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第六章 クリス ボフミエ皇帝?になる

クリス暗殺2 クリスは怒りの雷撃を放ちました

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その直前、不吉な予感がクリスの脳裏に届いた。
ウィルが目を上げる。

「何か来るわ」
クリスが叫ぶ。
前の馬車とクリスの馬車の真ん中で爆発が起こる。

悲鳴が上がる。
馬車が弾き飛ばされる。
ウィルはその瞬間にクリスを抱えて転移していた。
馬車は爆風に巻き込まれて地面を何回も転がった。
そして、それをウィルに抱きかかえながら空中からクリスは見ていた。

短剣を抜いた黒装束の男らが周りから群がって襲い掛かって来た。
少し離れた地上に降り立ったウィルは衝撃波を放って3人を弾き飛ばす。
少し離れていたアルバートは馬を駆って男たちの中に切り込んでいく。
瞬く間に3人を叩っき切る。
ウイルは剣を抜いて、クリスを守る。
瞬く間に3人を葬っていた。

「メイ!」
護衛していたウィルらはクリスの悲鳴に驚いた。
クリスの瞳は壊れた馬車から放り出された血だらけのメイの姿に釘付けになっていた。
「メイ!」
悲鳴を上げて慌ててクリスは駆け寄ろうとする。
「姉様」
「クリス様」
慌ててウィルらはクリスを止めようとするがその手をかいくぐってクリスは駆け寄っていく。
その途中に剣を構えた男がいたが、クリスは見もしていなかった。
男はにやりと笑って剣を振ろうとする。
ウィルが慌てて衝撃波を送ろうとするが間に合わない。
アルバートの剣も届かない。
二人は頭の中が真っ白になった。

しかし、男はクリスに剣を出そうとした瞬間ぼろ布のように弾き飛ばされていた。
メイを見て更にメイに剣を突き刺そうとした男も次の瞬間に弾き飛ばされていた。
必死に駆け寄るクリスの前にいた黒ずくめの男たちは次々に弾き飛ばされていく。
「メイ!」
クリスがメイを抱き上げたが、メイは反応を示さなかった。
「メイ!」

クリスの脳裏には昔からクリスの身を守ってくれたメイの事が走馬灯のように思い出された。
学園でもいろいろと面倒を見てくれた。姉のような存在だった。
優しくて強かったメイが血まみれで倒れている。


「死ね――」
黒男に交じっていたアマダお抱えの魔導士が渾身の衝撃波をクリスに放つ。
必殺の一撃だった。
普通はどんな者でも四散するはずだった。
それも後ろからだ。

しかし、衝撃波がまともに後ろから命中したはずなのに、クリスはびくともしていなかった。

ゆっくりとクリスは後ろを振り返る。

「貴様か!」
クリスは血走った目でその男を見た。

「ヒェェェ」
クリスに睨まれて男は悟った。
自分は絶対に逆らってはいけない者に逆らってしまったのだと。
次の瞬間に雷撃が男を直撃し黒焦げになって男は倒れていた。

「ゆ、許さない」
クリスは怒っていた。
自分がメイを守れなかったことも。
こんなところで襲撃されることを予知していなかったことも。
GAFAに対する対応が甘すぎたことも。
自分に対しても許せなかった。

クリスの周りの空間が振動する。
そして、クリスが金色に光った。
次の瞬間、クリスから雷撃が天空に向けて放たれた。

襲ってきた男たちは、その時には立っているものは誰一人残っていなかった。




「南部で暴動を起こすのには成功しましたぞ」
バロン・アントが喜んで魔道具に話していた。
「さすが、アント殿。まあ、我らに逆らったムカつくボフミエの小娘も、今頃はぼろ布のように我らの手によって死体となっておりますわ」
ランベルトが笑って言った。

「あの小娘も最初に提案したように儂の妾になっておればこのような事にはなっておらなんだものを」
「飢えた男共を100名ほど送り込みましたからな。下手したら凌辱の限りを尽くされて惨殺されておるかもしれませんな」
GAFAの代表をする4人の男たちは下卑た笑みを浮かべて笑い合っていた。

彼らは彼らの行動が彼らの言う小娘の逆鱗に触れたことを知らなかった。
そして彼女が人が絶対に逆らってはいけない存在だったことも。


アマダの館から見える空は晴れていた。
雲一つ無い空は青かった。

しかし、その空を突如切り裂いて雷撃が走った。
ランベルト・アマダは窓から雷撃が自分に向かってくるのを見たかどうか。
恐怖に顔を引きつる間も無かった。
それはアマダの贅を尽くした豪邸を一瞬にして破壊、灰燼と化していた。
そして、その雷撃は残りの3人にも襲い掛かっていた。

この日、世界を支配しようとしていたGAFAの会頭達は一瞬にして地上から掻き消えていた。
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