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第四章 王立高等学園

学園祭実行委員会前

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3時間目の国語も無事に終わり4限目は今日は学園祭に向けた拡大委員会だった

「クリス様行きましょうか」
授業が終わるとスティーブン・スミスがクリスの側に来る。

「はい。よろしくお願いします。」

「こちらこそお願いしますね」
二人は連れ立って外に出る。

「あれっあの二人似合ってる?」
ジャンヌがアレクに聞く。

「ちょっと待て。俺も行く」
「オーウェン様待ってください」
オーウェンが慌てて二人を追いかけてそれを更にエカテリーナが追う。


「いやあ、サマーパーティ以降、本当にすごい活躍でしたね。」
会議室に向かいながらスティーブが言う。

「うーん。私はあんまり何もしていないんですけど。
お姉さまが中心になってまとめてくれましたし」
クリスは謙遜した。

「そんなことは無いですよ。あなたによって助けられた人はこの学園にも多いのでは無いですか。
皆お礼言いたいんじゃないですかね」
スミスは言う。
今回の反乱で死傷者がほとんど出なかったのは全てクリスが交渉してくれた結果だという事は噂になっていた。
反乱起こした王弟でさえおとがめはほとんど無かったと聞いている。
反逆側についた兵士や貴族たちの多くもおとがめはなしだった。
その子弟がこの学園にも多くいた。
婚約破棄以降のクリス崇拝がこの王弟反逆事件で更に激しさを増していた。
もっともそのクリス自体をアルバートやウィルを直接にした護衛陣とジャンヌらの王族連中で守っているという感じなのだが。
お礼を言いたい貴族でも王族に囲まれたクリスに話しかけるのはなかなか難しかった。

「まあ、どうなんでしょう。それよりもとりあえず学祭ですよね」
クリスは話題を変える。

「今までは王妃教育で忙しくてクラスの事ほとんど出来なかったから、
実は楽しみなんです。今回は。」
そう言って微笑むクリスはかわいかった。

今回は学祭実行委員に当選してめっちゃラッキーだったとスティーブは思った。

「これから学園祭まで宜しくお願いします。」
スミスが言う。
「こちらこそよろしくお願いします。」
クリスは頭を下げる。

「そう言えばスティーブ様は放課後はお暇ですか?」
クリスが聞く。

「えっ?大丈夫ですが」
スティーブは驚いて言う。

「じゃあ少し手伝って頂けません?」
クリスは喜んで聞く。

「良いですが」
何の用か判らないけどクリスといられるならばラッキーだ。
とスティーブは思った。

「じゃあ委員会が終わった後で図書館に来てください」
クリスが頼む。
クリスはスティーブの思惑とは違って、数学の講師役をお願いするつもりだった。
1人では中々あれだけの人数は教えられないし、たしかスティーブは前期の成績は3位だったはずだ。
王族がその中にいるって知ったら絶対に嫌がって来ないと思うから詳しい事は黙っていようと思うクリスは策士だった。


二人が話していると会議室についた。
ネームプレートのある通りに座る。

クラス別で順番はジャンヌ、アレク、エカテリーナ、オーウェン、クリス、スティーブの順だった。
他のクラスと男女反対だ。
力関係の順と言う話もあったが。

クリス達の後に入ってきたオーウェンはその席順を見てラッキーと思った。

「少しは落ち着いた?」
小さい声で隣のクリスに話しかける。

「昨日はありがとうございました」
クリスが言う。本来ならお礼のクッキーとハンカチを返したいが、オーウェンの隣のエカテリーナが怒るかもしれないので渡せなかった。

「何もしてないよ。それよりもその前いろいろ言ってごめん」

「私こそ失礼なこと言ってしまって」
オーウェンの謝罪にクリスも謝る。

「オーウェン様はクリス様に何かされたんですか」
二人を見ていたエカテリーナが聞いてくる。

「いや、そんなことは無いよ。僕が余計なおせっかいを言っただけだよ」

「まあ、私ならオーウェン様のおっしゃった事なら何でもお伺いいたしますのに」
オーウェンにくっつくようにエカテリーナが言う。

「じゃあすいません。少し距離が近すぎるんでもう少し距離を取って頂けますか」
すまなそうにオーウェンが言う。

オーウェンの言葉にエカテリーナの横に座ったアレクが思わず吹き出す。

「何で笑うんですの。お兄様」
そのアレクをエカテリーナが叩く。

「いやいや、オーウェンにアプローチするカーチャもかわいいなと思って」
にやけてアレクが言う。

「同じことをジャンヌ様にアプローチされているお兄様にもお返ししますわ」
その言葉に今度はオーウェンが噴き出す。

「クリス嬢に全然相手にされていないオーウェンには笑われたくないぞ」
ブスっとしてアレクが言う。

「そんなことないよね。クリス嬢」
オーウェンは座ったままクリスに身を寄せる。

「オーウェン様。少し近いです」
赤くなってクリスが押し返す。

-あれっこの二人また距離が近くなっている。
アレクは驚いた。
休みの間何回かオーウェンとは飲んだがそのたびに愚痴言われていたのに。

周りの男性陣からも鋭い視線がオーウェンに飛ぶ。
前期まではクリスは皇太子の婚約者で皆には手が出なかったが、サマーパーティーでの婚約破棄で
皆にチャンスが回ってきた。
クリスはかわいいし、きれいだし、気立てが良いし、賢いし。
もっともこの賢いに皇太子は自分が及ばないのが気に入らなかったのだが。

サマーパーティーで婚約破棄された時にクリスをかばったのがオーウェンで、クリスに対して一歩リードしていたが、夏休みの間に喧嘩したとのうわさが流れており、各国からもクリス狙いの留学生が増えていた。
でも、そのクリスが助けてくれたオーウェンとくっついてしまえばその目が無くなる。

一部の男性陣からは強引なエカテリーナを応援する向きまで出ていた。
でも、今見る限りはオーウェンとクリスの仲は近くなっている?
皆危機感もった時だ。

ドン!

という音と共にオーウェンとクリスの間にウイルが転移してくる。

オーウェンは弾き飛ばされてエカテリーナに倒れ込む。
「きゃっ」
思わずエカテリーナはオーウェンを抱きしめていた。
真っ赤になる。
「ごめん」
慌ててオーウェンはエカテリーナから離れようとする。

「姉様大丈夫?」
弾き飛ばしたオーウェンを見ずともせずにウィルはクリスに尋ねる。

「ウィル、人のいるところに転移は禁止でしょ」
抱き合っているオーウェンとエカテリーナを見ていたクリスはきっとして言う。

「ウィルなにも弾き飛ばさなくても」
何とかエカテリーナから離れながらオーウェンが言う。

「エロ王子に対する牽制だよ」
当たり前だという顔でウィルが言う。

「良くやった。ウィル」
ジャンヌが声をかける

「ジャンヌお姉さま」
クリスが咎めるように言うが、ジャンヌはどこ吹く風だ。

クリスを狙っている男共はウィルの活躍に喜んだが、
シスコンのウィルとも戦わねばならないのかとバーの高さにため息をつくものもいた。
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