92 / 115
79 助手、またデートする
しおりを挟む
大晦日まであと半月といった師走の半ば。満は二乃子を異人街に連れ出していた。
大晦日が近づくにつれて、二乃子は徐々に元気をなくしていった。夜に一人で泣いていることもあり、もしかして篤が星読みで告げたという涼夜殿の最期が近づいているのが辛いのかもしれない。
篤もどことなく辛そうな顔をしていることが増えた。
そこで、『クリスマス』という異国のイベントに向けて盛り上がる、異人街に二乃子を連れて行って気分転換をさせることにしたのだ。
僕も行きたーい、という篤に巫覡が不在なのはまずいからとか理由をつけて二人で出かけてきた。
つまりはデートである。
異人街にこの時期に並ぶマーケットは異国のお菓子や軽食を売る屋台や、『クリスマス』のためのオーナメントを売る店、プレゼント用のおもちゃを売る店が並ぶ。
珍しい異国の料理と温かい飲み物を買い、二乃子とベンチで食べる。
「すごいですね!見たことないものがいっぱいあります!」
満が勝ってきたホットサンドを一口食べて驚いた顔をしている。「食べたことない味です」と言いながらパクパクと食べていく。
…きっとたくさん食べるだろうと思って、多めに買ってきてよかった。
「二乃子殿、こっちのワッフルも食べてみてください。これは甘いですよ。」
「満殿はお母上が異人ですから、昔からよく異国の料理を食べていたんですか?」
満が差し出すワッフルを受け取りながら、二乃子が聞いてきた。
「そうですね…。母上に連れられて異人街に来ることはよくありました。その時には度々。」
「どっちの国の料理が好きですか?」
「え?難しいことききますね。でも、やっぱり毎日食べるならうちの料理長の料理がいいですね。異国の料理はたまにで十分です。」
ふと二乃子が手をとめた。
「もしかして、私が九条家に行かないの、迷惑かけてますか?」
「え?そんなことないですよ!城の料理も美味しいですし。16年間食べてきたので、しばらく食べなくても問題ないですよ!」
二乃子と食べる料理が一番おいしいです。とはさすがにドン引きされそうで言えなかった。
「飾りがいっぱいあるんですね。」
「巫覡院にも買って帰って飾りますか?」
二乃子は丸い玉飾りの装飾を見ながら、これはどうやって作るんだろうと観察している。巫覡院の色でもある白地に銀色の飾り模様の入った装飾をいくつか買っていく。
あと今日来られなかった篤と蓮太郎、咲たちに人型のクッキーを買った。二乃子が「私のお守りに似てますね」と言って喜んで買っていた。…以前渡されたペラペラの人型の紙と比べれば装飾もされていて大分可愛らしいが。
ふと満の目に出店に並ぶウサギのぬいぐるみが目に入った。特に白いウサギは二乃子の使い魔のトゥロワに見えなくもない。
「ぬいぐるみ、買いませんか?」
「え?」
「抱き枕代わりにでも。あれなんてトゥロワによく似てませんか?最近、二乃子殿夜に…。」
満ははっとして口をつぐむ。二乃子も気まずそうに目を逸らす。
「見てたんですか…。」
「いや、たまたまですよ?夜に二乃子殿がちゃんと寝てるか確認しに行ったら、たまたま…泣いているのを見て…。」
満は黙り込んでしまった二乃子を窺う。
「その、無理には聞きませんが、何か辛いことがあるなら言ってください。相談にのりますので。」
二乃子はちょっと笑うと頷いた。満はほっと安堵するが、後日、ここでちゃんと話を聞きださなかったことを後悔することとなる。
「じゃあ、ウサちゃん、買って帰りましょうか。もしかしたら満殿も泣きたいときに使えるかも。」
「な、俺は使いません!」
大晦日が近づくにつれて、二乃子は徐々に元気をなくしていった。夜に一人で泣いていることもあり、もしかして篤が星読みで告げたという涼夜殿の最期が近づいているのが辛いのかもしれない。
篤もどことなく辛そうな顔をしていることが増えた。
そこで、『クリスマス』という異国のイベントに向けて盛り上がる、異人街に二乃子を連れて行って気分転換をさせることにしたのだ。
僕も行きたーい、という篤に巫覡が不在なのはまずいからとか理由をつけて二人で出かけてきた。
