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2 気に食わないあの子、振り向かせたくて励む努力
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レグルスを『好みじゃない』と切って捨てた女子学生とはすぐに再会した。
「あ、おまえ!」
「ん?」
初めてのホームルームが行われる教室には3組のクラスメイト達が続々と集まっていた。様々なバックグラウンドを持つ学生たちが集まる魔法学園だが、一年から三年までの三年間を共に過ごすクラスメイト達は偏りが出ないように分けられている。
クラスには獣人の血を引く色味の強い学生の他に見るからに身だしなみにお金のかかった貴族またはお金持ちの家の学生もいれば明らかに平民の学生もいる。血筋重視の風潮は廃れてきたと言っても、やはり似たようなバックグラウンドを持つもの同士で集まっていた。
レグルスもルームメイトで獣人であるウルとヨークと共に席に着いた。母は貴族の出と言ってもレグルスはこれまでの大半の時間をセドリック魔法商会かデイビー家で過ごしてきたので、あまり貴族たちに馴染みがなかった。
母の実家であるカルベット家の女の子たちは好いてくれているが、このクラスにはいない。
「たしか、あんた、入学式典にいたプルプル男。」
「ぷ、ぷるぷる!?俺はレグルス・デイビーだ!」
レグルスは思わず机をたたいて立ち上がり、クラス中がこちらを向いた。レグルス達の前の席に着いていたのは生意気な平凡女ともう二人の女子学生だった。
「レグルス・デイビー?」
平凡女に名前を呼ばれて思わずレグルスはぞわぞわした。恥ずかしくなって顔を赤らめてもう一度机をたたいてしまう。
「お前に俺の名前を呼ぶ資格はない!!」
平凡女は眉を寄せて、何こいつ、といった顔をレグルスに向けてくる。
「あらあらあら。キャサリンったらいつの間に学年一番のイケメンとそんなに仲良くなったのよ?」
キャサリンと呼ばれた平凡女は隣の席を振り返った。そこにいたのは真っ赤なクルクルした髪に八重歯が印象的な見るからに猫獣人の血を引いた女子学生だった。目元に印象的な化粧がされた美しい少女だ。
「学年一番のイケメン?プルプル男が?」
「学年一番のイケメンっていう前評判だったわ。」
赤毛の彼女も納得していないような口ぶりだったが、レグルスは彼の言うところの平凡女の発言しか聞いていなかった。
「おい、そのプルプル男ってやめろよ!」
「ええ?名前を呼ぶなってたった今言ったのはあんたでしょ?」
「まあまあ、クマ男ぐらいにしといてあげなさいよ、キャサリン。熊獣人のハーフだし。私はマーリン・レオンよ。よろしく。」
「学年一番の有名人を前にそんなに強気な二人が信じられないよ。バックにはデイビー家だけじゃなくてカルベット家もついてるのよ?ことにカルベット家はめんどくさいし。波風立てないで、クマ男もやめておきましょう?」
もう一人の着席していた女子学生は茶色い髪をして、顔にはちょっとそばかすがある子だった。大人しくしていた子もなかなか辛辣なことを言う子である。
「もう遅いわよ。入学式典でキャサリンが喧嘩売った女の子たちが多分カルベット家の子でしょ。獣人じゃなかったし。」
「え?キャサリン、何やってるのよ?」
「喧嘩売ってきたのは向こうよ。座席をよこせって言ってきたのよ?私たちが誰よりも早く講堂に入って確保してた座席を、よ?」
「知り合って一日だけどあなたが気が強いのはよくわかった。私はブルック・シュメッツ。よろしく。私たち、同じ寮のルームメイトなの。」
シュメッツとは平民の魔法族に最も多い姓である。様々な分野に親戚がおり、その人脈は貴族を軽々と超える。レグルスの情報も事前にしっかり持っていたようだ。
平凡女の目線がレグルスから横にいるウルとヨークにそれる。それがレグルスには何となく気に食わない。ちなみにマーリンとブルックの目線も全く同じ動きをしたがそちらには気づきもしなかった。
