上 下
69 / 446
第四章 王立高等学園

赤い死神の妹登場 大国皇太子は渡しません

しおりを挟む
「これはこれは、朝から騒々しい事で。
わが国ではこんなことは考えられませんが、さすが科学立国のマーマレード王立学園は違いますわね」
一人の少女が嫌味を言いながら、3人ほどの取り巻きを連れて階段を降りてきた。

「これはこれはエカテリーナ・ボロゾドフ様。
御見苦しいところをお見せ致しました。」
クリスが声をかける。
ピキッと切れたジャンヌを見て慌てて声をかけたクリスだったが、

「無礼者。侯爵令嬢風情が許されぬのに、我に声をかけるな」
殺気をのせてエカテリーナが声を出す。

アルバートとジャンヌがその言葉に一瞬にして戦闘モードに入る。

しかし、そのエカテリーナの頭を思いっきり現れたアレクがひっぱたいていた。

「愚か者」
エカテリーナの頭を押さえてアレクが言う。

その後ろに控えている取り巻きにもきっとして睨みつける。
「ひいいい」
睨まれた者たちは縮み上がった。
赤い死神は自国の者にも恐れられていた。

「クリス嬢。妹が失礼した」
アレクは頭を下げる。

「アレクの妹?」
クリスが答える前にジャンヌが聞く。

「そう、エカテリーナだ。母も同じ妹だ」
確かに二人は赤髪で顔も良く見たら良く似ていた。

「お前も謝れ」
「でもお兄様」

「デモもくそもあるか。
王立高等学園に身分差はない。留学が決まった時から言っているだろう。
それにお前、クリス嬢は魔物化したヘンリー王弟殿下を素手で張り倒して正常に戻されたのだぞ。
少なくとも我がノルディンにはそのような事が出来る者はおるまい」
アレクはクリスが触れてほしくないことをズバズバ言った。

「魔物化した方を殴り倒して正常に戻されたのですか」
信じられない者を見るようにエカテリーナはクリスを見た。
普通魔物化したら元になど戻れない。
余程高位な魔術師だとエカテリーナは見た。
もっともクリスにはおてんば娘だと認識したと聞こえたが。

「そうだ。それに周りにいらっしゃる方々はマーマレードでは無くてドラフォードの方々だぞ。
クリス嬢はドラフォードにもお知り合いが多い。
お前も負けないようにきっちりやるのだぞ」
アレクは言った。

「ふうん、アレクはえらくクリスの肩を持つんだな」
不機嫌そうにジャンヌは言うと寮を出た。

「えっちょっと待って、ジャンヌ」
そう言ってアレクは慌てて追いかける為に駆けだした。

その2人を呆然と残りの人間は見送った。
何をきっちりやるんだろう?
アルバートは素朴な疑問を持ったが。

「クリスティーナ様。失礼いたしました。
兄アレクサンドルの妹のエカテリーナです。
あなたの素晴らしさは兄よりいつもお伺いしております」

「こちらこそ、王女殿下に失礼な事をいたしました。
お恥ずかしい限りです。」
真っ赤になってクリスは言った。
ろくなことをアレクには言われていないと思った。

「でも、オーウェン様の事は諦めませんから」

「えっ」
そう言ってエカテリーナは出て行った。

クリスはエカテリーナが何を言っているか判らなかった。
オーウェンはドラフォードに帰ったはずだ。
それにクリスとオーウェンとは別に何もなかったはずだ。今のところは。


でも教室の中に一歩入って気付いた。

クリスが教室に入るとその前にいきなり跪いたオーウェンドラフォード皇太子がいたのだ。

「クリスティーナ・ミハイル嬢。先日は大変失礼な事を言って申し訳なかった。
どうか許して頂きたい」
そして手を出す。

「えっ?」
クリスはそこにオーウェンがいるのに驚いた。

なぜここに?
それとクリスは先日オーウェンに失礼な態度を取った事を恥ずかしがって真っ赤になっていた。

「はいはい、どいてくださいね。」
そのオーウェンを無理やり横にどけてアルバートが道をあけさせる。

「クリス様どうぞ先に御通り下さい」
クリスを先に行かす。

「ありがとうございます」
真っ赤になったクリスが席に向かう。

「おいアルバート」
オーウェンが文句を言う。

「オーウェン殿下。同じドラフォードの人間として恥ずかしいことやめてください。
他の王族の方々に笑われています」
周りを見るとジャンヌとアレクが笑ってこちらに手を振っていた。

