魔法学園のケンカップル

ぺきぺき

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16 初めての旅行、好きすぎて突き抜ける愛

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(本編前に本話の後半でえっちにトライしていることを宣言しておきます。苦手な方は読まないでください。)

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レグルスとキャサリンが二人で旅行に行く前には、もちろん例のあの人が立ちふさがった。

「旅行なんて、絶対だめだ!二人きりだって!?わわわわわ私も行く!」

キャサリンの父、ヘンリーである。最終的には「パパ、嫌い」というキャサリンの言葉にノックアウトされて許可が出た。


二人がやってきたのは郊外で、美しい自然の多い、貴族や裕福な家庭に人気の土地だった。目立った観光地があるわけではないが、静かにゆったりと過ごせる場所だった。

レグルスが借りた別荘は白い壁と濃い緑色の屋根が可愛らしい一軒家だった。庭にはオシャレなパラソル、テーブルと椅子のセットが並べられていた。
庭には野生の花が適度に咲いており、ちゃんと定期的な手入れがなされているのがわかる。


「素敵ね!気に入った!」

郊外にはレグルスの運転でやってきた。冒険者の研修の一環で免許を取得したのだ。10年ほど前は高級品だった自動車も大分手ごろな価格になっていた。さらに魔動車であれば、燃料の心配はする必要がない。
レグルスも最近、両親が買い替えようかと言っていた旧式の魔動車をゆずり受けた。

「二人で住むなら十分だな。」

「荷物を入れたら買い出しね。」

別荘の中も綺麗に掃除がされており、塵の一つもなかった。台所にリビング、それにお風呂場が一階に、二階にはダブルベッドの寝室が一つとシングルベッドの寝室が一つあった。
ダブルベッドを見て、思わずお互いに赤面してしまった。


こうして三泊四日の旅行が始まった。



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オシャレをした二人は夕食を美味しいジビエ料理の有名なお店で食べた。赤い大ぶりな花柄のワンピースを着たキャサリンは斬新なベリーのソースにとても感動し、レグルスも心の底から楽しんだ。

しかし、別荘に帰ってきてから、現実に戻った。運転するし、未成年だし、ということでお酒は飲んでいないが、これは飲んでおいた方がよかったかもしれない。
春になっても夜は冷えるので暖房をいれ、お茶を飲みながら明日からの旅程を話し合う。

「湖にボート乗りに行きたいんだったよな?」

「う、うん。三大湖の一つのマリア湖に行きたいの。早起きしてランチボックスを作っていくのが良いかも。」

「早起きするなら、今日は早く…。」

「ん?」

「…なんでもない。」

お互いに何となくそわそわしてしまう。頭の半分にあるのは今日の夜をどう過ごすのかであり、ダブルベッドとシングルベッドである。

「さ、先にお風呂入って来いよ。」

「う、うん。」

キャサリンをお風呂場に行かせ、一人きりになると頭のすべてをそれが占めた。レグルスはもちろん経験がないし、キャサリンにもない。しかし、獣人の血を引く自分が一般女子であるキャサリンとことをする場合の注意事項は父から叩き込まれていた。

『レグルス、お前もいい年だし、キャサリンさんと婚約したし、彼女と夜を一緒に過ごしたいとも思うだろうから、いろいろと教えておく。』

『……ありがとう。』

『お前は獣人と人のハーフだから俺ほどたくましくはないが、それでも背丈は並みの男性よりでかいし、力もある獣人だ。力を込めすぎれば簡単にキャサリンさんの骨を折れる。特に熊獣人は力が強いからな。』

『興奮しないようにしろってことか?』

『いや、無理だろう。だから、キャサリンさんにこれを渡しておけ。』

そう言って父から手渡されたのは匂い玉である。かみ砕くと獣人たちが特に嫌悪する匂いを発するのだ。

『行為中にこの匂いがしたら一瞬でさめる。』

『…経験があるのか?』

『…三度ほどな。』

父は『それから…』と言って白っぽい液体の入った小瓶と紙袋を差し出した。

『これは?』

『まあ、媚薬だな。』

『…び!?』

『痛みを和らげて快感を拾いやすくする薬だ。獣人の男と普通の女性との初めての行為では受け入れてもらうために必須だ。それと獣人成年男性用の避妊具な。つける練習はしておけよ。』

