上 下
181 / 446
第七章 魔王復活

婚約者に振られて絶望するカーンの目の前に弓矢が突き刺さりました

しおりを挟む
今章は魔王復活です。
シャラザールによって宇宙のかなたに飛んで行ったはずが…
ボフミエ前皇帝の悲願が成就
そして騎馬帝国の復活なるか

しかし、その馬蹄の前にはクリスらのボフミエ魔導国が

そう復活した最強の魔王 対 戦神シャラザール
とどちらが強いのか
乞うご期待乞う続話
頑張って毎日更新目指します 

**************************************************

モルロイ国はノルディン帝国とドラフォード王国の狭間の草原地帯の小国の1つだった。
騎馬の国として付近に名を成していた。
遙か大昔には大騎馬帝国を築いたこともあったらしい。

今、その第一王子のカーン・ハンは途方に暮れていた。

母はカーンが若くして亡くなり、その後第二夫人だった豪族の娘のオユンゲレルが正妃となった。
その継母は実の息子のテムゲを愛しており、折に触れてテムゲを皇太子にしようと画策していた。
国内の豪族の多くは第二王子に組しており、カーンにとっては日に日に立場が苦しくなっていた。
毒殺されそうになったことは枚挙に暇が無いほどで、毒に耐性のある体なのでまだ生きているにすぎなかった。
最近は陰謀の首魁とも目される首相のアラクシ・テギトも第二王子派になって、次々に陰謀を張り巡らせているという噂もあった。
カーンの味方の豪族も次々に第二王子派に寝返りだしている始末だった。

王宮の庭の池を眺めてカーンはため息をついた。
元々カーンは馬の扱いは慣れていても、陰謀などはからきしダメだった。
人の機微を知ることすら難しく、叩きあげて今の地位にいるアラクシに勝てる訳も無かった。
このままでは王子を廃嫡されるのも時間の問題だった。
しかし、今更皇太子にならないと言ったところで生かしてくれるとは思ってもいなかった。

「オルリコの為には皇太子でいるしか無かろう」
カーンはぽつりと言った。
美しい黒髪にすらりとした体型の美女オルリコは豪族アルチダイの一人娘でカーンの婚約者だった。
そのオルリコを弟のテムゲも狙っているようだった。
オルリコはいつもテムゲにはつれなくしていたが、カーンが皇太子を降りればテムゲの物になるのは明らかだった。
それだけはカーンは許せなかった。

そこに人の気配がして思わずカーンは草陰に隠れた。

最近は何かと物騒で用心に越したことは無いはずだ。

しかし、池の対岸に現れた2人を見てカーンは目を見開いた。
そこには愛しきオルリコとテムゲが連れ立って歩いて来たのだ。
「まさか、そんな」
カーン荷は目の前の事が信じられなかった。
「いや、何か話をしに来ただけだろう」
呟いてみるが、二人が人目を避けて話す理由など何があるというのだ。


「いつまでも躊躇っているとオルリコ様もテムゲ様に取られてしまいますぞ」
側近のガンホエックが言っていたことが思い起こされた。

でも、オルリコは
「カーン様を信じて待っております」
と言ってくれた。それを信じていたのに。

オルリコとテムゲは何か話し合っているようだった。
何故かオルリコが笑っていた。
今はめったにカーンの前で笑わないのに。
そして、カーンは次の瞬間に絶句した。

テムゲがオルリコを抱きしめていたのだ。
それを見た瞬間カーンの頭の中は真っ白になった。

そんな馬鹿な。オルリコだけは誰が何と言おうと絶対に最後まで付いて来たくれると思ったのに…

その場を足早に立ち去ったカーンはやみくもに駆けた。
気付くと来た事も無い寂れた場所に来ていた。
王宮のはずれの林の中だった。

自分に力が無いばかりに、友人知人は去って行った。
そして、今最愛の恋人までも。

カーンは絶望のあまり目の前が真っ暗になっていた。

ビシッ。

そのカーンの目の前の太い木に弓矢が深々と刺さった。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

拗れた恋の行方

音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの? 理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。 大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。 彼女は次第に恨むようになっていく。 隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。 しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。

旦那様が遊び呆けている間に、家を取り仕切っていた私が権力を握っているのは、当然のことではありませんか。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるフェレーナは、同じく伯爵家の令息であり幼馴染でもあるラヴァイルの元に嫁いだ。 しかし彼は、それからすぐに伯爵家の屋敷から姿を消した。ラヴァイルは、フェレーナに家のことを押し付けて逃げ出したのである。 それに彼女は当然腹を立てたが、その状況で自分までいなくなってしまえば、領地の民達が混乱し苦しむということに気付いた。 そこで彼女は嫁いだ伯爵家に残り、義理の父とともになんとか執務を行っていたのである。 それは、長年の苦労が祟った義理の父が亡くなった後も続いていた。 フェレーナは正当なる血統がいない状況でも、家を存続させていたのである。 そんな彼女の努力は周囲に認められていき、いつしか彼女は義理の父が築いた関係も含めて、安定した基盤を築けるようになっていた。 そんな折、ラヴァイルが伯爵家の屋敷に戻って来た。 彼は未だに自分に権力が残っていると勘違いしており、家を開けていたことも問題ではないと捉えていたのである。 しかし既に、彼に居場所などというものはなかった。既にラヴァイルの味方はおらず、むしろフェレーナに全てを押し付けて遊び呆けていた愚夫としてしか見られていなかったのである。

婚約破棄でいいですよ、愛なんてないので。

ララ
恋愛
学園の卒業を記念するパーティーで、婚約者は私に婚約破棄を叫ぶ。 杜撰な理由に呆れかえる私は愛を無くし、婚約破棄を了承するが……

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

[完結]アタンなんなのって私は私ですが?

シマ
恋愛
私は、ルルーシュ・アーデン男爵令嬢です。底辺の貴族の上、天災で主要産業である農業に大打撃を受けて貧乏な我が家。 我が家は建て直しに家族全員、奔走していたのですが、やっと領地が落ちついて半年振りに学園に登校すると、いきなり婚約破棄だと叫ばれました。 ……嫌がらせ?嫉妬?私が貴女に? さっきから叫ばれておりますが、そもそも貴女の隣の男性は、婚約者じゃありませんけど? 私の婚約者は…… 完結保証 本編7話+その後1話

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

婚約は破棄なんですよね?

もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!

処理中です...