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第六章 クリス ボフミエ皇帝?になる

ジャルカが魔法省の出前授業を行いました

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翌日からはさすがにクリスにちょっかい出すものは0になった。
赤い死神に説教垂れたのだ。
ブス眼鏡が誰なのか大半の者が理解した。
ノルディン帝国を知る者は皆呆然としていた。
あの傍若無人な赤い死神がホフマンに対して謝ったのだ。
クリスに言われて。
皇帝相手でも物おじしないのに、何故か筆頭魔導師を恐れている。
何故だと。
余程筆頭魔導師は魔力が強いのかと。
そもそも、ノルディンとドラフォードの2大国の皇太子に、中堅国のマーマレードとテレーゼの皇太子もクリスの傘下に入っているという事実がクローズアップされて、更に大挙して留学生が訪れる事になるのはもう少し後だが。


そして、今クリスは驚いていた。
クリスの机の上にうずたかく手紙の山が出来ていたのだ。
「アルバート、これは何?」+
思わずクリスは聞いていた。
「クリス様宛のファンレターではないかと」
アルバートが答える。
「私宛のファンレター???」
クリスは絶句した。
マーマレードの時は皇太子の婚約者に手を出そうという輩はいず、手紙を渡されることは無かった。
また婚約破棄の後は王弟叛逆事件などでクリスは聖女様みたいな扱いとなっていたが、神聖すぎて恋愛対象にはなれず、また、ドラフォードの皇太子が必死にアプローチしていたしジャンヌ皇太子の妹扱い的なところもあって、ウィルの超シスコンやらでそれぞれのガードも固くこんなことにはならなかった。
今回はさえない黒メガネ姿でその容姿を誤魔化しているから大丈夫と思っていたのだが。

「昨日のアレクへの態度で正体がばれてしまったのでは」
「バレたら筆頭魔導師は恋愛対象になるの?」
アレクにクリスが聞く。
「まさか。ただ、クリス様は妙齢の見め麗しき女性と言うのは万国共通の認識ですから、姿良し、地位良し、という事でボフミエの貴族や各国王族の子息のターゲットになられたのではないでしょうか」
「でも、これ女の子からよ」
「えっ?」
クリスの言うとおり、3分の一くらいは女性からだった。
「なになに、あの鬼と恐れられた赤い死神と言われるアレクサンドル皇太子に対して恐れる事も無く叱り飛ばされたお姿に感激しました…」
「こっちはアレク様を足蹴にされて踏みつけられる様はまさに私の天使でした」
「ちょっと待ってよ。私はアレクを足蹴にしてもいないし踏みつけてもいないわよ」
憮然としてクリスが言う。

「あっクリス様よ」
「クリス様」
「キャー、クリス様よ」
教室を覗いた生徒がクリスを見つけて声を出すと、廊下から男女合わせた生徒が大挙して駆けこんで来た。
あっという間に囲まれたクリスらは身動きもできなくなった…


本日も急きょ特別授業が行われることになっていた。
クリスが昨日の席に座っているとまたオーウェンがやってきた。
「オウ、何回も言うように私の隣に来ないで下さい。目立ちますから」
クリスが文句を言う。
「良く言うよ。朝から大人気だったんだって」
笑ってオーウェンが言った。
「その一因はあなたがこうやって隣に座るからでしょ」
「変だな。ドラフォードの皇太子がこうしてアプローチしているのに、なんで他の奴がアプローチしてくるんだろう。ドラフォードほどの大国なんてノルディンくらいしかないのに…」
「あなたではクリス様に全く相手されていないからまだ他の者でも可能性があると思われたのではないですか」
アルバートが話に割り込んでくる。
「そんな、こんなにアプローチしているのに」
オーウェンはクリスにすり寄る。
「オウ、近いです」
クリスがオーウェンを押し返す。
「そんな悲しい…」
オーウェンが泣きまねをする。
「オウ、なんかわざとらしすぎます」
クリスが呆れて言う。

「えっ」
「きゃっ」
とその二人の間こにウイルが転移してくる。

「二人とも近すぎる」
ウィルが言う。
「ウィル狭いところに転移して来ない」
「そうだ。ウィル。あんまり姉の恋愛を邪魔するとクリスに嫌われるぞ」
「えっそんな事無いですよね。姉様」
オーウェンの言葉に驚いてウィルが言う。
「オウとは別に恋愛とか関係ないから」
クリスが赤くなって言う。

