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第一章 婚約破棄
失意の中の暴風王女と王妃の愚痴
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ジャンヌは北方の駐屯地に帰って来てから元気が無かった。
「姫様。いつまでうじうじしていらっしゃるつもりですかな。
まあ、こちらとしてはめったにない事なので、見ていて面白いですが」
ジャルカ爺は笑って言った。
「ジャルカ爺。クリスに冷たい目で見られるのはつらいぞ。
お姉さまは良いですね。皇太子殿下と仲良くされてだと。
あたかも私が母上の相手を全くしなかったみたいではないか」
「えっそれは事実では無いですか。」
否定してほしかったのに、まあ、ジャルカが否定するわけはなかったが、更に畳みかけられた。
「いつも王妃様に会いたくないと全く帰られなかったのはどなたですか」
「私だ。しかし、北方にはいつ攻めてくるか判らないノルディンの大軍が」
「その総帥はあなた様にメロメロですが」
「言うなジャルカ。クリスにお姉さまは異性の方と仲良く出来て良いですねってめっちゃくちゃ嫌味を言われたぞ。
こっちは迷惑しているのに」
本当に嫌そうにジャンヌは言う。
「そう言えばその総帥の方は最近お見かけしませんが、ひょっとしてあまりに姫様がつれないので見限られたとかですか。」
意地悪くジャルカは言う。
「そうであって欲しいがな。あいつは今ドラフォードの陰険皇太子の邪魔するのに必死だ。」
「ドラフォード皇太子殿下の邪魔ですか。」
「そう、ありとあらゆる伝を使って。皇太子をマーマレードの王都から遠ざけようとしている。」
ジャンヌはアレクの努力に無駄な事をよくすると呆れていた。
「そうしなければならないほどクリス様の心をオーウェン様が掴まれたと」
疑問に思ってジャルカが聞く。
「オーウェンは元々狡猾だ。うちの馬鹿弟と馬鹿親がクリスをいじめ切った事に同情して見せたのさ。
私の事を心配してくれたのはオーウェン様だけだとクリスは感動していた」
「なるほど、姫様はお妃様の事をクリス様だけに任せて、ひどい目に合わせたくせに、姫様本人は北の大地でアレキサンドル皇太子殿下とイチャイチャしているなんて許せない!と言われたのですな」
「ジャルカ爺。そんなに私をいじめて楽しいのか。」
ジャンヌはぼそっと呟いた。
「これはしたり、いつもは豪快に笑われて嫌なら自分もすればいいとおっしゃいますのに」
「ジャルカ。私ってそんなにひどいか」
目を剥いて睨みつけた。
「・・・・・・」
ジャルカは無言で返した。
「なぜ黙る」
「今までご存じなかった?」
「・・・・・」
今度はジャンヌが無言になる番だった。
「ジャルカ。私はショックを受けているんだ。更にショックを与えてどうする」
「姫様らしからぬ。ここは前向きに考えられたらどうですか。」
「どう前向きに考えられる」
「まず今までひどい目に合わせてきた部下たちに謝るのが良いですぞ。私を筆頭に」
「ジャルカ爺は私のいう事など馬耳東風、まったく気にしておらんだろうが」
「そこまで言われると私としてもショックですな。あなた様がショックを受けられると同じくらいに」
「・・・・・」
「その姫様に更にショックなことが」
あたかも今思い出したように言う。
「これ以上ショックなことは無いわ」
「お妃さまからです。」
言うや魔導電話のスイッチをオンにする。
「ジャンヌ。何分待たすつもりよ」
一オクターブ高くなっている王妃の声が駐屯地中に響き渡る。
周りの隊員は思わず近くの木立に隠れた。
-ジャルカ、はめたな。知ったら絶対に転移で逃げたのに-
ジャンヌは心の中で怒りまくった。
もっともこのショック状態では行動面が遅く、どのみち捕まったかもしれないが…
「そんなに母と話すのが嫌なの。
ええ、ええ、ええ、私はどうせいじわる姑ですよ。
鬼姑ですよ。
これもそれもあなたたちが全然聞いてくれないからでしょ。
クリスちゃんはちゃんと聞いてくれたのよ。
あなたみたいにうざいと言って転移したり、エドなんて黙ってろ!くそばばあよ!
