上 下
71 / 444
第四章 王立高等学園

クリスは魔術実技で教授を弾き飛ばします

しおりを挟む
4人は理事長室に呼び出されてお叱りを受けたのは言うまでもない。

次の実践の魔術訓練の教授はボフミエ魔導帝国から王子と一緒に留学してきたフランツ・マルクスだった。
運動場の端の訓練場で行う。
外には影響がいかないように結界が張り巡らされてはいた。

「このような科学で有名なマーマレード王国で、魔術の訓練を行う事になるとは思っておりませんでした。何しろボフミエ魔導帝国は魔導の研究において世界最先端をいっております。マーマレードが科学で最先端を行くのと同じように。
私はその魔導帝国の中でも5本の指に入る魔導研究者です。
すなわち魔導帝国で5本の指に入るという事は世界でも、ベスト5に入るという事です」
その言葉にジャンヌらは白けた視線を向けていた。

その視線をものともせずに、
「まあ、幸運なことに皆さんはその私の指導を受けられるという事です」
言い切った。
その嫌味たらしい態度に早くも切れた出すジャンヌであったが。

「では、まずは皆さんのお力を見せて頂きましょう。
ジャンヌ殿下、的に向けてお願いできますか。」

「判った」
ジャンヌはムカついていたので、無詠唱で一瞬で衝撃波を放つ。
次の瞬間には的が全て破壊されていた。

「さすが、殿下。素晴らしいです」
フランツに褒められてジャンヌはまんざらでも無かったが、

「マーマレードではすごいレベルですね」
マーマレードというところをフランツは強調した。
その嫌味に切れたが。

「ではヘルマン殿下。見本をお見せください。」
ヘルマン王子も無詠唱で衝撃波を飛ばす。
しかし、それは的の真ん中を10センチ四方を破壊しただけだった。

「そう素晴らしいです。ボヘミアではむやみな破壊は嫌います。
いかに精度を高めるか。これが重要なのです」

精度はジャンヌの一番不得意な分野だった。
ジャンヌは歯を食いしばって耐える。

「皆さんも出来ればヘルマン殿下のようになってください」
次のアレクはヘルマンと同じように、中央だけ弾き飛ばしていた。

「さすがアレクサンドル殿下です。」
そこはさくっと流す。
もっと褒めろよとアレクは思ったが、大人げないので黙っている。

次のエカテリーナは的を少し外した。

「殿下惜しいです」
女には甘いフランツだった。

次のオーウェンは20センチ四方を破壊していた。

「殿下はまだまだですな。横で練習してください。」
このエロ教授めとオーウェンは思ったが、

「オーウェン様。的の真ん中に当てる方法を私にお教えください。」
エカテリーナが横からオーウェンの手を引っ張る。

後方で見学していたクリスはピキッとこめかみに血が上るが無視する。
出来る限り目立たないようにすると決めたのだ。
ジャンヌやアレク、オーウェンがいれば目立たないし、皆夏休みの出来事を忘れてくれるはずだった。

「どうしたらオーウェン様のように、的に当てられるんですか?」
キャピキャピした声でエカテリーナがオーウェンにまとわりつく。

「いや、中心を狙って撃てば良いんですよ」
「どうしても左にそれるんですの」
「しゃあ、体を右に寄せたらどうですか」
オーウェンはエカテリーナの肩に手を置いて横に体を少し向けさす。

「これでどうですか。」
「やってみますわ」
無詠唱で衝撃波を放つとど真ん中に当たった。

「やったわ」
思わずオーウェンに抱きつく。

オーウェンは驚いたが、
「良かったですね」
と手を取り合っていた。

見学していたクリスの機嫌は極端に悪くなった。

「ミハイル嬢」
大きな声でクリスが呼ばれる。

「はいっ?」
慌ててクリスは返事する。

「何をぼうっとしているのですか。あなたの番ですよ」
にやっと笑ってフランツは言った。

「すいません。私、ジャルカ様より魔術実技は見学するように言われているのですが」
クリスが戸惑う。

「ジャルカだか何だか知りませんが、それはマーマレードの基準です。
ボフミエの学園では魔術が出来ないからと言って皇帝でもしないことは許されません。
侯爵の令嬢風情が免除される事ではないのですよ」

