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第四章 王立高等学園

大国王子とクリスのデートを赤い死神の妹が邪魔しました。

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翌日の休日は晴れていて絶好のデート日和だった。

オーウェンは前回アレクらに最初からついて来られたことに対して

今回は何としてでもついて来られないように考えていた。

ジャンヌ達のスケジュール見ると今日は朝から魔導第一師団で訓練とあった。

ガーネットの予定を聞くとウィルの訓練の見学と聞いていた。

今回は例え見つかったとしても付いて来れないように、念には念を入れて馬車での移動とした。

待ち合わせ場所も学園の入り口で10時。

周りに不審なものがいないのは警護の騎士を総動員して調べていた。

もっともその護衛隊長がすでにジャンヌに陥落しているのは知らないオーウェンであった。

馬車は見た目は王族だと判らないように普通の馬車をレンタルしていた。

クリスのいでたちは白いワンピースと目立たない格好で、

オーウェンはブラウンのブラウスに紺のスラックスだった。

護衛のジェキンスが御者を務めていた。

「どうぞ僕のお姫様。」
そう言って馬車に乗るのに手を貸す。

「ありがとうございます。」
と言って赤くなってクリスはオーウェンの手を取る。

「良かった。今日は誰にも邪魔されずに。やっと二人きりになれた」
オーウェンが馬車に乗りこんでホッとして言う。

「学園でもオーウェン様は人気者ですものね。」
よくエカエテリーナに付きまとわれているし。

「今日はエカテリーナ様は宜しかったんですか。」
クリスが聞く。

「ちょっと待って。なんでそうなるの。僕はクリスと一緒にいたいからこうして誘ったのに。」
ブスっとしてオーウェンが言う。

「でも、オーウェン様、私のようなものでは大国ドラフォードの皇太子殿下には釣り合わないです。」
クリスはバツが悪そうに言った。

「なんでそうなる?今この学園に王子連中何人いると思う?」
いきなりオーウェンが聞く。

「15人ですか。」
良く訳が分からないがクリスが瞬時に応える。

「そう、前期は7人しかいなかったのが、半数以上増えたんだよ。
その大半が君狙い。」

「そんなまさか。ジャンヌお姉さま狙いでは」
クリスが否定する。

「ギリギリまでジャンヌの学園入学は知らされなかったし、パーティーで皆の前で婚約破棄されたってクリスは嫌がっているけど、その場でもびくともしない強い心と大国の王子王女を3人も引き連れて逆襲したのは素晴らしいとか
外交ルートで噂になっているよ」

「何なんですかそれ」
クリスはびっくりして聞いた。
そんなことになっているなんて夢にも思っていなかった。

「だって俺やジャンヌやアレクが君のために動いたのは事実だろう。
普通高々一侯爵令嬢にそんなことしないよ。
君を国に取り込めれば少なくともノルディン、マーマレード、ドラフォードの3か国とは友好を築けるというか仲良くできるのではないかと言う国もあるくらいだ」

「えっ外交はそんな単純では無いと思いますけど」
クリスが反論する、

「王子からの求婚だけで20名を超えているんだろ」
オーウェンが言う。

「えっそんなこと…」
クリスは否定しようとしたが、母がそんなことを言っていたような気がする。
冗談だと思っていたのだが、オーウェン見る限り真実らしい。

「でも、その理論で言うとオーウェン様もエカテリーナ様と婚約すればノルディンと友好関係が結べますわ。
叔母がマーマレードの王妃。母はテレーゼの王女。盤石の態勢を築けますけど」

「いや、クリス…」
反論しようとした時に馬車が急停車した。
オーウェンは椅子に叩きつけられる。
その胸にクリスが倒れこんで来た。
思わず抱きしめるオーウェン。
ジェキンスもたまにはいい事をする。と思わず喜んだオーウェンだった。

「すいません。」
慌てて体を起こしたクリスの顔は真っ赤だった。

「すいません。馬車が壊れてしまって」
外から声が聞こえてくる。
何処かで聞いたことのある声だ。

「まあ、剣術でドラフォードナンバーワンの腕前を持っていらっしゃるジェキンス様ではありませんか。という事はオーウェン様がご一緒ですか。」
外からエカテリーナによく似た嬉しそうな声が聞こえてくる。

「今からどちらへ」
外でぼそぼそ話声がする。

「あいつ、わざとだな」
ぶすっとしてオーウェンが頭を抱えた。
絶対にエカテリーナだ。

せっかく今回はジャンヌ共がいないのに、なんで赤い死神の妹が邪魔してくる?
馬車をあけて声をかけようとするジェキンスに必死に手を振るが
無情にも馬車の扉が開けられた。

「オーウェン様。こんなところでお会いできるなんてシャラザールのお導きですわ」
顔を上げると微笑んだエカテリーナがいた。

「エカテリーナ嬢。このようなところでどうされたんですか」
社交儀礼でオーウェンは聞く。

-絶対わざと馬車を壊して待っていいたんだ。
オーウェンは忌々しそうに思いながらエカテリーナを見る。

「馬車が壊れましたの。出来ましたら友達との待ち合わせ場所の
エスって言うカフェまでご一緒できたらと思いまして」
さらりとエカテリーナはオーウェンと同じ行先のカフェの名前を挙げる。

「えっ」
オーウェンが固まった。
なんでこれからクリスを連れて行こうとしてる同じカフェに行こうとしているのか。
誰がばらした?
ジェキンスを見るがまったく無視された。

「どなたと待ち合わせなのですか?」
まさかアレク達ではないだろうなと思いながらオーウェンが聞く。

「まあ、オーウェン様は私の事を気にしてくださいますの」
喜んでエカテリーナが聞く。

「まさかお兄様とかでは無いですよね」

「さすがに兄とは喫茶店なんかに行きませんわよ。アンナさんらですわ」
まあ、エカテリーナの取り巻きなら問題無いかと思いつつ、

「クリス嬢。同乗してもらってもいいですか。」
一応同乗者に問いかける。
嫌だと言って欲しいが絶対にクリスは言わないだろう。

「ええ、私のことなど気になさらずに」
クリスが言う。

オーウェンは馬車を降りてエカテリーナを今まで自分が座っていた進行方向と逆側に案内する。

「ありがとうございます」
エカテリーナはぎゅっとオーウェンの手を握って乗りこむ。
そのまま握り続けようとしたエカテリーナの手をさりげなく離してオーウェンは半ば強引にクリスの横に座り込んだ。

慌ててクリスは席を横にずれる。

「まあ、クリス様もご一緒でしたの?今日はどちらにボランティアに参られますの?」
エカテリーナの嫌味がさく裂した。

しかし、クリスはニコッとして
「ちょっと知り合いのところに行くのにオーウェン様についてきていただこうと思いまして」
「まあ、さすが王弟殿下を張り倒されたお方ですわ。大国の皇太子殿下を脚に使うなんて。」
エカテリーナはクリスが触れてほしく無い事をはっきりと言う。

「エカテリーナ嬢、私がやりたいって言っているんだ。余計な事を言わないでくれる」
少しきっとしてオーウェンが言う。

「そんな」
オーウェンのきつい言葉にエカテリーナは涙を浮かべる。
そして泣き出した。

「えっ」
オーウェンは慌てる。
女を泣かすのは慣れていないのだ。

「私はただ、オーウェン様がそんなことしたらクリス様が他の人からどのように思われるか心配してお話ししただけですのに」

完全にエカテリーナのペースになっていた。
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