ウルとヨークも自己紹介を済ませるが、平凡女は一向に口を開く気配がない。
「…………お前は?」
「ん?」
「……お前の名前は?」
「ああ。キャサリン・ロバートよ。」
キャサリン・ロバート。
レグルスは聞いた名前の心の中で何度も繰り返す。繰り返しすぎてぶるぶると頭を振った。平凡女ことキャサリンの他にウルとヨークも不思議そうにレグルスを見ているが、女子二人は訳知り顔でにやにやしていた。
「ロバートってことはもしかしてロバート商会の子?」
「うん。会長は私の祖父よ。」
ウルとキャサリンの会話にレグルスも大きく目を見開いた。ロバート商会と言えば国で一番大きな商会だ。セドリック魔法商会が魔法アイテムを扱う唯一の商会であるのに対して、ロバート商会はそれ以外の全てを扱っている。つまりは、彼女は父が商会長を勤めるセドリック魔法商会に引けをとらない有名な商会の娘なのだ。
「すごいね。」
「私の功績じゃないから。すごいのは私のグランパ。」
レグルスはキャサリンに格の違いを見せつけられたような気持ちだった。キャサリンはレグルス達が身分や家の話を出して席を譲れと言ったときも、一切自分のバックグラウンドは出さなかった。
正論だけでレグルス達をやりこめた。まあ正しくは『好みじゃない』発言でレグルスが固まってしまい、議論が終わったのだが。
…認められたい。この女に自分はすごいやつなんだと認められたい。
ホームルームが始まってからもレグルスは熱心にキャサリンの頭を見つめていた。
当のキャサリンは、『…やだ、なんかあのクマ男、睨んでるんだけど?私、相当嫌われてる?』と思ったが、すぐにそのことを忘れてホームルームに集中した。
ー---
「おい!平凡女!」
食堂で一人でランチを食べていたキャサリンを見つけてレグルスは駆け寄った。キャサリンは声をかけるレグルスのことは気にせずに何か紙を読みながらパスタを食べている。
「おい!聞こえないのか!」
レグルス自身も呼びかけるデイビー家の子分たちやカルベット家の女の子たちの呼びかける声を無視してキャサリンの目の前に自分が持っていた紙をたたきつけた。
「おい!呼んでるじゃないか!!」
「ああ、クマ男。『平凡女』って私のことだったのね。」
「お前以外に誰がいるんだ!」
レグルスは机の上にたたきつけた紙を得意げに広げる。それはクリスマス休暇前に行われたテストの結果だった。
点数は高得点のものばかりで、中には満点の物もあった。キャサリンはそれを一瞥してまたパスタを一口食べてレグルスを見た。レグルスは得意げな顔で腕を組んでキャサリンの言葉を待っている。
「…何の用?」
「……何の感想もないのか?」
ちらりとキャサリンの手元を見るとそこにも返却されたキャサリンのテスト結果があった。ちらっと見えた点数は軒並み高得点だ。
ぎょっとしてキャサリンが「ちょっと」と止めるのも聞かずに彼女のテストを自分の物と並べる。
語学や数学、地理といった教養の点数はほぼ同じか、中にはキャサリンの方が成績がいいものまであった。高い点数を自慢する気でやってきたレグルスは、キャサリンに敵わない結果に消沈した。
しかし、極端にキャサリンの成績が下がる教科もあった。
「お前、魔法基礎や魔法理論はぼろぼろじゃないか。赤点じゃないだろうけれど。」
「ああ…、どうしても気分が乗らなくて。」
「俺はどっちも満点だ。」
レグルスが掲げて見せるテストを見て、キャサリンは今初めてその点数に気づいたとでも言うように、「ああ、すごいね」と言った。心はほとんどこもっていなかったが、レグルスの心には刺さった。
気に食わない平凡女にすごいと認めさせた、と。
しかし、レグルスにとっては残念なことに平凡女であるキャサリンもレグルスと同等かそれ以上に成績という意味ではすごかった。
なんとか、なんとか俺のすごさをもっとこの女に見せつけたい。