どいつもこいつも子供の教育失敗したのに息子の婚約者にはひどい事していじめたとか、娘と息子には好きにさせているのに健気な少女には鬼みたいに厳しくしたとか。
周りに言われて散々よ。どうせ鬼姑よ」
息の続く限り愚痴を吐くと息が続かなくなりマシンガンのような言葉を途切らせた。
「母上。私もクリスには自分だけ好きな事して酷いって言われました」
やっとジャンヌが口を挟める。
「私の事は鬼みたいだって言っていたんでしょ。あなたも頷いたのよね」
「いやまあ、そこまでひどくは言っていないですよ。クリスは。ただ、娘や息子にさせないことを私にはさせてって言ってましたけど」
「だってあなた方聞いてくれないんですもの」
王妃は言い訳する。
「しかし、私たちに言っていたこと以上の事求めていましたよね」
ジャンヌはジト目で王妃を見た。
「聞いてくれたからつい嬉しくなってしまって言ってしまったの。それは本当に悪い事したと思っているわ」
珍しくしおらしく王妃は言った。
「それは私ではなくてクリスに謝ってくださいよ」
「出来たらそうしているわよ」
画面の中王妃の顔がドアップになる。
「ミハイル侯爵なんてひどいのよ鬼を見るような感じで私を見て。全く繋いでくれないの」
「シャーロット夫人はどうなんですか。元々お母様と親しかったのでは」
「ダメよ。悲しい顔されてもう少し時間を下さいって言われちゃったの。だから謝りたくても謝れなくて。
ジャンヌちゃんから何とか取り持ってくれないかしら」
王妃が頼み込む。
「母上、それ今は無理ですよ。お姉さま一人だけ自由にしていいですよね。
最後に思いっきり言われてしまいました。
ウィルも帰って来ないんですから。ウィルなんて下手したらもう帰って来ないかもしれないんですよ」
ジャンヌもお手上げだった。
「そう、あなたでもダメなの」
王妃はがっかりした。
「でも、そう言えばお母様の甥っ子から言ってもらえばいいんでは無いですか」
ジャンヌは思いついた。確かオーウェンの母親はエリザベスの姉だ。
「甥って、オーウェンの事?」
「そうです。彼ならなんとかなるかも」
「頼めるわけないでしょ。クリスとは出来たら話さないで欲しいってはっきり言ってしまったのよ」
エリザベス王妃は言う。
「なんでそんなこと言ったんですか。
親戚ですよね。
彼の母親ってお母様と親しい姉ですよね。
母親も同じですよね」
ジャンヌの言葉は王妃を攻める。
「あなたね、私もそんな鬼畜なこと言いたくなかったわよ。クリスには普通に楽しい学園生活送って欲しかったわ」
本当にそう思っていたのかとジャンヌは疑問に思ったが、
「でもね、あのオーウェンとうちのバカ息子比べたら、圧倒的にオーウェンの方が上じゃない。クリスが普通に学園生活送ったらあっという間にヒロインよ。男たちが放っておくわけないでしょ。うちのバカ息子が負けちゃうでしょ。
それでなくても昔からオーウェンはクリスちゃん好いていたんだから私の唯一のかわいい娘がいなくなっちゃうじゃない」
王妃は仕方がなかったと言いたいらしい。
どう考えてもひどい事させていたよなとジャンヌは思った。
だから、
「もういなくなってしまいましたよね」
ズバッとジャンヌは言う。
「もう無理よね。あんなことしてしまったら。なんであなたバカ息子にあんなことさせる前に止めなかったのよ。
あなたなら出来たでしょ」
「まさかあんなことするなんて思いもしませんでしたよ」
「そうよね。バカ息子が悪いのよね」
二人はため息をついた。
「はあああ。
ジャンヌちゃん。アレクちゃんとはどうなの」
突然王妃は話をジャンヌの件に振ってきた。
「はいっ!いきなりなんです。なんでも無いです」
ジャンヌは咳込む。
「ジャルカからは言い寄られているって聞いているわよ」
訝しそうに王妃は言う。
「ジャルカ爺の奴」
ジャンヌはきっとしてジャルカを探すが、当然ジャルカは電話をつないだ時から消えていた。
「言い寄られているうちが花よ。早くくっついちゃいなさい。
