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90 巫女姫、刀を握る
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「は、母上?」
守護霊様と二乃子はそろって呆然とした様子の宇宙を振り返った。
「視えるのですか?」
『視えるのか、宇宙?』
「あ、ああ。母上、若いな。」
守護霊にまでなれる力の強い人は霊体で若いころの姿になりがちである。守護霊様も20代の様に視える。
『巫女姫、これはリョウの術か?』
「恐らく。一時的に霊的な者の力を強くして情人にも視えるようにしたのかもしれません。」
『なら、やはり私を狙っていると。』
「と思われます。」
これで、将軍にも守護霊様が視えるようになったわけだ。
「おそらく、師匠は守護霊様の魂を九条家から剥がしたいのだと思います。」
『私がここに張り付いていることが、あいつにとっては邪魔になるわけか…。しかし、どうやって?』
「とりあえず、守護霊様はどこかに隠れていてください!」
『巫女姫。大きな術の余波は霊的な者たちに影響を与える。つまり、リョウに術を実行させると、後からどんな影響があるかわからない。わかるな?』
「はい。」
眠れる上等妖怪たちを刺激したり、荒魂が活性化したりでもしたら、とてつもない被害がでるだろう。させないことが一番いいのだ。
『いざというときは私ごと切り捨てて構わない。私はすでに死んでいるわけだしな。』
不敵に笑う守護霊様はちょっとかっこよかった。
その時、地面から何かが立ち上るのを感じて、思わず守護霊様の手をつかんだ。…霊体の手を実体の状態でつかめるとは、何がどうなっているのか。
そのまま二人そろってふわりと浮き上がる。
「そ、宇宙殿!」
二乃子の慌てた声に、宇宙が浮かび上がった二乃子の片足をつかんで引き寄せてくれた。二乃子も守護霊様を離すまじとしっかりとその手を握る。
「無事だったか、二乃子。」
ふと声がした方に目をやると九条家の屋根の上に涼夜と、九条将軍が立っていた。九条将軍は目を丸くして、二乃子が離すまいとつかんでいる半分宙に浮いた女性を見つめている。
将軍からは女性の後ろ姿しか見えていないはずだが、誰だかわかったらしい。
「 」
何か、将軍がささやくと守護霊様は目を見開いて将軍を振り返り、目が合うことに気づき、大きく動揺した。
ブチっという音が聞こえた。
次の瞬間には二乃子の手の中から守護霊様が消え、落ちた二乃子の体とともに宇宙が後ろへと倒れこんでいた。
呆然としていた将軍は涼夜に突き飛ばされて屋根から落ちてきた。もちろん年齢を感じさせない華麗な受け身で着地して涼夜を見上げる。
「リョウ、い、今のは?なぜここにあ…?」
涼夜は何も話そうとはしない。二乃子にはその右手に守護霊様の魂が握られているのがしっかりと視えた。
「将軍、話は後です!下がっていてください!キャトル!」
二乃子は左手に黒い刀身の刀を握った。
「今日は手加減無用!あいつを”狭間”に落として!」
守護霊様と二乃子はそろって呆然とした様子の宇宙を振り返った。
「視えるのですか?」
『視えるのか、宇宙?』
「あ、ああ。母上、若いな。」
守護霊にまでなれる力の強い人は霊体で若いころの姿になりがちである。守護霊様も20代の様に視える。
『巫女姫、これはリョウの術か?』
「恐らく。一時的に霊的な者の力を強くして情人にも視えるようにしたのかもしれません。」
『なら、やはり私を狙っていると。』
「と思われます。」
これで、将軍にも守護霊様が視えるようになったわけだ。
「おそらく、師匠は守護霊様の魂を九条家から剥がしたいのだと思います。」
『私がここに張り付いていることが、あいつにとっては邪魔になるわけか…。しかし、どうやって?』
「とりあえず、守護霊様はどこかに隠れていてください!」
『巫女姫。大きな術の余波は霊的な者たちに影響を与える。つまり、リョウに術を実行させると、後からどんな影響があるかわからない。わかるな?』
「はい。」
眠れる上等妖怪たちを刺激したり、荒魂が活性化したりでもしたら、とてつもない被害がでるだろう。させないことが一番いいのだ。
『いざというときは私ごと切り捨てて構わない。私はすでに死んでいるわけだしな。』
不敵に笑う守護霊様はちょっとかっこよかった。
その時、地面から何かが立ち上るのを感じて、思わず守護霊様の手をつかんだ。…霊体の手を実体の状態でつかめるとは、何がどうなっているのか。
そのまま二人そろってふわりと浮き上がる。
「そ、宇宙殿!」
二乃子の慌てた声に、宇宙が浮かび上がった二乃子の片足をつかんで引き寄せてくれた。二乃子も守護霊様を離すまじとしっかりとその手を握る。
「無事だったか、二乃子。」
ふと声がした方に目をやると九条家の屋根の上に涼夜と、九条将軍が立っていた。九条将軍は目を丸くして、二乃子が離すまいとつかんでいる半分宙に浮いた女性を見つめている。
将軍からは女性の後ろ姿しか見えていないはずだが、誰だかわかったらしい。
「 」
何か、将軍がささやくと守護霊様は目を見開いて将軍を振り返り、目が合うことに気づき、大きく動揺した。
ブチっという音が聞こえた。
次の瞬間には二乃子の手の中から守護霊様が消え、落ちた二乃子の体とともに宇宙が後ろへと倒れこんでいた。
呆然としていた将軍は涼夜に突き飛ばされて屋根から落ちてきた。もちろん年齢を感じさせない華麗な受け身で着地して涼夜を見上げる。
「リョウ、い、今のは?なぜここにあ…?」
涼夜は何も話そうとはしない。二乃子にはその右手に守護霊様の魂が握られているのがしっかりと視えた。
「将軍、話は後です!下がっていてください!キャトル!」
二乃子は左手に黒い刀身の刀を握った。
「今日は手加減無用!あいつを”狭間”に落として!」
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