「きゃっ」
その跪いていたオーウェンに教室に入ってきた令嬢が躓いた。

倒れそうな令嬢を慌ててオーウェンは抱きかかえる。

その赤髪の令嬢はそのままオーウェンに抱きついていた。

「大丈夫ですか?」
オーウェンは慌てて言う。

「すいません。良く前を見ていなくて」
抱きかかえられていた令嬢はオーウェンにしがみつきながらクリスを見た。

クリスは一瞬嫌そうな顔をするがふんっと前を見て椅子に座る。
「えっクリス嬢」
オーウェンは慌ててクリスの方に行こうとするが、
エカテリーナはオーウェンに抱きつく手を緩めないので行けなかった。

オーウェンにとって前途多難な新学期の始まりだった。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

拗れた恋の行方

音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの? 理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。 大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。 彼女は次第に恨むようになっていく。 隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。 しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。

この誓いを違えぬと

豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」 ──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。 ※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。 なろう様でも公開中です。

【完結】何故か私を独占崇拝している美人の幼馴染を掻い潜って婚約したいのですが

葉桜鹿乃
恋愛
フリージア・ドントベルン侯爵令嬢は、自分のことをどこにでもいる平凡な令嬢だと思っている。内心で自分のことを『テンプレート』『判で押したような』と思っているが、それを口に出すのは避けていた。 ブルネットの髪に茶色の瞳、中肉中背で、身分に見合ったドレスを着ていなければ、きっと誰からも見落とされると。 しかし、見るからに『ヒロイン』な分家の従姉妹であり幼馴染のジャスミン・ユルート伯爵令嬢からの強い崇拝を受けている。お陰で少しでも「私なんて」と言ってはいけないとクセがついていた。言えば、100倍の言葉で褒め称えてくるからだ。怒りもするし泣きもする。 彼女の金の眩い髪に夏の空色の瞳、メリハリのある何を着ても着こなす身体。 一体何が良くてフリージアを崇拝しているのかは謎だが、慕われて悪い気はしないので仲良くしていた。 そんなフリージアとジャスミンは同い年で、デビュタントの日も一緒となり……そこに招かれていた公爵家のバロック・レディアン令息と侯爵家のローラン・フュレイル令息は、それぞれ一目惚れをした。 二人の美形青年令息と従姉妹命のヒロイン属性令嬢による、テンプレ令嬢を中心にしたドタバタ恋愛騒動、開幕。 ※コメディ風味です、頭を緩くしてお読みください。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも別名義で掲載中です。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~

待鳥園子
恋愛
若き侯爵ジョサイアは結婚式直前、愛し合っていたはずの婚約者に駆け落ちされてしまった。 急遽の結婚相手にと縁談がきた伯爵令嬢レニエラは、以前夜会中に婚約破棄されてしまった曰く付きの令嬢として知られていた。 間に合わせで自分と結婚することになった彼に同情したレニエラは「私を愛して欲しいなどと、大それたことは望んでおりません」とキッパリと宣言。 元々結婚せずに一人生きていくため実業家になろうとしていたので、これは一年間だけの契約結婚にしようとジョサイアに持ち掛ける。 愛していないはずの契約妻なのに、異様な熱量でレニエラを大事にしてくれる夫ジョサイア。それは、彼の元婚約者が何かおかしかったのではないかと、次第にレニエラは疑い出すのだが……。 また傷付くのが怖くて先回りして強がりを言ってしまう意地っ張り妻が、元婚約者に妙な常識を植え付けられ愛し方が完全におかしい夫に溺愛される物語。

婚約破棄?上等よ!─気づいたときにはもう遅いんですよ?

R.K.
恋愛
一人の女の子の復讐までの物語 婚約破棄を告げられ、私は復讐することを誓った。

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

婚約は破棄なんですよね?

もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!

処理中です...