でないと見限られるわよ。じゃあね」
反論しようとしたらそれよりも早くエリザベスは電話を切った。
「好きなことだけ言ってくれるよな」
どうしたらクリスは許してくれるだろうか。
珍しくジャンヌは悩んでいた。
「姫様。いつまでうじうじしていらっしゃるつもりですかな。
まあ、こちらとしてはめったにない事なので、見ていて面白いですが」
ジャルカ爺は笑って言った。
「ジャルカ爺。クリスに冷たい目で見られるのはつらいぞ。
お姉さまは良いですね。皇太子殿下と仲良くされてだと。
あたかも私が母上の相手を全くしなかったみたいではないか」
「えっそれは事実では無いですか。」
否定してほしかったのに、まあ、ジャルカが否定するわけはなかったが、更に畳みかけられた。
「いつも王妃様に会いたくないと全く帰られなかったのはどなたですか」
「私だ。しかし、北方にはいつ攻めてくるか判らないノルディンの大軍が」
「その総帥はあなた様にメロメロですが」
「言うなジャルカ。クリスにお姉さまは異性の方と仲良く出来て良いですねってめっちゃくちゃ嫌味を言われたぞ。
こっちは迷惑しているのに」
本当に嫌そうにジャンヌは言う。
「そう言えばその総帥の方は最近お見かけしませんが、ひょっとしてあまりに姫様がつれないので見限られたとかですか。」
意地悪くジャルカは言う。
「そうであって欲しいがな。あいつは今ドラフォードの陰険皇太子の邪魔するのに必死だ。」
「ドラフォード皇太子殿下の邪魔ですか。」
「そう、ありとあらゆる伝を使って。皇太子をマーマレードの王都から遠ざけようとしている。」
ジャンヌはアレクの努力に無駄な事をよくすると呆れていた。
「そうしなければならないほどクリス様の心をオーウェン様が掴まれたと」
疑問に思ってジャルカが聞く。
「オーウェンは元々狡猾だ。うちの馬鹿弟と馬鹿親がクリスをいじめ切った事に同情して見せたのさ。
私の事を心配してくれたのはオーウェン様だけだとクリスは感動していた」
「なるほど、姫様はお妃様の事をクリス様だけに任せて、ひどい目に合わせたくせに、姫様本人は北の大地でアレキサンドル皇太子殿下とイチャイチャしているなんて許せない!と言われたのですな」
「ジャルカ爺。そんなに私をいじめて楽しいのか。」
ジャンヌはぼそっと呟いた。
「これはしたり、いつもは豪快に笑われて嫌なら自分もすればいいとおっしゃいますのに」
「ジャルカ。私ってそんなにひどいか」
目を剥いて睨みつけた。
「・・・・・・」
ジャルカは無言で返した。
「なぜ黙る」
「今までご存じなかった?」
「・・・・・」
今度はジャンヌが無言になる番だった。
「ジャルカ。私はショックを受けているんだ。更にショックを与えてどうする」
「姫様らしからぬ。ここは前向きに考えられたらどうですか。」
「どう前向きに考えられる」
「まず今までひどい目に合わせてきた部下たちに謝るのが良いですぞ。私を筆頭に」
「ジャルカ爺は私のいう事など馬耳東風、まったく気にしておらんだろうが」
「そこまで言われると私としてもショックですな。あなた様がショックを受けられると同じくらいに」
「・・・・・」
「その姫様に更にショックなことが」
あたかも今思い出したように言う。
「これ以上ショックなことは無いわ」
「お妃さまからです。」
言うや魔導電話のスイッチをオンにする。
「ジャンヌ。何分待たすつもりよ」
一オクターブ高くなっている王妃の声が駐屯地中に響き渡る。
周りの隊員は思わず近くの木立に隠れた。
-ジャルカ、はめたな。知ったら絶対に転移で逃げたのに-
ジャンヌは心の中で怒りまくった。
もっともこのショック状態では行動面が遅く、どのみち捕まったかもしれないが…
「そんなに母と話すのが嫌なの。
ええ、ええ、ええ、私はどうせいじわる姑ですよ。
鬼姑ですよ。
これもそれもあなたたちが全然聞いてくれないからでしょ。
クリスちゃんはちゃんと聞いてくれたのよ。
あなたみたいにうざいと言って転移したり、エドなんて黙ってろ!くそばばあよ!
