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第五章 ボフミエ皇帝誘拐する

クリス 魔人を一撃で倒しました

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「何だと」
慌てて剣を掴んでジャスティンは駆けだす。
クリスもそれに続く。

村は逃げ惑う人々とそれに対して襲い掛かる兵士たちで大混乱だった。

ジャスティンはボフミエ軍しかいないところで剣を一閃する。
兵士たちが10名ほど吹き飛んだ。

兵士たちは慌ててジャスティンに向かう。
しかし、兵士たちでは何人かかってもジャスティンは止められなかった。
次々に地面に這っていく。


「貴様。ジャスティン」
司令官らしき者が叫ぶ。
「貴様が司令官か」
剣を構えてジャスティンは一歩前に出る。
男は下がる。

「魔人をジャスティンに向けろ」
司令官が慌てて叫ぶ。

司令官の後ろからのっそりと慎重5メートルほど巨大化した魔人が現れる。
「先生!」
その顔はクリスにはクリスにつらく当たって更迭されたフランツ・マルクスに見えた。
しかし、魔人はクリスになど一顧だにせずジャスティンにかかっていく。


「喰らえ」
ジャスティンが剣を一閃するが、魔人の結界で弾き飛ばされる。
「おのれ」
ジャスティンが剣を振り下ろすが魔人の結界はびくともしない。
魔人は剣を握って振り下ろすが、ジャスティンが受ける。
しかし、どちらかと言うと劣勢だった。

司令官の男はにやりと笑った。
「ジャスティンが魔人の相手をしている間に他の反逆者共を抹殺しろ」
兵士たちは嬉々として歩き出した。
「何だと」
ジャスティンは兵士たちを止めようとしたが、魔人が切りかかって来てそれどころではない。
ここまで取り立てを逃れた農民たちを連れて逃げてきたが、いくら魔術を使えるとはいえ、しょせん農民だ。
このままではやばい。

クリスも焦っていた。
王弟反逆の時はアルバートやウィルあるいは母がフォローしてくれだが、今日は誰もいない。
前回は山一つ消滅させた。
クリスが魔術を発動させると下手するとボフミア一国が消滅しかねない。
でも、ここで何もしないとみんなが殺される。
兵士たちはクリスの顔が恐怖に歪んでいると思った。
その女を最初に血祭りにするのだ。
嬉々として剣を振り上げる。

クリスは魔術を発動させた。
兵士たちを足止めするために兵士たちの前に穴を開けようと魔術を放出する。

ドカーーーン。
すさまじい閃光と共に兵士たちの足元に巨大な穴が開いた。
直径200メートルくらいの穴でそれは兵士たちはもとより魔人もジャスティンも司令官も
そしてクリス自らも巻き込む巨大な穴だった。
ジャスティンはその穴に巻き込まれないように飛び退る。
砂埃が沈殿して周りが見えるようになるとクリスの瞳には近くに倒れて起き上がろうとしている魔人が映った。
クリスは拳を握ると魔人に向けて駆けだした。

周りの兵士たちがクリスを止めようとするが演劇で鍛え上げられたクリスの結界は兵士たちを弾き飛ばしていく。
フランツ・マルクスはクリスに散々意地悪した先生だった。
クリスは好きかと言われると嫌いな方だった。
でも、人間では無くて意思の無い魔人にさせられるとなるとまた別だった。
王弟殿下の時も怒りのあまり思いっきり殴れば元に戻った。
今回もそのはずだ…と思う。

「いつまでも遊んでいるんじゃないわよ。ボケ皇帝!」
クリスは右手に自分の力の全て魔力も込めて起き上がろうとした魔人の顔面を殴りつけていた。

ズコーーーーん
すさまじい爆音と閃光とが辺りを満たす。

その光と音が収まった後には顔面を腫らしたフランツ・マルクスがのびていた。

「ま、魔人を素手で殴り倒した」
「こんな穴を一瞬で開けるなんて」
兵士たちは腰を抜かしていた。





それを助けられた村人らは呆然と見ていた。
「シャラザール……」
ジャスティンは思わず口走っていた。
この力無詠唱で放つ巨大な魔術。
山を一つ軽く破壊するなんてありえないと思っていたが、今まざまざと見せつけられて初めてそれが事実だと判った。
魔人と化した人間を元に戻す手段なんてないはずだ。
それを平然とやってのけるなんて。
クリスの力はおそらくボフミエ帝国最強、いや世界最強に違いない。

「神様」
「いや、天から授けられたシャラザール様の化身だ」
「ははあああ」
誰からともなくクリスに拝跪していた。

「えっちょっとやめて下さいよ」
クリスは慌てたが、誰もやめようとしなかった。

「クリスティーナ・ミハイル様」
そのクリスの前にジャステインは跪いた。
「このジャスティン・ギンズバーグ。一生涯をあなた様に忠誠を誓います」
クリスは絶句するしかなかった。

ここにまたクリスの騎士が一人増えた…

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