父親からのありがたい贈り物はダブルベッドの横のチェストに入れてきた。


「レグルス、あがったよ。」

「ああ、俺も入ってくる。」

「…私、寝室にいるから。」

「…っ!!ああ!」

扉の隙間からちょっとだけ顔を出した湯上りのキャサリンがそのまま頭をひっこめてぱたぱたと階段を上がっていく音が聞こえた。



ー---



寝室にいると言っていたけれど、先に寝ていたらどうしよう。そんな不安に駆られたレグルスだったが、ダブルベッドの寝室をのぞいてみると、暖かい部屋なのに、なぜかしっかりと布団にくるまったキャサリンがベッドの上でレグルスを待っていた。

「………なんで布団に?」

「それは…その…。」

キャサリンは顔を真っ赤にしてもじもじとしている。とても可愛らしいが、この布団は何なんだ?俺に触られたくないのか?遠回しな拒絶?困惑しながらベッドに腰かけると、キャサリンは恐る恐る布団の中から出てきた。

「その…、ブルックに持たされた寝間着が、その、恥ずかしくて…。」

現れたキャサリンが着ていたのは綺麗なネグリジェだった。裾は優雅に足元まで覆っており、袖は長袖で一見清楚だが、胸元は大胆に開いて、谷間が見えている。何よりけしからんのはその色で…。

「おおおおおお、おまままま!?」

思わずレグルスはその姿を布団でもう一度隠してしまった。しかし、やはり見たいので心を落ち着けてからもう一度布団を外す。

キャサリンが着ていたのは真っ赤なネグリジェだったのだ。赤は、レグルスの色である。


「………変かな?」

押し黙ってしまったレグルスをキャサリンが心配そうに見てくる。

「………………最高に似合ってる。」

レグルスは自分色に染まっているキャサリンを抱き寄せると膝の上に乗せて優しくキスをした。キャサリンも両腕をレグルスの首に回してそれに応えてくれる。やがて舌が絡みあい、レグルスの手がすべすべのネグリジェの上を滑る。唇を離すと、レグルスは大胆に開いた胸元に頬を擦り付けた。

「俺と…………。」

言い方に困ったレグルスはそこで言葉をとぎらせる。変に遠回しなことを言ったら、また勘違いされるんじゃないか?とこれまでのすれ違いを思い出してしまったのだ。
それと同時に、過去にキャサリンとのファーストキスの日に起こったすれ違いを思い出してにやりとした。

「……イチャイチャしてくれるか?」

にやっとしてキャサリンを見るとむっとした顔をしている。同じことを思い出したのだろう。

「……ハグでいいの?」

「バカ。大人のイチャイチャの方だよ。いつかお前が勘違いしてた。」

「あ、あれはあんたがあまりに深刻な顔で切り出すからよ!まさかお手てつなぎたいだけだなんて思わないじゃない!」

ぷんぷんと怒り出すキャサリンをいったん膝から下ろし、ベッド横のチェストを開けた。

「父さんに言われたんだけど…。」

といざという時の匂い玉と媚薬を渡す。匂い玉の袋はベッドポールにひっかけて、媚薬の方は戸惑ったように手にして固まっている。

「どれぐらい飲めばいいのかな?」

「ちょっとずつ飲んで、無理そうだったら後からまた飲めばいい。」

キャサリンは覚悟した顔で薬を一口飲むと蓋をしてレグルスに突き出してきたので受け取ってチェストに戻す。


「…なんか恥ずかしい。」

「ん?」

「だって、お義父さんが私たちの今日のこと、知ってるんでしょ?」

「そんなん、旅行に行くって聞いた親戚中が知ってるだろ?」

「いいい、言わないで!親戚の集まりに顔を出せなくなっちゃう!」

「その親戚だってみんなやってるぞ?」

「そうだけど!」

媚薬を飲んだ人間をこれまでに見たことがないので、キャサリンに効いてるのかよくわからない。見たところいつも通りだ。
キャサリンを今度は後ろから抱き寄せて、脚の間に座らせる。後ろから髪のにおいを嗅ぐと自分と似たようなにおいがした。そういえば、同じシャンプーを使ったな。