「そうですよね」
「クリス様。花束です」
「愛の手紙です」
「受け取ってください」
クリスの言葉にあっという間に、二人を見ていたその他大勢が押し寄せる。

とその前に、いきなり、今度はジャルカが転移してきた。

「げーーーー」
男の一人が思わずジャルカの顔にキスしそうになって跳び退った。
「爺やが出た」
「誰が爺やですかな。本当に失礼な」
ジャルカが言う。
「女のファンも多いと聞いてせっかくクリス様の前に転移してきたのに、男が出てくるとは…」
ボソリとジャルカが言う。
「ジャルカ様。何か変なこと言われました」
「いえいえ、クリス様の聞き違いですじゃ」
ジャルカは首を振るとみんなに席に着くように言う。

「皆さん。、内務卿、外務卿が人材募集の為に、特別授業をされたとのことで、
魔法省から派遣されたしがいない魔導師のジャルカです。
ちなみに、前皇帝アーベルが古の3魔導師を封印していた魔法の塔を破壊したのはこの私ジャルカです。
ちなみに、そこにいらっしゃる外務卿も魔導師団長も破壊することはできませんでしたが…」
にやにやしてジャルカは言った。
アレクとジャンヌは悔しそうにジャルカを睨みつけた。
「嫌味たらしい自慢は良いからさっさと授業をやれよ」
ぼそっとジャンヌは言う。

「質問ですが、と言う事はジャルカ様がボフミエの最強魔導師という事ですか?」
魔導コースの女の子が質問した。
「いやいや当然トップは世界最強魔導師であらせられる筆頭魔導師様です」
皆の視線が一斉にクリスに向かう。
クリスは必死にそれは違うと手を振っていた。
「私はその次ですな」
ジャルカは高笑いをした。
アレクとジャンヌは唇を噛んだ。
「で、私が束ねておりますのが、魔法省です。
ボフミエと言えば魔導国基本は世界の魔導師を束ねる必要がございます。
しかし、前皇帝の悪逆非道のせいで優秀な魔導師は世界各地に散って今やほとんどいないというのが実情です。そこでここにいらっしゃる優秀な魔導師の皆さんには是非とも魔法省に入って頂きたいのです」
ジャルカは一同を見渡した。
「そして、ボフミエ国が苦労した食糧問題と金銭問題。
これの解決の一助に魔法省とマーマレードの科学技術省が共同で開発したのがスカイバードです。
これによってドラフォードは2万トンの食糧追加を
テレーゼは500万枚の金貨を支払って頂けると言われました。
実物はこれです」


「キャー――」
「ギャッ」
ジャルカが手で合図をすると、突風が講堂を吹き荒れていきなり、スカイバードの本体が転移してきた。講堂の天空に浮かび上がる。
皆落ちて来そうなスカイバードに驚いていた。
「これはナッツァとドラフォードのハイリンゲンを2時間で結ぶ夢の乗り物です。
これは魔導と科学の最新技術の結晶です」
ぱちんと手で合図するとスカイバードの本体は消えて今度は映像が映し出される。
発射台から打ち出されるスカイバードが映っていた。
顔をゆがめるウィルとアルバートの姿が映っていた。
二人は嫌そうな顔をする。
方や談笑しているクリスら女性陣の姿が。
「見られましたか。ウイル君やアルバート君は顔をゆがめていましたね」
笑ってジャルカが言う。
「その一方でクリス様たちは笑って談笑されていました」
「何が違うんですか」
先ほどの女生徒が聞く。
「よく聞いていただけました。これが魔法省が開発した衝撃吸収装置の力なんです。
ウイル君らはこれ無しで乗りました。しかし、客室はこの衝撃吸収装置で守られているんです。
この衝撃吸収装置は最新の魔道具として魔法省の総力を挙げて開発されました。
是非とも優秀な生徒は魔法省に来て、世の中に役立つ技術開発にいそしんで頂ければと思います」
それからジャルカは生徒たちの質問攻めにあっていた。
特に女の子の質問には懇切丁寧に答えていた。

「面白くない」
ジャンヌやアレク等は決していい思いはしていなかったが…。

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ここまで読んで頂いてありがとうございました。

今日あと2回更新して今章終了です。

その後少し休みます。

後少しお付き合い下さい。
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