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第四章 王立高等学園

暴風王女 大国の王女様の留学開始 玉璽をなんてことに使っているの!

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翌朝、寝不足気味のクリスはメイに無理やり朝食を食べさせられた。

クリスは制服に着替えて一階のホールに降りるとアルバートがイザベラ・ナヴァールらに囲まれていた。
流石美形、学園でも早くも人気者だ。
何故ドラフォードにてオーウェンに熱烈アプローチしていたイザベラがここにいるのかよく判らなかったが。

そのアルバートがクリスの前に出る。

「おはようございます。クリス様。お迎えに上がりました。」
アルバートはクリスに頭を下げた。

「えっ?」
クリスは目が点になった。
他の生徒の前で、特にクリスに反発している彼女らを前にして敬語で話すのはやめてほしい。

「アルバート様。ここは学園なので敬語で話すのはやめてください」
クリスが困って言う。

「そう言うわけにはまいりますまい。私はあなた様の騎士なのです」
アルバートが当然のように言う。

「でも、同級生でしょう。この学園にいる時は同級生として接してくれないと困ります。
学園の生徒に身分の差は無いですし、本来あなたは公爵家の人間で私よりも地位は上です。
それに学園内で護衛は要りません」
クリスが順々に言う。

「ではこう致しましょう。話し言葉は普通で、でも護衛は必ず致します」
アルバートが妥協した。

「ま、仕方がないんじゃない」
その後ろからウィルが現れた。

「えっなんであなたがここにいるの?」
クリスはウィルとはここまで一緒に帰ってきたが、彼は王都のジャンヌのところに行ったと思っていた。
何しろジャンヌは20代前半の若さで魔導第一師団長になったのだ。
そして、皇太子にもなっていた。
そして、ウィルはその部下だった。

「師団長命令。1年生に編入です」
後ろを指さして、ウイルは言う。

「おはようクリス」
後ろで手を挙げたジャンヌがいた。

「おはようございます。お姉さま」
慌ててクリスがあいさつする。

「でもなぜお姉さまはここに?」
クリスは更に不審がった。

「国王命令で半年留学することになったんだ」
ジャンヌは言う。
もっとも、せっかく王都にいるのだから学園生活も楽しもうというのがジャンヌの考えだったが。

それを見ていたアルバートの裾を令嬢らが引っ張る。

「ジャンヌ王女殿下並びにクリス嬢、こちらはドラフォードのナブァール伯爵家のイザベラ嬢と
ウィンザー将軍の孫娘ナタリー嬢です」
アルバートは後ろに控える二人をウイルは無視して紹介する。

「ジャンヌ王女殿下並びにクリスティーナ様、ウィリアム様。
ナヴァール伯爵の娘のイザベラでございます。
ドラフォードに滞在して頂いた折には大変失礼をいたしました。
3年生に編入いたしますので、ご指導ご鞭撻のほど何卒宜しくお願いします」
イザベラはドラフォードの時とは全然違う態度で礼をする。

(どうしたんだろう?)
クリスは不審に思った。

「ウィンザーが孫のナタリーでございます。
宜しくお願いいたします」
ウィンザー将軍の孫娘は貴族の令嬢と言うよりはどちらかと言うと騎士っぽかった。
体格も良く、相当訓練しているようだった。

「こちらこそよろしく。そんなにかしこまらなくていいぞ」
ジャンヌが気さくに話す。

「宜しくお願いします。クリスティーナ・ミハイルです」
「ウィリアム・ミハイルです」
クリスとウイルがあいさつする。

「ウィル!約束通りに迎えに来てくれたのね」
そのウイルに後ろからガーネットが抱きついてきた。
その姿にまたクリスは驚く。
今日は朝から自分の身の事が心配だったのだが、いろんな転校性がいるみたいで、うまくいけば自分の事は影に隠れるかなと
かすかな期待をする。
でも、ドラフォードからの留学生がやたら増えているような気がしたが…。

「はっ?何を言っているの?俺は姉様の様子を見に来ただけ」
ウィルは嫌そうに言う。

「クリス姉様にはアルバートとかがついているから問題ないでしょ。
そもそも不安だから朝迎えに来てねって手紙送ったわよね」
ガーネットが言う。
ガーネットに不安という言葉が当てはまるかなと自国の王女に不届きな事を考えたアルバートの前で、

「なんでガーネットの言うこと聞かなきゃならないんだよ」
むっとしてウィルが言う。
一国の王女にそんな口を聞いてはいけないのだが、ここは平等をうたう、王立学園だ。
クリスは目をつむることにしたが。

「ふんっ。何言っているのよ。これをごらんなさい」
ガーネットはカバンからまた書類を取り出してウィルに見せた。
ガーネットの得意技だ。

「何々、マーマレード王立高等学園にガーネットが入いれたらウィルは何でも言う事を聞きます…・
昔書いたことだろう。なんでそんなこと守らなきゃならないんだよ」
というかなんで子供の頃にそんなサインをもらっているのか。
留学することは判っていたのか。
アルバートはガーネットの先見の明に感心というか驚いた。

「酷い、ウィルはちゃんとサインしているじゃない」
ウイルのところのサインをみんなに見せる。

「たしか、お菓子でつられたんだよ。良く考えずに」
ウィルが必死に言い訳する。

「えっちょっと待って」
慌ててクリスがその書類を取り上げてよく見る。

「ジャンヌお姉さま!」
クリスが声を上げる。それも非難する声だ。
なんで自分が責められる?
ジャンヌはクリスの指したところを見た。

「何々、そうさせます。ジャンヌ。10年くらい前にサインしたんだな」
ジャンヌがそれが何かとクリスに目で尋ねる。

「その後ろの印鑑が玉璽なんですけど」
クリスが指摘する。

「ええええ」
皆、あっけにとられる。

「玉璽って国王陛下の印鑑じゃ」
ウィルが慌てて言う。

「これ本物なんですけど」
クリスが言う。王妃教育で書類のチェック等でいやほど見せられたので、見間違うわけはなかった。

「そう言えばお父様のところに忍び込んでハンコを持ってきたことがあったような…」
あはははと笑ってジャンヌが言う。

「お姉様、冗談では無くて、下手したらこれ正式な書面になっているような気がするんですけど…」

「そんな馬鹿な…」
ウィルは顔面蒼白になる。

「うーん、仕方がないな」
ジャンヌはウィルに向かってニコッと笑う。
ウィルには最悪の笑顔だ。

「ウィルは頑張ってガーネット嬢の面倒を見るように。
うん、ドラフォードは大切な同盟国であるからな。
宜しく頼むぞ」
笑ってジャンヌは言う。

「はいはい、じゃあウィル教室まで送ってね」
「姫様…」
文句を言おうとするウィルをガーネットは引っ張っていった。
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