つまりはデートである。
異人街にこの時期に並ぶマーケットは異国のお菓子や軽食を売る屋台や、『クリスマス』のためのオーナメントを売る店、プレゼント用のおもちゃを売る店が並ぶ。
珍しい異国の料理と温かい飲み物を買い、二乃子とベンチで食べる。
「すごいですね!見たことないものがいっぱいあります!」
満が勝ってきたホットサンドを一口食べて驚いた顔をしている。「食べたことない味です」と言いながらパクパクと食べていく。
…きっとたくさん食べるだろうと思って、多めに買ってきてよかった。
「二乃子殿、こっちのワッフルも食べてみてください。これは甘いですよ。」
「満殿はお母上が異人ですから、昔からよく異国の料理を食べていたんですか?」
満が差し出すワッフルを受け取りながら、二乃子が聞いてきた。
「そうですね…。母上に連れられて異人街に来ることはよくありました。その時には度々。」
「どっちの国の料理が好きですか?」
「え?難しいことききますね。でも、やっぱり毎日食べるならうちの料理長の料理がいいですね。異国の料理はたまにで十分です。」
ふと二乃子が手をとめた。
「もしかして、私が九条家に行かないの、迷惑かけてますか?」
「え?そんなことないですよ!城の料理も美味しいですし。16年間食べてきたので、しばらく食べなくても問題ないですよ!」
二乃子と食べる料理が一番おいしいです。とはさすがにドン引きされそうで言えなかった。
「飾りがいっぱいあるんですね。」
「巫覡院にも買って帰って飾りますか?」
二乃子は丸い玉飾りの装飾を見ながら、これはどうやって作るんだろうと観察している。巫覡院の色でもある白地に銀色の飾り模様の入った装飾をいくつか買っていく。
あと今日来られなかった篤と蓮太郎、咲たちに人型のクッキーを買った。二乃子が「私のお守りに似てますね」と言って喜んで買っていた。…以前渡されたペラペラの人型の紙と比べれば装飾もされていて大分可愛らしいが。
ふと満の目に出店に並ぶウサギのぬいぐるみが目に入った。特に白いウサギは二乃子の使い魔のトゥロワに見えなくもない。
「ぬいぐるみ、買いませんか?」
「え?」
「抱き枕代わりにでも。あれなんてトゥロワによく似てませんか?最近、二乃子殿夜に…。」
満ははっとして口をつぐむ。二乃子も気まずそうに目を逸らす。
「見てたんですか…。」
「いや、たまたまですよ?夜に二乃子殿がちゃんと寝てるか確認しに行ったら、たまたま…泣いているのを見て…。」
満は黙り込んでしまった二乃子を窺う。
「その、無理には聞きませんが、何か辛いことがあるなら言ってください。相談にのりますので。」
二乃子はちょっと笑うと頷いた。満はほっと安堵するが、後日、ここでちゃんと話を聞きださなかったことを後悔することとなる。
「じゃあ、ウサちゃん、買って帰りましょうか。もしかしたら満殿も泣きたいときに使えるかも。」
「な、俺は使いません!」
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
世話焼き令息とズボラな巫女姫の怪異まみれの冒険記
ぺきぺき
ファンタジー
とある東洋の島国の名門貴族家のエリート令息である満(みつる)は、文武両道の将来を期待された若君であった。しかし、何でも器用にこなすが故の悩みを抱え、将来に悩んでいたある日、人生をかけて愛するべき相手と出会った。
彼女はまだ10代の若さで国を巡って邪を払う、最強の巫女姫様だった。
エリート令息が規格外(にズボラ)の巫女姫をお世話して旅をしながら各地の怪異や問題を解決するお話。
ー---
恋愛は遅々として進まないので、ファンタジーです。笑
執筆が完了済みの二章を公開します。その後、一度完結にしますが、続きを書ければまた投稿します。
第一章 夜市に浮かぶ火の玉 全8話
第二章 気の早い雪女 全7話
『救国の巫女姫、誕生史』の続編ではありますが、読んでいなくても問題ないです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる