
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