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第四章 王立高等学園

クリス 子供に電話で励まされる

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それからが大変だった。
慌てた理事長までやって来た。
幸いなことに結界がクッションになったようで、フランツは怪我はしていなかった。

クリスに魔術を使わせることは禁則行為になっていたのだが、それをさせたことでフランツはしばらく謹慎になる予定だった。

「まあ、クリス気にするな」
遅めの食事を食堂で取っているクリスの目の前に座っているジャンヌが慰める。

「でも、フランツ先生を弾き飛ばしてしまいましたし」
うつむいてクリスが言う。
せっかくおとなしくしていようと思ったのに。

「あれはフランツが悪いだろう。自分より魔力の多い人間に魔力干渉しようなんて馬鹿なことするから」

「そうです。禁則事項に触れた彼が悪いですよ。」
隣のテーブルに座ったオーウェンが言う。

クリスの隣に座ろうとしたのに、アルバートに邪魔されて隣に座れなかったのだ。
クリスにしてみれば目立ちたくないのでこの王族に囲まれた中で食事するのもやめてほしかったのだが。まあもうこれは仕方がないかもしれないが。

「禁則事項って言われも、なんか、私が魔術使うととんでもないことが起こるように言われたみたいで…」
クリスが嫌がるが
アレクは事実だろうと口にはできなかったが、思った。
そう、死んでもそれは口にはできない。

「いや、それだけ偉大な力をお持ちなのですから、お気になさることは無いですよ」
隣に座っているアルバートが言う。

「そう、クリス以上の魔力量を持つ奴はなかなかいないからな」

「ジャンヌお姉さまに言われると何か私が化け物みたいです」
クリスが嫌がる

「そうか、私もそれだけ魔力量があればノルディンを殲滅することもできるのにとうらやましいんだが」
ジャンヌがしれっと真実を言う。

それを聞いて思わず、アレクはびくっとする。
余計なことをジャンヌは言わないで欲しい。

「そんなことは無いですよね。お兄様。
ノルディン軍は一人の人間にやられるほど弱く無いですわ。」
ちゃっかりとオーウェンの横に座っていたエカテリーナが言う。

「いやまあ・・・」
アレクは笑って誤魔化した。
ここは即座に否定してくれると思っていたエカテリーナは驚いてアレクを見る。
兄が誤魔化すなんてめったにないのに。
それに心なしか兄の顔が青いのが気になった。

「それより、ジャンヌ殿下、もしよろしければ久々にお手合わせをお願いしたいのだが」
アレクは話題を思いっきり切り替えた。

「うん、それは構わないが、何処でやる?」
ジャンヌもそれに乗っかる。

「私はどこでもいいんだが」
「まあ、ここの訓練所でも良いが、本気出したらまた何か壊れるかもしれないし隣が魔導第一師団の訓練場だしそちらでやるか」
「私がが入ってもいいのか」
アレクが驚いて聞く。

「いまさら何を言っている。駐屯地には散々入り浸っていたではないか。
オーウェン、お前のところの騎士も来させて良いぞ」
ジャンヌは言う。

「判った。せっかくだからお邪魔する。アルバートお前はどうする?」
オーウェンが聞く。

「私はクリス様の」
「アルバートも行ってきていいわ。ここはメイがいるし、私はこの後図書館に行くだけだから」
その言葉を途中で切ってクリスが言う。

「せっかく留学しているんだから皆様と手合わせしてきて」
嫌がるアルバートを行かせて、クリスは食堂から立ち上がった。

図書館に行くとボフミエ魔導帝国の資料をいろいろ取り出して調べ出す。
ボフミエからクラスに2人、学校に5人もの留学生が来ているなんて今日まで知らなかった。
たしか、ボフミエ魔導帝国からの留学生なんて久しぶりのはずだ。
いつもはクラスメイトの国の事は彼らに会う前から知っているのだが、今回はそんなことをする気も無かったのだ。しかし、あれだけかんでくるという事は、それも5人もよこしてくるなんて何かあるはずだ。魔導大国で魔力第一主義、魔力があるものが貴族になるという事は知っていたが、いつ必要になるかは判らないので出来る限りの情報は手に入れたい。
ジャルカにもいろいろ聞いてみよう。
そう思ったときに魔導電話が鳴る。
慌てて図書館の外に出ると電話を取る

「クリス姉ちゃん」
画面には小さい男の子が映っていた。

「ジャック久しぶり」
クリスは笑顔で言った。

「姉ちゃん、もう姉ちゃんに電話したらダメなの?」
男の子がいきなり聞く。

「えっそんなことないわよ。なんでそんなこと聞くの?」
クリスは驚いて聞いた。

「良かった。姉ちゃん、もう僕らに愛想をつかしたのかと思ったよ」
ジャックはほっとした。

「なんで、私が愛想つかすわけないじゃない」

「そうだよね。昨日、兵隊さんの偉い人が来てくれてそんなこと言っていたから」
クリスの言葉にジャックが言い訳する。

「大丈夫よ。ジャックが電話しても良いと思うならいつまでも電話してきていいわよ」
クリスは言う。
この前の事件の時に他の大人に嫌味を言いすぎたかもしれない。
とクリスは少し後悔した。

「約束だよ」
ジャックはせがむ。

「お姉ちゃんが嘘言ったことある?」
クリスは聞き返した。

「ううん、ない。それとこの前は僕らのために戦ってくれてありがとう」

「えっ戦ってくれたって?」

「僕らみたいな子供たちが出来ないように悪い奴をやっつけてくれたんでしょ」
「・・・・」
ジャックの言葉はクリスにとってうれしかった。
大人たちと違って純情な子供の言葉にお世辞や嘘は無かった。

「母ちゃんが言っていたけど、悪魔にのっとられた偉い人も思いっきり張り倒して正気に戻してくれたって。聖女様みたいだって」

「・・・・・」
それを聞いてクリスの目に涙が浮かんできた。
涙があとからあとから湧いてくる。

「ど、どうしたの姉ちゃん」
いきなり、クリスが泣きだしてジャックは驚いた。

「何でもないわ。君に褒められてうれしくて」
そのクリスに横からハンカチが差し出される。

「ありがとうございますって オウ」
ハンカチを出してくれた人を見上げてそこにオーウェンが立っているのを見てクリスは驚いた。
オーウェンは軽く微笑むと誰かに呼ばれたみたいで手を振って離れて行った。

「お姉ちゃん、誰かいるの?」
ジャックが聞く。

「ううん、大丈夫よ、ジャック、本当にほめてくれてありがとう」
涙をそのハンカチで拭きながらクリスが言う。

「ジャックらの為にこれからも姉ちゃん頑張るね。
だからジャックも頑張るのよ」
クリスがジャックに言う。

「うん、俺も頑張るよ。姉ちゃんも頑張って」
そう言うとジャックは電話を切った。
クリスは思った。そう不敬になろうと貴族から文句を言われようとこの子供たちの為に頑張っていこうと。
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