「………あんたの用意が良すぎてびっくりしてる。」

「………お前だって、こんな真っ赤なネグリジェ用意して、やる気満々じゃないかよ。めちゃくちゃ似合ってる。」

「ブルックに体の隅々まで採寸されて作られたから。」

「さすが創作科。」

キャサリンは照れて顔を赤らめてうつむいている。ちなみにブルックは洋裁に興味があり、魔法の服を作ってみたいという理由で創作科に進学していた。
腰に回していた右手をそろそろと上に滑らせ、うつむいているキャサリンの顔を後ろに向かせる。

最初はいちいちどぎまぎしていたキスも、今は流れるようにできる。思えば昔は名前も呼べなくて、『キャ…ロバート』なんて変な呼び方になっていたし、手も繋げなくて苦悩した。
それが気づけば婚約まで成し遂げてしまったわけだが。

恐る恐るネグリジェの上からキャサリンのレグルスの手には少し小さい胸に触れると、キスに夢中になっていた彼女がびくりと震えた。そのままネグリジェの胸元の紐を引っ張ってみると、あっけなく胸元が広がったのを手で感じた。さすが創作科の集大成。


「レグ…、なんか慣れてる。」

目をうるませて、赤い顔で半ば睨みつけるようにこちらを見てくるキャサリンは胸の上半分が露出した状態であり、すでにレグルスにはかなり刺激が強い。

「な、慣れてねーよ!」

思わず目を背けてレグルスは反論する。

「いろんな人に聞いたけど…。」

「え?誰に聞いたの?お義父さん?」

「とか、ハロルド兄さんとか…。」

ハロルドとはレグルスが兄のように慕うセドリック魔法商会の前商会長の息子である。まだキャサリンとは会ったことがない。ハロルドは既婚で子持ちであり、こういう教えを乞うのにはぴったりの人物だった。
ちなみに、まだ奥さんと子供には会わせてくれない。……なぜだ。

「……恥ずかしい。」

「なんでだよ?」

「か、顔が会わせられないじゃない!」

「別に、ハロルド兄さん忙しいし、会う機会ほとんどないだろう?俺だって、年に一、二回しか会わねーし。」

「でも、結婚式には呼ぶでしょ!?」

キャサリンは思わず言ってしまったというように口を手でおさえた。目は先ほどから潤み、顔は赤くなったままである。しかし、キャサリンの状態にはよく気づかずに、突如出された結婚式の話題にレグルスは浮かれた。

「そうだな!結婚式には呼ぶな!」

口は手で隠されているので、代わりに耳にちゅっとしてやるとキャサリンから「ひやぁ」という可愛らしい声が漏れた。


「…キャサリンさん?」

「な、な、な、なんでもないの!」

もしかして、先ほどから度々雰囲気を無視して挟まれる喧嘩腰の文句は…、何かを隠してる?キャサリンは昔から、照れ隠しでレグルスに張り合って声を大きくしてくることが多い。
緩んでいたネグリジェの胸元を下に軽く引っ張ると、またキャサリンの「ひゃ!」という声と共にすっかり立ち上がって色の濃くなった胸の中心が現れた。

刺激が強い。レグルスには刺激が強いが、プルプルしているキャサリンをもっとプルプルさせたい気持ちが強くなってくる。それに、さっきの可愛すぎる声は、やばい。

「…キティ。」

熱のこもった声で耳元でささやくと、キャサリンの胸に手を伸ばした。


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