「何だと」
アルバートがピキッとして前に出ようとするのをクリスは手で制止する。

「侯爵の令嬢に過ぎないのが、取り巻きに隣国の公爵の令息を捕まえているなど、風紀が乱れておりますな」
何か言おうとするアルバートを目で制する。

ウイルがこのクラスにいなくて良かったとクリスは思った。
いたら今頃攻撃しているはずだった。
まだ冷静なアルバートで良かった。

クリスは魔法を使えない事にしようと思った。

クリスが立ち位置に立った瞬間に、アレクは危機を感じて入口の近くまで一瞬で後退した。

「殿下?」
傍にいたスミスが驚いてアレクを見る。

「あいつはバカだ」
良く見るとアレクは真っ青な顔をしていた。

「失礼いたしました」
クリスはそう言うと構える。

ファイヤーボールを作ろうとするが少しできてすぐに消える。

「全然できないでは無いですか。
うーん、女の人は有利ですな、見た目で免除してもらえるのですから」
フランツはにやにや笑って言った。

「では先生。これで」
クリスは次の生徒と代わろうとする。

「お待ちなさい。
ファイヤーボールなどボフミエでは子供でも出来ます。」
フランツはそう言うとクリスに近寄ってきた。

「ヘルマン殿下。見本を」

「そうファイヤーボールなど簡単なのですよ。
こう構えて、火の玉をイメージして、こう。」

無詠唱でヘルマンは火の玉を出して、的の中央を射抜かせる。

「そうです。無詠唱は難しいですから、呪文を唱えるのです」
フランツはクリスの横に立って、ヘルマンと挟み込むようにして立って

「出でよ火の玉」
呪文を唱える。

小さい火の玉が出来てそれが的の中央を射抜いた。

「さあやってみて」

途中で止めようとしたのに、更にやらせるなんて。
クリスは焦った。それでなくてもこの前は山を丸ごと一つ消滅させているのだ。
ファイヤーボールでも下手したら学園一つくらい軽く消滅させかねない。

「出でよ火の玉」

大きな火の玉が出来ようとして消える。

「もう少し」
少し近づいてフランツが言う。

クリスが男二人に挟まれているのを見て、オーウェンが二人を離れさせようとするために傍に行こうとした。

「オーウェン様。もう少し教えてくださいませ」
その手をエカテリーナが掴んで行かせない。

二人のいちゃつく様を見て、クリスが切れる。

「出でよ火の玉」
今度はもっと大きな火の玉が出来て消えた。

「もう少しです。」

「出でよ・・・・」
「やめろ!」

呪文を言おうとした時にその魔力に干渉しようとして、フランツは手を出した。
あまりにうかつな行動だった。
それを止めようと叫んだジャンヌの声は届かなかった。
クリスは魔力を制御できないだけであってその魔力は強い。
それも出そうとしたところでその手に触れたのだ。
それも干渉しようとした。

クリスを中心にしてびかっとすさまじいスパークが光り、フランツは弾き飛ばされた。

近くにいたヘルマン王子とアルバートも余波で弾き飛ばされる。

「馬鹿な奴。シャラザールに触れるなんて1万年早いわ」
目の前のフェンスにぶつかってピクピク震えるフランツを見てアレクは呟いていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:1,938

親切な王子様は僕のおともだち。

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1,552

僕の家の永遠の家政夫

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:24

今更愛していると言われても困ります。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:134,816pt お気に入り:2,928

【完結】本気だと相手にされないのでビッチを演じることにした

BL / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:1,981

処理中です...