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第四章 王立高等学園

ボフミエ皇帝の野望

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「クリス様。おはようございます」
翌朝登校途中でクリスはエステラに声をかけられた。
「エステラさん。おはようございます。
昨日はすいません」
昨日の事をクリスは謝る。

「気にしないでください。さすがジャルカ様が魔法の制限をかけられるだけの事はありますわ。
今後注意いただいたら問題無いですよ」
エステラが笑って言う。
光の魔法が強すぎたのだが、幸い目を痛めた者はいなかった。
今後気を付けてさえくれれば良いとエステラは思っていたが、

「ごめんなさいね。中々魔法の力加減がうまくいかなくて」
クリスがまたやりかねないとうつむき加減に言うと、
「さすがシャラザールの再来と言われるクリス様ですわ」
「えっそんなふうに言われているのですか」
驚いてクリスが聞く。

「ええ、そうですよね。ナタリー様」
横にいたナタリーにエステラは振る。

「ええ、まあそうですね」
実際にシャラザールに訓練付けられたナタリーは微妙に頷いた。
あの強力無比、情けを知らないシャラザールに朝まで訓練させられて半死半生の目にあわされたナタリーとしては、クリスとシャラザールが同じと言うのはいまだに信じられないのだが。

「でも、シャラみたいにシャラザールの化身ってどんな気がするんでしょうね?」
何も知らないイザベラが夢見るように聞いた。
その声にジャンヌを迎えに来ていたアレクは思わず躓く。

「私ならば皆の為に喜んで死ぬわ」
命知らずのガーネットも言う。

「でもシャラザールが出てきてもそんなにうまくいく訳ありませんわ。ねえお兄様」
こちらも何も知らないエカテリーナが無邪気にアレクに聞く。

その言葉に思いっきり躓いてしまったアレクだった。
何しろシャラザールによって精鋭二個師団があっという間に殲滅させられたのだ。
その恐怖はその場に居合わせた者でないと理解できない。

「大丈夫ですの?お兄様」
アレクのぎこちない不審な行動にエカテリーナは心配して言う。
何も知らないエカテリーナ達だったが、知ってしまったナタリー達との反応の差は歴然だった…。
ジャンヌもナタリーも顔がこわばっていた。
オーウェンはクリスの隣を歩きながらそれを不思議なものでも見るように見ていた。



ボフミエの帝都宮殿では商人のベッカーが皇帝に説明していた。
「マーマレードの開発した魔導電話を使ってマーマレードの学園の演劇を映したいと」
ゲーリング皇帝はオウム返しに聞いた。

「さようでございます。王子様やおつきの方々も出演していらっしゃるとか。
宜しければ帝都やグリンゲン公爵領でも上映の許可がおりればと申し奉る次第であります」
商人のベッカーは奏上した。

「魔導電話を使ったリアルタイムの上映と言う感じか。
なかなかおもしろそうだな」

「はっ。将来的な帝国の運営にもご参考になればと」
「判った。後日詳細は担当者と打ち合わせをすれば良かろう」
「ありがたき幸せ」
ベッカーは下がっていった。

「宜しかったのですか。今の時期に他国の者を中に入れて」
後ろに控えていたサロモンが言う。

「構わんよ。うまくいけばボフミエ魔導帝国が世界を支配する様子を全国放送してくれようて」
「しかし、魔人の心臓が手に入りませんが」
「クリスを攫うのはうまく行っていないようだな」
アーベル・ゲーリング皇帝はにやりと笑った。

「その演劇を全国に流そうとしているんだろう。マーマレードの魔導師はその事にかかりきりになるはずだ。警備は当然手薄となろう。
その時を狙う」

「特殊部隊を行かせますか?」
「いや、わし自体が行こう」
「皇帝ご自身がですが」
サロモンは驚いた。まさか皇帝自ら出陣するとは。
「魔人の心臓は肝なんだろう。ここで失敗するわけにはいかん。父兄参観とかこつけてわしとお主で行く」
ゲーリングは玉座から立ち上がった。

「ここからが勝負だ。シャラザールによって叩き潰された我ら同胞1000年の悲願がかなう時が来たのだ。供の者は10名ほど。人選も任せる」
「御意」
サロモンは低頭した。
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