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第二章 大国での失恋
クリスは大国の皇太子に告白されます
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その夕方、クリスはオーウェンに連れられて城の塔の屋上に来ていた。
階段から外に出ると、今まさに地平線に太陽が沈むところだった。
「きれい!」
クリスはその風景を堪能した。
「いつも、怒られた時なんかここによく来たんだ」
オーウェンが言う。
「クリスはそんな時どこに行くの?」
「うーん、怒られても今までは考える暇がなくて。図書館に籠るとか」
「それいつもと変わらないよね」
「そうですね。本当に今まで時間が無くて。
あっ、でも、小さな子供と電話したりしていました。」
「知っている。それもたまたま見えた」
その子は戦災孤児でクリスはその子を励ましていた。
その後ろで驚いて固まっている女生徒がいたのも図書館の窓から見えていた。
「えっご存じだったのですか」
「ごめん、こそこそ何しているのかなと覗いてしまった」
「見られていたと思うと恥ずかしいです。
子供って本当に純情で明るくてその力もらっていました」
ニコって笑うクリスが愛らしくて思わずオーウェンは抱きしめてしまいそうになった。
いや、誰もやらないよ。
そもそも使用人がシングルで子供を育てているなんて知っている雇用者なんてほとんどいない。
その子を慰めるなんてすごい事だ。
それを楽しそうに言うなんて。
でも、もうこの笑顔が見れないかもしれない。
オーウェンは思わず下を見て唇をかんだ。
「どうなされたんですか。皇太子殿下」
「えっなんか堅苦しいな。オーウェンと呼んでいただければ」
「そんな恐れ多い」
「じゃあせめて幼馴染のオウで」
「じゃあオウはどうされたんですか」
「敬語じゃなくていいのに。昔みたいに」
「それは難しいです」
「二人きりなのに」
残念そうにオーウェンが言う。
「はい」
はっきりとクリスは言った。
「まあいいか。いやあ、クリスと一緒に図書館で勉強したかったなあって思ったんだ」
「えっでも結構近くにいらっしゃいましたよね」
「でもさ、判んないところ教えてもらうとかさ、エリザベスおばさまのいう事なんて聞かなくてもっと話しかけたらよかった」
「そっか、オウはもう留学も終わりなんですね」
クリスは少し寂しいなと思った。
学園に帰ってあと半年頑張るんだが、王妃教育が無くなった分がぽっかり心の中に空いていた。
皇太子に婚約破棄されたし、もう守ってくれるものもジャンヌ姉様もウィルもオウでさえいなくなると皆の反応も少し怖かった。
「どうしたの?」
「いえっみんないなくなると寂しいなって」
そのさみしそうな姿を見て思わず、オーウェンはクリスの両肩に手を置いてしまった。
「クリス君を守りたい」
「えっ」
驚いてクリスはオーウェンを身た。
二人の目が合う。
「昔から君の事が好きだった。
エドの婚約者になったって聞いてとても悲しかった。
でも、忘れられなくて。
今回は父に無理やり3か月間だけ留学させてもらったんだ。
でも、クリスに話してはいけないってエリザベスおばさまに言われて。
でも、必死に取り組んでいるクリスを見られてとてもうれしかった。
俺も負けずに頑張ろうって。
エドとあの公爵家の女の子が仲良くしているのを何だこいつと思う気持ちとクリスと仲良くなれるかもしれないって言う汚い気持ちが交差して。
本当にごめん。
でも、パーティでクリスと踊れて本当にうれしかった」
オーウェンはそういうと跪いた。
今しか言う時はない。
明日は赤い死神のせいで異国に向かって立たねばならない。
「クリスティーナ・ミハイル嬢、
どうか私と一生涯一緒に歩いていただけませんか」
下から必死の形相でクリスを見る。
クリスはびっくりした。
今までオーウェンからそのような言葉を聞けるとは思っていなかったのだ。
「御戯れを」
「いや、冗談なんかじゃない。本気だ」
真摯な瞳でクリスを見あげる。
「今までずっと君と一緒にいたいと思っていた。」
「殿下。あなたは皇太子なんです。それも世界で一番大国の。
パーティ会場で婚約破棄された私なんて釣り合わないです」
クリスが何とか言葉を絞り出す。
「そんなことは無い。
君は聖女って呼ばれているではないか。
マーマレードの国民にも慕われている」
「だから、他国に行くことなんて出来ないんです。
今までみんなにしてもらってきた事、返していかないと。」
「いや、だから・・・」
オーウェンは言葉を間違ったことに気づいた。
でも、そんな…
顔面蒼白となった。
「殿下失礼します。国王陛下が」
そこへ場を読まない近衛が上がってきた。
「殿下失礼します」