目を付けたのはキャサリンが苦手としているらしい魔法関連教科だ。
「魔法関連の教科の成績が低いのは進学に響くぞ。俺はこの通り、満点だ。」
「そうだよね…。一応、必修だし。」
キャサリンはあまりレグルスに興味がない様子で自分のテスト結果を眺めながらパスタを食べている。自分は満点なんだとキャサリンの方にテスト結果を押しやるが、彼女は目もくれない。
焦れたレグルスはついにキャサリンの目の前にテスト結果を突き出した。
「俺は!………満点なんだぞ。」
「もう、それはわかったって。」
キャサリンにしっしっと手を振られて、テスト結果を押しやられる。
「俺は!!…………実家でハロルド兄さんや父さんに魔法基礎を習ったんだ。」
「成果が出てよかったじゃん。何がしたいのかわからないんだけど?」
キャサリンは鬱陶しいという顔でレグルスを見てくる。あまりにじっと見られるので思わず赤くなってしまった。
「俺は!!!満点だから!!!お前のわかんないとこ!!!教えてやるよ!!!!」
言った。ついに言ってやった。これでこの平凡女に勉強を教えれば、こいつも俺のことを尊敬して……。
「ああ。わからないところは先生に聞くし。暗記ができてなかっただけだから別に大丈夫。」
あっさり断られてしまった。
「な……!お前!俺がせっかく教えてやろうって言ってるのに何なんだ!!」
「だから、別に教えてもらう必要はないって。」
「俺は満点なんだぞ!?」
「担任のシャーリー先生、教えるの上手だし、問題ない。」
怒るレグルスをキャサリンは意味が分からないという顔で見る。
「何でそんなに教えたがってるの?いつも課題をあんたにやらせようとする子分たちの面倒を見てあげればいいじゃない。……それとも私のこと心配してくれてるの?」
そう尋ねられたレグルスの顔は真っ赤になった。
「ま…!ん…!だ…誰がお前のことなんか心配するか!!!」
そう叫ぶと自分のテスト結果も放り出して、キャサリンの前から逃げるように走り去ってしまった。
そんなんじゃねえぞ!!という叫び声を遠くに聞きながら、『あいつ、本当に意味わかんない』とキャサリンはパスタに集中した。
「あ、おまえ!」
「ん?」
初めてのホームルームが行われる教室には3組のクラスメイト達が続々と集まっていた。様々なバックグラウンドを持つ学生たちが集まる魔法学園だが、一年から三年までの三年間を共に過ごすクラスメイト達は偏りが出ないように分けられている。
クラスには獣人の血を引く色味の強い学生の他に見るからに身だしなみにお金のかかった貴族またはお金持ちの家の学生もいれば明らかに平民の学生もいる。血筋重視の風潮は廃れてきたと言っても、やはり似たようなバックグラウンドを持つもの同士で集まっていた。
レグルスもルームメイトで獣人であるウルとヨークと共に席に着いた。母は貴族の出と言ってもレグルスはこれまでの大半の時間をセドリック魔法商会かデイビー家で過ごしてきたので、あまり貴族たちに馴染みがなかった。
母の実家であるカルベット家の女の子たちは好いてくれているが、このクラスにはいない。
「たしか、あんた、入学式典にいたプルプル男。」
「ぷ、ぷるぷる!?俺はレグルス・デイビーだ!」
レグルスは思わず机をたたいて立ち上がり、クラス中がこちらを向いた。レグルス達の前の席に着いていたのは生意気な平凡女ともう二人の女子学生だった。
「レグルス・デイビー?」
平凡女に名前を呼ばれて思わずレグルスはぞわぞわした。恥ずかしくなって顔を赤らめてもう一度机をたたいてしまう。
「お前に俺の名前を呼ぶ資格はない!!」
平凡女は眉を寄せて、何こいつ、といった顔をレグルスに向けてくる。
「あらあらあら。キャサリンったらいつの間に学年一番のイケメンとそんなに仲良くなったのよ?」
キャサリンと呼ばれた平凡女は隣の席を振り返った。そこにいたのは真っ赤なクルクルした髪に八重歯が印象的な見るからに猫獣人の血を引いた女子学生だった。目元に印象的な化粧がされた美しい少女だ。