どいつもこいつも子供の教育失敗したのに息子の婚約者にはひどい事していじめたとか、娘と息子には好きにさせているのに健気な少女には鬼みたいに厳しくしたとか。
周りに言われて散々よ。どうせ鬼姑よ」
息の続く限り愚痴を吐くと息が続かなくなりマシンガンのような言葉を途切らせた。
「母上。私もクリスには自分だけ好きな事して酷いって言われました」
やっとジャンヌが口を挟める。
「私の事は鬼みたいだって言っていたんでしょ。あなたも頷いたのよね」
「いやまあ、そこまでひどくは言っていないですよ。クリスは。ただ、娘や息子にさせないことを私にはさせてって言ってましたけど」
「だってあなた方聞いてくれないんですもの」
王妃は言い訳する。
「しかし、私たちに言っていたこと以上の事求めていましたよね」
ジャンヌはジト目で王妃を見た。
「聞いてくれたからつい嬉しくなってしまって言ってしまったの。それは本当に悪い事したと思っているわ」
珍しくしおらしく王妃は言った。
「それは私ではなくてクリスに謝ってくださいよ」
「出来たらそうしているわよ」
画面の中王妃の顔がドアップになる。
「ミハイル侯爵なんてひどいのよ鬼を見るような感じで私を見て。全く繋いでくれないの」
「シャーロット夫人はどうなんですか。元々お母様と親しかったのでは」
「ダメよ。悲しい顔されてもう少し時間を下さいって言われちゃったの。だから謝りたくても謝れなくて。
ジャンヌちゃんから何とか取り持ってくれないかしら」
王妃が頼み込む。
「母上、それ今は無理ですよ。お姉さま一人だけ自由にしていいですよね。
最後に思いっきり言われてしまいました。
ウィルも帰って来ないんですから。ウィルなんて下手したらもう帰って来ないかもしれないんですよ」
ジャンヌもお手上げだった。
「そう、あなたでもダメなの」
王妃はがっかりした。
「でも、そう言えばお母様の甥っ子から言ってもらえばいいんでは無いですか」
ジャンヌは思いついた。確かオーウェンの母親はエリザベスの姉だ。
「甥って、オーウェンの事?」
「そうです。彼ならなんとかなるかも」
「頼めるわけないでしょ。クリスとは出来たら話さないで欲しいってはっきり言ってしまったのよ」
エリザベス王妃は言う。
「なんでそんなこと言ったんですか。
親戚ですよね。
彼の母親ってお母様と親しい姉ですよね。
母親も同じですよね」
ジャンヌの言葉は王妃を攻める。
「あなたね、私もそんな鬼畜なこと言いたくなかったわよ。クリスには普通に楽しい学園生活送って欲しかったわ」
本当にそう思っていたのかとジャンヌは疑問に思ったが、
「でもね、あのオーウェンとうちのバカ息子比べたら、圧倒的にオーウェンの方が上じゃない。クリスが普通に学園生活送ったらあっという間にヒロインよ。男たちが放っておくわけないでしょ。うちのバカ息子が負けちゃうでしょ。
それでなくても昔からオーウェンはクリスちゃん好いていたんだから私の唯一のかわいい娘がいなくなっちゃうじゃない」
王妃は仕方がなかったと言いたいらしい。
どう考えてもひどい事させていたよなとジャンヌは思った。
だから、
「もういなくなってしまいましたよね」
ズバッとジャンヌは言う。
「もう無理よね。あんなことしてしまったら。なんであなたバカ息子にあんなことさせる前に止めなかったのよ。
あなたなら出来たでしょ」
「まさかあんなことするなんて思いもしませんでしたよ」
「そうよね。バカ息子が悪いのよね」
二人はため息をついた。
「はあああ。
ジャンヌちゃん。アレクちゃんとはどうなの」
突然王妃は話をジャンヌの件に振ってきた。
「はいっ!いきなりなんです。なんでも無いです」
ジャンヌは咳込む。
「ジャルカからは言い寄られているって聞いているわよ」
訝しそうに王妃は言う。
「ジャルカ爺の奴」
ジャンヌはきっとしてジャルカを探すが、当然ジャルカは電話をつないだ時から消えていた。
「言い寄られているうちが花よ。早くくっついちゃいなさい。
でないと見限られるわよ。じゃあね」
反論しようとしたらそれよりも早くエリザベスは電話を切った。
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どうしたらクリスは許してくれるだろうか。
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