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第三章 王弟反逆

ホウエンガウ攻城戦2 クリス軍使に立つ

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「クリス様。いかがいたしますか?」
ヨークが再度聞く。

「降伏勧告して、それでだめならば私が魔力でこの城の壁を全て一瞬で破壊します。
そうすれば抵抗する気力も無くなるでしょう」
クリスの意見に3人は頷いた。

ただ、とウイルは危惧した。
そんな微調整できるのだろうかと。
シャラザール山と同じようにやればおそらく城は一瞬で地上からは消滅するのではないかと…。
そちらに考えが言っているときにクリスが爆弾発言した。

「まず私が城にお伺いして降伏をお願いしに行きます」

「はっ?」
ヨークは思わず声をあげた。

「クリス様。全軍の将がいきなり敵城に乗り込むなど、あまり聞いたことがありません」
「姉様危険だからやめてください!」
「いきなり人質に取られる可能性があります。」
ヨーク、ウィル、アルバートらが三者三様に反対した。

「とはいっても私が一番若輩者。
ここまで馬車に乗って来ましたし、一番疲れておりません」
クリスが言う。

「そういう問題では無いかと」
「大将が一番楽するのは当たり前です」

「でも、ジャンヌお姉さまはいつも最前線におられます」
クリスが言う。

「いや、姫様は別物です。
基本的にマーマレードで最強ですし」
ウィルが即座に反論する。

ジャンヌは他国からも恐れられる暴風王女で他の軟弱な将軍共とは基本的に違った。
でも、クリスは見た目は普通の貴族の令嬢なのだ。
華奢で触れば壊れそうな少女なのである。

「しかし、魔力量では私もそこそこあると思うの」
クリスが言い募る。

確かにクリスは魔力量ではマーマレード最強いや、ひょっとしなくても世界最強だった。

それがきちんと使えればという前提に立てばだが。

「私もお姉さまと同じ考えで大将は後方で安全をむさぼるのでは無くて
最前線にいるものだと思うのです」
クリスは信念を語った。

「しかし、姉様」
ウイルがあくまでも反対するが、クリスは聞かない。

「じゃあ僕もついていきます」
ウィルが言い切る。

「なら私も同行させて頂きます」
「それでは私も先駆けとして行かせていただきます」
ヨークとアルバートも志願する。

「3人も来てどうするんですか?」
クリスは驚いた。

「降伏勧告に行くだけですよ。
もしなんかあったらこの軍は誰が指揮するんですか?」
クリスが反論するが、

「姉様の命の方が大切です」
「クリス様が一番大切です」
「それを言うなら大将は後方にいてください」
3人は意見を曲げなかった。

結局仕方無しに、軍使の白い旗を掲げ持ったヨークを先頭に
アルバート、クリス、ウイルと年の順?で行くことになった。

城壁の上から弓兵が4人を狙っている。

城門の前には馬にまたがった老騎士と10名ほどの兵士が鑓を構えていた。

「こちらはクリスティーナ・ミハイル様です。
軍使として城主との会見を希望なされておる。
城に入れて頂きたい。」
ヨークが言った。

老騎士は兵士の一人に何か話した。

兵士が城門の横の通用門から城内に駆け込む。

「貴様は中央師団のものではないか。
早速寝返ったのか」
老騎士がヨークに誰何した。

「ふんっ、今までは無能な上司に従って反乱軍に組していただけだ。
クリス様の寛大なお心で配下に加えて頂いたのだ。
貴様もいつまでも反乱軍にいずにこちらに下るが良い」

「裏切者が何を言う。」
きっとして老騎士は言う。

言い返そうとしたヨークを止めてクリスが前に出る。

「ゴードンさんですよね」

「何故、私の名を知っている?」
老騎士は驚いた。

「あら、幾多の騎士が年老いて引退していく中で、いまだに現役でいらっしゃるあなたの名は全軍に知られていますわ」
笑ってクリスが近寄ってくる。

籠城軍とアルバートら3人はその様子を驚いてみていた。

ゴードンらにしても丸腰の令嬢が近づいてくるのに手は出せない。

「あなたはミードね」
馬の名前まで言われてゴードンは呆然とした。

馬も喜んでクリスに寄ってきてクリスの顔をなめる。
老騎士は慌てて馬を降りた。

「何故。この馬はそうは人になつかないのだが」

「私、何故か動物には好かれるんです」
クリスが馬の顔をなでながら言う。

そして老騎士と話し出したクリスをついてきた3人は唖然と見ていた。
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