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第四章 王立高等学園

学園祭前日は夜遅くまでリハです

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そして、前日、学園各地で怒涛の設営が続いていた。
演劇をやるクラスは朝から夜まで時間が決められて講堂で最終リハが順繰りに進められていた。
クリスらのクラスは学園祭2日目の最終演目17時開演予定だった。
19時に全ての演目終了。
その後は打ち上げパーティー予定だった。

今日は最終リハは19時より始まっていた。
それもカメラ付きで。
マーマレード国営魔導電話協会の技術スタッフも最終リハを同時に行っていた。
各地に据え付けた巨大スクリーンにきちんと移るかどうかの最終チェックをリハに合わせて行っていた。

舞台は森林地帯を走る馬車を映し出していた。
森は幻覚魔法で。
その中を走る馬車はミニチュアだ。
そしてその馬車の前に巨大な魔獣が立ちふさがった。

「ギャオー」
巨大な咆哮をあげる。
馬車は馬もろとも風圧でひっくり返される
そして、その馬車の残骸にドシンドシンと巨大な魔獣が迫る。

あと少しで馬車を踏みつぶそうとした時に現れたシャラザールが魔獣の足を止める。

そしてその足を持ち上げるとゆっくりと大車輪の要領で回し始める。
「ちょ、ちょっと待て!」
慌てた声が響く。

「えっ」
慌ててシャラザールは魔獣を放り出した。
ドシンと地面に叩きつけられる。

「カット」
エステラが叫ぶ。

慌ててすべての者が止まる。
「ちょっとエステラさん勝手に止めないで。世界放送でリハしているんだから」
放送監督が文句を言うが。

「ジャンヌ様。投げるのは人形でしょう。持ち替えてもらわないと」
そう本番では見えないように隠してある人形を放り投げて空中で爆発させて紙吹雪をまく予定だったのだ。
それをシャラザール役のジャンヌはそのまま魔獣役のアレクを投げようとしていた。

「おい、ジャンヌ、ひどいじゃないか」
地面に放り出されて打ちつけた肩を押さえながらアレクが怒って言う。

「悪い悪い。つい間違えちゃった」
あっけらかんという。
アレクとしてはそのまま投げ捨てられて爆発されてはたまったものでは無かった。

「すいません。時間押しているんで次のシーンからお願いします」
講堂の管理責任者が叫ぶ。

「カメラ放送はそのまま続行中」

「次は馬車の救出シーンからです。
照明、音楽準備。カウント行きます。
3、2、1」
エステラが合図を送ると暗転。
舞台の端に壊れた馬車の幻覚魔法と倒れているエリオットの姿が照明で映し出される…


「終了です」

21時には何とか終わった。
しかし、途中でまだまだ細かいミスはあった。
特にジャンヌが出番が少ないにもかかわらず、2回も間違えていた。
まあ大分間違いは少なくなったが。

取り敢えず、大道具などは持ち出して保管庫におさめる。
片付け終えて最後に皆で集まった。

「皆さんお疲れさまでした。あと2日しかないので、まだ完ぺきとは言えません。
明日と当日の午前中にとりあえず通しリハをやります。裏の仮設練習室へ8時に集合してください。」
「ええええ。当日までやるの」
ジャンヌは文句たれたが、一番できていないのがジャンヌだ。

「姫様。国中にいやいや世界各地に皇太子として初めてお披露目されるんです。
ここは頑張って頂かないと王妃様の課外授業が増える事になりますぞ」
ジャルカがたしなめる。

「皆様も今回は記録が残りますからね。
皆さんの雄姿が全国に流れるんです。
裏方の皆さんの分もきちんと撮っていますから必ずどこかで映像には出ますから、
頑張ってくださいね」
魔導電話協会の担当者も話す。

「まあ、無様な姿を見せるわけにはいかないか」
ボソリとジャンヌは言った。

「あんまりやりたくない」
「本当ですわ」
全国放送されてうれしいものの悪役令嬢として全世界に名前が響くのは是非とも避けたいイザベラとメーソンは複雑な表情をしていたが。
何しろエステラの指導によって憎たらしさいやらしさは倍以上になっていた。
いじめっ子の姉ちゃんと子供たちに呼ばれるのは何としても避けたかったのに。
エステラの指導のたまものだったが。
しかしここまで来たらもうやけくそだった。


「ようし、あと2日頑張ろう」
「オウ」
ジャンヌが声を上げるとみんな拳を上げて応えた。

前期からは考えられなかったが、いつの間にかとてもまとまったクラスになっていた。

「ここまで来れてよかった」
その盛り上がるクラスの様子にクリスも微笑んでした。

そして学祭当日を迎えた。
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