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92 巫女姫、瀕死になる
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誰かが銃で涼夜を攻撃し、守護霊様の魂は涼夜の手を離れ、無事に逃げ出すことができた。そして、涼夜を妖刀のキャトルで切ることができた。
しかし、狭間に落ちていくまでに少しの時間があり、その間に涼夜は何か術を展開して離魂した。
とっさにキャトルで切ろうとしたが、契約を使い果たしてしまい、魂をとらえることができなかった。
そして、何か大きな術が発動して、その余波のようなものが国中に広がっていった。二乃子が体勢を崩し、屋根に尻もちをついた時には涼夜の魂はどこにもいなかった。
屋根から落ちた二乃子に駆け寄り誰かが治療しようとしてくれるが、二乃子はそれどころではない。…取り逃がした?過去に飛んだ?
起き上がろうとするが、力が入らず、誰かの上に倒れこんでしまった。
…あ、だめだこれ。諦めよう。よく頑張ったよ。
そう思った瞬間、何かがこみ上げてきて咳き込みとともに血を吐いてしまった。
「二乃子殿!二乃子?」
満の声がする。…でも、ここにいるはずないか。二乃子自身が城においてきたのだから。
「こら二乃子!諦めるな!」
バチンとそこそこ強い力で頬をはたかれる。こんな重傷者を手荒に扱うのは誰だと目を開けるとそこには満がいた。
「み、み満ど?」
「二乃子殿、気を確かに。どうせ痛くないんでしょう?」
で、でもしんどいよ…。二乃子の泣きそうな感じを察したのか、満が抱えなおして力強く抱きしめてくれる。
「内臓がやられてるみたいだし、薬を…。」
泣きそうな篤の声がして何か飲まされるが咳き込んで血と一緒に全部吐き出してしまう。
「どうしよう。体の中じゃ止血もできないし。二ノの体力がないから治癒も難しいし。周囲に霊力もほとんどないし。」
篤がしゃべりながらいろいろ考えている。…ああ、アズってそうだよね。テンパればテンパるほど口に出る。
『巫女姫、大丈夫か?まだだめだ。あと数分頑張るんだ。』
守護霊様が姿を現し、覗き込んでいる。
『リョウのことは心配しなくていい。どうやら一人で時を飛んだようだが、術に必要な霊力が足りなかったんだろう。過去を変えることはできなかったようだ。ほら、今が何も変わっていないだろう?』
ああ、じゃあ水分が効いたのかも。よかった。でも、術の余波の方は国中に広まってしまった。
まあ、もう私には関係ないし。あと数分って言われたけど、大晦日の内なら今も数分後も変わらないだろう。
『巫女姫、死ぬ前にまだ話さなきゃいけない相手がいるんじゃないか?ほら?』
守護霊様が示す方を見ると、誠二が走ってくるところだった。…そういえばおばあさまに両親と話せって言われたな。
誠二は二乃子の横に膝をつき、手を握ってくれた。
「二乃子!しっかりするんだ!今、医者を呼んでいるから!」
何かしゃべろうと思うがうまく声が出ない。察した誠二が顔を寄せてくれる。
「私…お父様のお役に立ちましたか?」
誠二が驚いて二乃子を見る。そして力強く頷いた。
「もちろんだ!よくやってくれたよ!」
「お、お父様は、もう…私のこと捨てない?」
「捨てない!捨てたと思ったことは一度もない!俺も、永遠も、二乃子のこと愛してるよ。」
そっか…そうなのか…ならよかった。これで思い残すこともない。
二乃子はそろそろとまぶたを閉じた。
しかし、狭間に落ちていくまでに少しの時間があり、その間に涼夜は何か術を展開して離魂した。
とっさにキャトルで切ろうとしたが、契約を使い果たしてしまい、魂をとらえることができなかった。
そして、何か大きな術が発動して、その余波のようなものが国中に広がっていった。二乃子が体勢を崩し、屋根に尻もちをついた時には涼夜の魂はどこにもいなかった。
屋根から落ちた二乃子に駆け寄り誰かが治療しようとしてくれるが、二乃子はそれどころではない。…取り逃がした?過去に飛んだ?
起き上がろうとするが、力が入らず、誰かの上に倒れこんでしまった。
…あ、だめだこれ。諦めよう。よく頑張ったよ。
そう思った瞬間、何かがこみ上げてきて咳き込みとともに血を吐いてしまった。
「二乃子殿!二乃子?」
満の声がする。…でも、ここにいるはずないか。二乃子自身が城においてきたのだから。
「こら二乃子!諦めるな!」
バチンとそこそこ強い力で頬をはたかれる。こんな重傷者を手荒に扱うのは誰だと目を開けるとそこには満がいた。
「み、み満ど?」
「二乃子殿、気を確かに。どうせ痛くないんでしょう?」
で、でもしんどいよ…。二乃子の泣きそうな感じを察したのか、満が抱えなおして力強く抱きしめてくれる。
「内臓がやられてるみたいだし、薬を…。」
泣きそうな篤の声がして何か飲まされるが咳き込んで血と一緒に全部吐き出してしまう。
「どうしよう。体の中じゃ止血もできないし。二ノの体力がないから治癒も難しいし。周囲に霊力もほとんどないし。」
篤がしゃべりながらいろいろ考えている。…ああ、アズってそうだよね。テンパればテンパるほど口に出る。
『巫女姫、大丈夫か?まだだめだ。あと数分頑張るんだ。』
守護霊様が姿を現し、覗き込んでいる。
『リョウのことは心配しなくていい。どうやら一人で時を飛んだようだが、術に必要な霊力が足りなかったんだろう。過去を変えることはできなかったようだ。ほら、今が何も変わっていないだろう?』
ああ、じゃあ水分が効いたのかも。よかった。でも、術の余波の方は国中に広まってしまった。
まあ、もう私には関係ないし。あと数分って言われたけど、大晦日の内なら今も数分後も変わらないだろう。
『巫女姫、死ぬ前にまだ話さなきゃいけない相手がいるんじゃないか?ほら?』
守護霊様が示す方を見ると、誠二が走ってくるところだった。…そういえばおばあさまに両親と話せって言われたな。
誠二は二乃子の横に膝をつき、手を握ってくれた。
「二乃子!しっかりするんだ!今、医者を呼んでいるから!」
何かしゃべろうと思うがうまく声が出ない。察した誠二が顔を寄せてくれる。
「私…お父様のお役に立ちましたか?」
誠二が驚いて二乃子を見る。そして力強く頷いた。
「もちろんだ!よくやってくれたよ!」
「お、お父様は、もう…私のこと捨てない?」
「捨てない!捨てたと思ったことは一度もない!俺も、永遠も、二乃子のこと愛してるよ。」
そっか…そうなのか…ならよかった。これで思い残すこともない。
二乃子はそろそろとまぶたを閉じた。
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