「学年一番のイケメン?プルプル男が?」
「学年一番のイケメンっていう前評判だったわ。」
赤毛の彼女も納得していないような口ぶりだったが、レグルスは彼の言うところの平凡女の発言しか聞いていなかった。
「おい、そのプルプル男ってやめろよ!」
「ええ?名前を呼ぶなってたった今言ったのはあんたでしょ?」
「まあまあ、クマ男ぐらいにしといてあげなさいよ、キャサリン。熊獣人のハーフだし。私はマーリン・レオンよ。よろしく。」
「学年一番の有名人を前にそんなに強気な二人が信じられないよ。バックにはデイビー家だけじゃなくてカルベット家もついてるのよ?ことにカルベット家はめんどくさいし。波風立てないで、クマ男もやめておきましょう?」
もう一人の着席していた女子学生は茶色い髪をして、顔にはちょっとそばかすがある子だった。大人しくしていた子もなかなか辛辣なことを言う子である。
「もう遅いわよ。入学式典でキャサリンが喧嘩売った女の子たちが多分カルベット家の子でしょ。獣人じゃなかったし。」
「え?キャサリン、何やってるのよ?」
「喧嘩売ってきたのは向こうよ。座席をよこせって言ってきたのよ?私たちが誰よりも早く講堂に入って確保してた座席を、よ?」
「知り合って一日だけどあなたが気が強いのはよくわかった。私はブルック・シュメッツ。よろしく。私たち、同じ寮のルームメイトなの。」
シュメッツとは平民の魔法族に最も多い姓である。様々な分野に親戚がおり、その人脈は貴族を軽々と超える。レグルスの情報も事前にしっかり持っていたようだ。
平凡女の目線がレグルスから横にいるウルとヨークにそれる。それがレグルスには何となく気に食わない。ちなみにマーリンとブルックの目線も全く同じ動きをしたがそちらには気づきもしなかった。
ウルとヨークも自己紹介を済ませるが、平凡女は一向に口を開く気配がない。
「…………お前は?」
「ん?」
「……お前の名前は?」
「ああ。キャサリン・ロバートよ。」
キャサリン・ロバート。
レグルスは聞いた名前の心の中で何度も繰り返す。繰り返しすぎてぶるぶると頭を振った。平凡女ことキャサリンの他にウルとヨークも不思議そうにレグルスを見ているが、女子二人は訳知り顔でにやにやしていた。
「ロバートってことはもしかしてロバート商会の子?」
「うん。会長は私の祖父よ。」
ウルとキャサリンの会話にレグルスも大きく目を見開いた。ロバート商会と言えば国で一番大きな商会だ。セドリック魔法商会が魔法アイテムを扱う唯一の商会であるのに対して、ロバート商会はそれ以外の全てを扱っている。つまりは、彼女は父が商会長を勤めるセドリック魔法商会に引けをとらない有名な商会の娘なのだ。
「すごいね。」
「私の功績じゃないから。すごいのは私のグランパ。」
レグルスはキャサリンに格の違いを見せつけられたような気持ちだった。キャサリンはレグルス達が身分や家の話を出して席を譲れと言ったときも、一切自分のバックグラウンドは出さなかった。
正論だけでレグルス達をやりこめた。まあ正しくは『好みじゃない』発言でレグルスが固まってしまい、議論が終わったのだが。
…認められたい。この女に自分はすごいやつなんだと認められたい。
ホームルームが始まってからもレグルスは熱心にキャサリンの頭を見つめていた。
当のキャサリンは、『…やだ、なんかあのクマ男、睨んでるんだけど?私、相当嫌われてる?』と思ったが、すぐにそのことを忘れてホームルームに集中した。
ー---
「おい!平凡女!」
食堂で一人でランチを食べていたキャサリンを見つけてレグルスは駆け寄った。キャサリンは声をかけるレグルスのことは気にせずに何か紙を読みながらパスタを食べている。
「おい!聞こえないのか!」
レグルス自身も呼びかけるデイビー家の子分たちやカルベット家の女の子たちの呼びかける声を無視してキャサリンの目の前に自分が持っていた紙をたたきつけた。
「おい!呼んでるじゃないか!!」
