上 下
138 / 444
第五章 ボフミエ皇帝誘拐する

ボフミエ最終戦5 戦神シャラザール怒りの鉄拳がさく裂しました

しおりを挟む
「そこの豚皇帝。余にこんな気持ち悪いものを突き付けるなどどういう事だ」
怒り狂ってシャラザールは皇帝に近寄る。

「ひいいいい」
皇帝アーベルは怒り狂ったシャラザールに戦慄した。
(殺される)
思わず、後ずさりするがその足を踏みつけられて止まってしまった。
(これは小娘ではない)
(何だ?)
今まで体験した事も無い巨大な力の持ち主が目の前にいた。
あまたの魔導士を見てきたアーベルにも目の前の者がただならぬ力を、それも圧倒的な力を持っているのははっきりと判った。
もうアーベルには恐怖しかなかった。

「このような胸糞悪いものなど、こうしてやる」
シャラザールはその石を鷲掴みすると空のかなたに向かって思いっきり投げ捨てていた。
石は一瞬で成層圏に向けて一目散に飛んで行った。

アーベルはシャラザールの視線が石を追って自らから外れてほっとするが

「ギョエエエエ」
急所を思いっきり踏まれて叫んでいた。

そしてその顎を思いっきり蹴り飛ばされる。

「陛下」
サロモンは思わずそのアーベルに駆け寄るが
「退けっ」
シャラザールの拳がサロモンに触れるとサロモンは張り倒されて、いや、弾き飛ばされていた。
そしてそのまま起き上がれなかった。

シャラザールは蹴り飛ばした皇帝の胸倉を掴んで持ち上げて張り倒す。
皇帝は歯が10本ほど飛び出して見るも無残な血の塊と化して地面にのびていた。
ヒクヒクと震えながら。

「口ほどにも無い。そのような気概で余に逆らうなど1000年早いわ」

「ギョエ」
アーベルはそのシャラザールに腹を踏みつけられて声をあげる。
顔中血まみれにして気絶していた。

ボフミエ軍の他の魔導士は驚愕のあまり1歩も動けていなかった。

「出た!シャラザールが出た」
日頃の行いからは絶対に見られないほど取り乱してアレクは小さくなって震えていた。
来るんじゃなかったとアレクは思った。
しかし、こんな事で後悔するなどまだまだ早かった。

「ジャンヌ!」
シャラザールが不機嫌そうに叫んでいた。
「はい」
思わず姿勢を正してジャンヌが返事する。

「貴様。何故あのような反吐の出そうなものを余に近づけさせた」
「えっ。いやそれはそこの豚に聞いていただきたく…」
「その豚が近づく前になぜその豚もろとも処分しなかったのだ」
理不尽な事をシャラザールは言う。
「それはあなた様が捕まっていたから…」
ジャンヌは言い訳しようとした。
「甘い!その豚など隙だらけであったではないか。
豚が剣を娘に突き付けていようが、豚が動き出す前に豚を殺せば済んだ話だろう」
平然とシャラザールが宣う。
「えっ」
ジャンヌは思わず声をあげた。そんなときに動けば下手したら皇帝にクリスが殺されていただろう。
もっともナイフで突かれてもシャラザールの憑代が死ぬわけはないのかもしれないが…

「まだまだ全然なっておらん」
「そんな、無茶な」
ボソリとジャンヌが文句を言う。
「何か言ったか」
きっとしてシャラザールが睨みつける。
余程その突き付けられた石が嫌いだったらしい。
前回出現した時とは比べ物にならないくらいシャラザールは機嫌が悪かった。

「そこのお前」
シャラザールはジャスティンを指さす。

「今の遅い動きは何だ。なぜ。クリスが捕まる前にこの豚を処分しなかった」
「申し訳ありません」
素直なジャスティンは頭を下げた。
ジャスティンには彼女のこの信じられない魔力の強さからも何かが来臨したのは理解できた。
「そう、まだまだ力不足だ」
そして次にウィルを見る
「はっ申し訳ありません。是非ともご教授頂ければ幸いです」
「余っ余計なことを」
ジャンヌが慌てて口をふさごうとしたが、もう遅い。
「そうか、その謙虚な姿勢や良し」
シャラザールは機嫌が少しはなおる。

「そこのお前」
「姉様…」
ウィルは信じられなかった。
姉様が変わっている。
今はなしているのは姉などではなかった。
ウィルには魔王のようなまがまがしいものに感じられた。

「3年前はまだ子供だったから許したが、今も全然なっていないな。
そんななまくら刀で本当に姉を守れるのか」
「そ、それは」
ウィルはまだ頭がついていかなかった。
姿はどう見ても姉だ。しかし、この感じは全然違った。

「それとノルディンの犬」
アレクに叫ぶ。
「はい」
直立不動でアレクが立つ。
ウィルはアレクが何を恐れていたか初めて判った。
かれは姉では無くてこの女を恐れていたのだ。

「3年前から全然腕が上がっていない」
そしてニヤッと笑った。

「貴様ら全然なっておらん。今から余が稽古をつけてやろう」
「ヒィィィ」
アレクが思わず声を出す。

「そこの兵士ども、貴様らもだ」
何のことか何もわからず呆然としていたドラフォード軍の兵士たちもやっとそこに悪魔がいるのが判った。
おそらく今地上にいる者の中で最強の悪魔が目の前にいた。

「そんな」
一人の兵士が思わず声をあげていた。

「反論は許さん。貴様ら全員で余にかかってこい」
シャラザールの目は不気味に光った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

魔力無しの私に何の御用ですか?〜戦場から命懸けで帰ってきたけど妹に婚約者を取られたのでサポートはもう辞めます〜

まつおいおり
恋愛
妹が嫌がったので代わりに戦場へと駆り出された私、コヨミ・ヴァーミリオン………何年も家族や婚約者に仕送りを続けて、やっと戦争が終わって家に帰ったら、妹と婚約者が男女の営みをしていた、開き直った婚約者と妹は主人公を散々煽り散らした後に婚約破棄をする…………ああ、そうか、ならこっちも貴女のサポートなんかやめてやる、彼女は呟く……今まで義妹が順風満帆に来れたのは主人公のおかげだった、義父母に頼まれ、彼女のサポートをして、学院での授業や実技の評価を底上げしていたが、ここまで鬼畜な義妹のために動くなんてなんて冗談じゃない……後々そのことに気づく義妹と婚約者だが、時すでに遅い、彼女達を許すことはない………徐々に落ちぶれていく義妹と元婚約者………主人公は 主人公で王子様、獣人、様々な男はおろか女も惚れていく………ひょんな事から一度は魔力がない事で落されたグランフィリア学院に入学し、自分と同じような境遇の人達と出会い、助けていき、ざまぁしていく、やられっぱなしはされるのもみるのも嫌だ、最強女軍人の無自覚逆ハーレムドタバタラブコメディここに開幕。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結済み】だって私は妻ではなく、母親なのだから

鈴蘭
恋愛
結婚式の翌日、愛する夫からナターシャに告げられたのは、愛人がいて彼女は既に懐妊していると言う事実だった。 子はナターシャが産んだ事にする為、夫の許可が下りるまで、離れから出るなと言われ閉じ込められてしまう。 その離れに、夫は見向きもしないが、愛人は毎日嫌味を言いに来た。 幸せな結婚生活を夢見て嫁いで来た新妻には、あまりにも酷い仕打ちだった。 完結しました。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

処理中です...