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第四章 王立高等学園

寮の朝食の席で大国王女と赤い死神の妹が対立します

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翌日はクリスは朝から何故かイザベラらと一緒に朝食を取っていた。
学園に行く準備をしているとイザベラが迎えに来たのだ。

「クリス様。お食事に参りましょう」
強引に誘われたのである。
朝はバイキングなので二人していろんなものを取っていく。
オーウェンの事でまた難癖付けられるのではと戦々恐々とするクリスだったが、

「昨日はなかなかお話しできなくてすいませんでした」
「?」
いきなり謝られて調子が狂う。
しかし、そう言われてもイザベラと話す自分があんまり想像できなかったのだが。
後ろには心配そうにメイがついている。

「あなたの将を射んと欲すれば先ず馬を射よと言う態度にはつくづく感服いたしました」

「えっちょっと待ってくださいね。イザベラ様。何のことをおっしゃっていらっしゃるかよく判らないんですけど」
イザベラが感心して言うが、クリスには何を言っているか判らなかった。

「まあ、良くおっしゃいますわ。クリスティーナ様。
ドラフォードでの事ですわよ。こちらに座りましょう」
イザベラはさっさと座る。

「おはよう」
そこに眠そうな目をしたマーガレットがナタリーに付き添われて現れる。

「おはようございます」
クリスとイザベラは挨拶する。

そしてガーネットはケーキだけ取ってくるとクリスの横に座る。

「少しは仲良くなれた?」
ガーネットがイザベラに聞く。

「昨日はごめん。ウイル追っかけて行ったからほとんど紹介も出来なかったわよね」
ガーネットがイザベラに謝る。

「姫様。お食事もきちんととってください」
そのガーネットの前にサラダ等のトレイをドンとナタリーが置く。

「えええ! せっかく王宮の侍女らから逃げてきたのに。
ここにもうるさい侍女がいる」
ぶつぶつガーネットが文句を言う。
どうやらデザートだけを食べたかったみたいだ。

「母からは王女の顔を見たら野菜を口に入れろと言われています」
「ああん、せっかくナタリーのお母さんから逃げてきたのに…」
どうやらガーネットは野菜嫌いで、ナタリーの母は侍女だったらしい。

「殿下。野菜は食べないとだめですよ」
クリスも言う。

「クリス姉様。私はガーネットって呼んで。ここは平等をうたう王立高等学園でしょ」
ガーネットが文句を言う。

「じゃあガーネット様で」
学園内では王族を様付で呼んでも問題ないだろう。

「えええ!未来のお姉さまなんだから呼び捨てでいいのに」
ガーネットが言う。

「そのような恐れ多い。ウィルには中々王女殿下の隣に立つのは難しいかと思いますが」

「えっ?」
ガーネットはクリスが言う事が一瞬判らなかった。
ウィルと結婚するとは露ほども思っていなかった。
ウィルはいい遊び仲間なのだ。
自分を王女扱いしないし、格好良いし、強いし、連れ歩くにはちょうどいいから連れ歩いているのだ。
まだ、恋愛には疎いガーネットだった。

他の2人はウィルとガーネットもいずれはくっつくかもしれないとは思っていたが、この場にいるのは別の二人の為だった。

「私の事じゃなくて、クリス姉様とお兄様の事なんですけど」
ガーネットが言う。
「えっ、そんな恐れ多い事で、あり得ないですわ」
イザベラの前で言ってもいいのかと思いつつクリスは否定する。
そしてポーカーフェイスで笑おうとした。

とたんに残りの3人が顔を突き合わす。

「姫様。どう言う事ですの」
「変ね。お兄様はっきり言ったはずなのに」
「クリス様オーウェン様の事全然思っていないみたいですけど」
3人は顔を見合わせる。

「こうはしていられませんわ」
「もっと二人をくっつけるようにしないと」
「こんなんじゃエカちゃんに取られてしまうわ」

「私の事を噂されまして」
3人の後ろからいきなりエカテリーナが現れた。
後ろに取り巻き3人を連れている。

「げっ出た!」
ガーネットが叫ぶ。

「出たって私怪物ではありませんわよ。ドラフォードではどういうしつけがされているのかしら」
不機嫌そうにエカテリーナが言う。

「はあっ。この前宣戦布告もなしにジャンヌお姉さまを襲おうとしたノルディン国の王女に言われたくないわね」
「何ですって」
売り言葉に買い言葉二人がにらみ合う。

二人の取り巻きは圧倒されて何も言えない。

「すいません。お二人とも周りが見ていらっしゃいます」
仕方なしにクリスが注意する。

「あなたね…」
侯爵の令嬢風情が言うなと言いそうになり、アレクに注意されたのを思い出して言うのを途中で止める。

「クリス姉様。こんなの相手にする必要は無いわ」
ガーネットが言い切る。

「お姉様ですって」
エカテリーナはガーネットの言葉に反応する。

エカテリーナには既にガーネットがクリスを姉と認めている、すなわちオーウェンとの仲を認めていると映った。

エカテリーナにとってノルディンの男は皆兄のアレクに比べると顔も力もかなう者はいなくて面白くなかった。
その兄が唯一気にしているのがオーウェンだった。
アレクはあいつには負けたくないと闘志を燃やしていた。
アレクは忙しいにもかかわらず、この1か月間シャカリキになってオーウェンを邪魔しようとしていた。

あれだけ他人に興味の無かったアレクが気にするのだ。
余程の男なのだろうと興味を持ったので、無理やりやってきたのだ。

オーウェン実物みても兄と比べても顔も悪くは無いし、剣や魔力の力はもう一つかもしれないが、アレク曰くその頭から出てくる悪だくみはノルディンの単細胞には到底太刀打ち地出来ないのだという。
それを出来る事ならものにするようにと血の一滴も無いと言われる皇帝からも言葉の外に命じられていたのだ。
エカテリーナは珍しくやる気になっていた。

対するクリスは顔はかわいいかもしれないが、おとなしくてどちらかと言うと控えめ、
王妃としたら私の方が絶対にふさわしいはずだと思っていた。

しかし、
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よと言いますものね」
小さくイザベラと奇しくも同じ言葉をつぶやいた。

「これはこれはガーネット殿下。大変失礼致しました。」
とたんに頭を下げる。

「何々、いきなり態度を変えたわよ」
「怪しすぎます」
「胡散臭いですね」
3人は雁首揃えて小さないやいや大きな声で言い合う。

「ちょっとあなた方、私から謝っているのに何よその態度」
ピキッと切れるが

「いやいや、せっかくドラフォードの方々とも仲良くしたいと思いますの」
エカテリーナが言葉を変えて笑う。

「いやいや、私もちょっと大人げなかったですわ」
ガーネットも不気味な笑みを浮かべて笑う。

何なんだろう、この雰囲気。

クリスはため息をついたが、原因が自分にもあるとは想像だにしていなかった。
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