「ああ、クマ男。『平凡女』って私のことだったのね。」
「お前以外に誰がいるんだ!」
レグルスは机の上にたたきつけた紙を得意げに広げる。それはクリスマス休暇前に行われたテストの結果だった。
点数は高得点のものばかりで、中には満点の物もあった。キャサリンはそれを一瞥してまたパスタを一口食べてレグルスを見た。レグルスは得意げな顔で腕を組んでキャサリンの言葉を待っている。
「…何の用?」
「……何の感想もないのか?」
ちらりとキャサリンの手元を見るとそこにも返却されたキャサリンのテスト結果があった。ちらっと見えた点数は軒並み高得点だ。
ぎょっとしてキャサリンが「ちょっと」と止めるのも聞かずに彼女のテストを自分の物と並べる。
語学や数学、地理といった教養の点数はほぼ同じか、中にはキャサリンの方が成績がいいものまであった。高い点数を自慢する気でやってきたレグルスは、キャサリンに敵わない結果に消沈した。
しかし、極端にキャサリンの成績が下がる教科もあった。
「お前、魔法基礎や魔法理論はぼろぼろじゃないか。赤点じゃないだろうけれど。」
「ああ…、どうしても気分が乗らなくて。」
「俺はどっちも満点だ。」
レグルスが掲げて見せるテストを見て、キャサリンは今初めてその点数に気づいたとでも言うように、「ああ、すごいね」と言った。心はほとんどこもっていなかったが、レグルスの心には刺さった。
気に食わない平凡女にすごいと認めさせた、と。
しかし、レグルスにとっては残念なことに平凡女であるキャサリンもレグルスと同等かそれ以上に成績という意味ではすごかった。
なんとか、なんとか俺のすごさをもっとこの女に見せつけたい。
目を付けたのはキャサリンが苦手としているらしい魔法関連教科だ。
「魔法関連の教科の成績が低いのは進学に響くぞ。俺はこの通り、満点だ。」
「そうだよね…。一応、必修だし。」
キャサリンはあまりレグルスに興味がない様子で自分のテスト結果を眺めながらパスタを食べている。自分は満点なんだとキャサリンの方にテスト結果を押しやるが、彼女は目もくれない。
焦れたレグルスはついにキャサリンの目の前にテスト結果を突き出した。
「俺は!………満点なんだぞ。」
「もう、それはわかったって。」
キャサリンにしっしっと手を振られて、テスト結果を押しやられる。
「俺は!!…………実家でハロルド兄さんや父さんに魔法基礎を習ったんだ。」
「成果が出てよかったじゃん。何がしたいのかわからないんだけど?」
キャサリンは鬱陶しいという顔でレグルスを見てくる。あまりにじっと見られるので思わず赤くなってしまった。
「俺は!!!満点だから!!!お前のわかんないとこ!!!教えてやるよ!!!!」
言った。ついに言ってやった。これでこの平凡女に勉強を教えれば、こいつも俺のことを尊敬して……。
「ああ。わからないところは先生に聞くし。暗記ができてなかっただけだから別に大丈夫。」
あっさり断られてしまった。
「な……!お前!俺がせっかく教えてやろうって言ってるのに何なんだ!!」
「だから、別に教えてもらう必要はないって。」
「俺は満点なんだぞ!?」
「担任のシャーリー先生、教えるの上手だし、問題ない。」
怒るレグルスをキャサリンは意味が分からないという顔で見る。
「何でそんなに教えたがってるの?いつも課題をあんたにやらせようとする子分たちの面倒を見てあげればいいじゃない。……それとも私のこと心配してくれてるの?」
そう尋ねられたレグルスの顔は真っ赤になった。
「ま…!ん…!だ…誰がお前のことなんか心配するか!!!」
そう叫ぶと自分のテスト結果も放り出して、キャサリンの前から逃げるように走り去ってしまった。
そんなんじゃねえぞ!!という叫び声を遠くに聞きながら、『あいつ、本当に意味わかんない』とキャサリンはパスタに集中した。
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