クリスが慌てて駆け出した。
「クリス!」
オーウェンはクリスの手を取ろうとしたが、その手をかいくぐって駆けて行った。
階段から外に出ると、今まさに地平線に太陽が沈むところだった。
「きれい!」
クリスはその風景を堪能した。
「いつも、怒られた時なんかここによく来たんだ」
オーウェンが言う。
「クリスはそんな時どこに行くの?」
「うーん、怒られても今までは考える暇がなくて。図書館に籠るとか」
「それいつもと変わらないよね」
「そうですね。本当に今まで時間が無くて。
あっ、でも、小さな子供と電話したりしていました。」
「知っている。それもたまたま見えた」
その子は戦災孤児でクリスはその子を励ましていた。
その後ろで驚いて固まっている女生徒がいたのも図書館の窓から見えていた。
「えっご存じだったのですか」
「ごめん、こそこそ何しているのかなと覗いてしまった」
「見られていたと思うと恥ずかしいです。
子供って本当に純情で明るくてその力もらっていました」
ニコって笑うクリスが愛らしくて思わずオーウェンは抱きしめてしまいそうになった。
いや、誰もやらないよ。
そもそも使用人がシングルで子供を育てているなんて知っている雇用者なんてほとんどいない。
その子を慰めるなんてすごい事だ。
それを楽しそうに言うなんて。
でも、もうこの笑顔が見れないかもしれない。
オーウェンは思わず下を見て唇をかんだ。
「どうなされたんですか。皇太子殿下」
「えっなんか堅苦しいな。オーウェンと呼んでいただければ」
「そんな恐れ多い」
「じゃあせめて幼馴染のオウで」
「じゃあオウはどうされたんですか」
「敬語じゃなくていいのに。昔みたいに」
「それは難しいです」
「二人きりなのに」
残念そうにオーウェンが言う。
「はい」
はっきりとクリスは言った。
「まあいいか。いやあ、クリスと一緒に図書館で勉強したかったなあって思ったんだ」
「えっでも結構近くにいらっしゃいましたよね」
「でもさ、判んないところ教えてもらうとかさ、エリザベスおばさまのいう事なんて聞かなくてもっと話しかけたらよかった」
「そっか、オウはもう留学も終わりなんですね」
クリスは少し寂しいなと思った。
学園に帰ってあと半年頑張るんだが、王妃教育が無くなった分がぽっかり心の中に空いていた。
皇太子に婚約破棄されたし、もう守ってくれるものもジャンヌ姉様もウィルもオウでさえいなくなると皆の反応も少し怖かった。
「どうしたの?」
「いえっみんないなくなると寂しいなって」
そのさみしそうな姿を見て思わず、オーウェンはクリスの両肩に手を置いてしまった。
「クリス君を守りたい」
「えっ」
驚いてクリスはオーウェンを身た。
二人の目が合う。
「昔から君の事が好きだった。
エドの婚約者になったって聞いてとても悲しかった。
でも、忘れられなくて。
今回は父に無理やり3か月間だけ留学させてもらったんだ。
でも、クリスに話してはいけないってエリザベスおばさまに言われて。
でも、必死に取り組んでいるクリスを見られてとてもうれしかった。
俺も負けずに頑張ろうって。
エドとあの公爵家の女の子が仲良くしているのを何だこいつと思う気持ちとクリスと仲良くなれるかもしれないって言う汚い気持ちが交差して。
本当にごめん。
でも、パーティでクリスと踊れて本当にうれしかった」
オーウェンはそういうと跪いた。
今しか言う時はない。
明日は赤い死神のせいで異国に向かって立たねばならない。
「クリスティーナ・ミハイル嬢、
どうか私と一生涯一緒に歩いていただけませんか」
下から必死の形相でクリスを見る。
クリスはびっくりした。
今までオーウェンからそのような言葉を聞けるとは思っていなかったのだ。
「御戯れを」
「いや、冗談なんかじゃない。本気だ」
真摯な瞳でクリスを見あげる。
「今までずっと君と一緒にいたいと思っていた。」
「殿下。あなたは皇太子なんです。それも世界で一番大国の。
パーティ会場で婚約破棄された私なんて釣り合わないです」
クリスが何とか言葉を絞り出す。
「そんなことは無い。
君は聖女って呼ばれているではないか。
マーマレードの国民にも慕われている」
「だから、他国に行くことなんて出来ないんです。
今までみんなにしてもらってきた事、返していかないと。」
「いや、だから・・・」
オーウェンは言葉を間違ったことに気づいた。
でも、そんな…
顔面蒼白となった。
「殿下失礼します。国王陛下が」
そこへ場を読まない近衛が上がってきた。
「殿下失礼します」
クリスが慌てて駆け出した。
「クリス!」
オーウェンはクリスの手を取ろうとしたが、その手をかいくぐって駆けて行った。
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